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【帰省・おでかけ】自閉症の子が公共の場で学ぶチャンスを少しだけください

◆自宅にこもりがちな自閉症の子とその家族◆
自閉症のある子が家族にいると、普段家で何気なく過ごす事ももちろん大変なのですが、「おでかけ」となるとそのハードルは高くなり、多くの自閉症の子の家族は外出する事を出来る限り控えます。

もし出かける場合、たいていの家族は車での移動を選びます。その方が自閉症の子供のストレスが抑えられリラックスできやすい環境だというのもあるんですが、電車・飛行機などの公共の交通機関を利用すると「他の人に迷惑をかける」「迷惑がられることに肩身が狭い思いをする・嫌な思いをする」という事態が起きやすくなるのでそれらを避ける為でもあります。

でも長い夏休みの間、家にこもりっきりというわけにもいかず、家族でおでかけをしたり、鉄道や飛行機といった公共の乗り物を利用して帰省する機会も普段よりは増えるんですよね。また、お出かけ先や帰省中に普段行き慣れていないレストランで食事をとる機会も増えます。

それはどういうことかというと、普段自閉症のある子と接する機会のない人も、自閉症の人やその家族を公共の場で目にする機会が増えるという事なんですよね。

きっとそのような自閉症のある子に慣れていない方は、自閉症のある子のとる見慣れない振舞いや行動に対して「親のしつけができていない」とか「もっとしつけてから連れ出すべきだ」といった不満を抱かれるかもしれません。自閉症という障害がどんな障害かを知らない人がそういう印象を抱かれるのはある意味仕方のない事だとは思います。でも、ほんの少しだけでも自閉症のことを知ってもらえたら、きっと抱く印象が違ってきて、誤解も少し解けるんじゃないかなって思うんですよね。

◆実際の場面で失敗しながら成長する経験が必要な自閉症の子たち◆
そこでまず、一つのビデオを観てもらいなって思います。

何年か前に、アメリカの番組で自閉症のある子とその家族がレストランで食事をしている最中にその子が自閉症独特のふるまいをしたり、うろうろしたり、他の人の食事に手をつけたりするといったドッキリが仕掛けられました。この番組に登場する自閉症の子やその家族、そして彼らに対して文句を言う人はいずれも仕掛け人です。(親切な方が日本語字幕を付けてくださっているので安心してご覧ください。)

この動画を観てどんな印象をうけましたか?
これと同じ様な事が日本で起きて、あなたがもしその場いたらどんな反応をしますか?

私はアスペルガー症候群という自閉症のある子の親として、動画の中に登場するお客さんの”Because they want him to learn how to be in public”(このご両親はその自閉症の男の子に公共の場でどんな風にふるまうべきか学んでほしいと思いレストランにつれてきて教えているんだよ)っていう言葉が一番印象的でした。なぜならこの言葉から

「自閉症の子に理解を示し、見ず知らずのその家族に協力しようとする姿」

がみてとれるからです。
障害のある子の親として、これほど心強いエールはないです!それに、障害のある人がほかの人と同じ社会で暮らせるようになる為に、こういった周囲の人の考えや行動は不可欠なんですよね。

◆自閉症の原因は親の育て方やしつけのせいではありません。でも「しつけ」は必要です。そのしつけを学べるのが公共の場なんです◆
自閉症は生まれつきの障害です。だから「親の育て方」「しつけ不足」が原因で自閉症になるわけではないんですよね。でも自閉症の人が社会の中で受け入れられ共存するには、やはりそれなりのしつけ・マナーの習得は必要だとは思います。

でも自閉症の子は想像する事が苦手なんですよね。だから学校や家で公共の場でのマナーを学んだとしても、そのスキルを実際の場面で発揮する事は難しんですよね。だから「実際の場面」で何度も繰り返し正しい行動を学んで行く必要があるんです。

「実際の場面」。それはみなさんがあたり前に毎日を過ごしてる社会です。そんな場面に自分の想像を超えた振る舞いをする子が現れたら驚くのは当然だと思います。でも、小さい子供が公共の場で周りの大人に注意されながらルールを学んでいくのと同じように、自閉症の子達が失敗しながら学ぶチャンスに理解を示して下さる人が少しでも多くいてくださったらなぁと思います。

その為にはやはり、「自閉症」というものがどういう事なのかを知ってもらいたいんですよね。それは「あの子は自閉症だから仕方ないよね…」という我慢やあきらめを強いる為じゃなく、まずは自閉症の特徴を知ってもらう事で、自閉症の人の独特の振る舞いからその人に自閉症があるんじゃないかなっていう事に気づき、警戒心や疑念を取り除いてもらえたらなって思うからです。

そういう風に自閉症を遠巻きに見ていた人達に自閉症に一歩近づいてもらえる事で、自閉症の子達が社会の中でルールを学ぶチャンスが増えていくんだと私は思うんですよね。

◆障害のある子の親も実は困っています◆
そんな中で障害のある子の親として「障害があるんだから仕方ないでしょ」と周囲に妥協を強いるのではなく、その子のわかる方法でしつけをし、周囲の理解を得たいと思っています。

でも、親だって突然自閉症の子の親になったわけで、我が子の事でもどうしたらいいのか、どう教えればいいのかわからない事だらけなんですよね。ですから、そういう「障害のある子の親だって勉強中で失敗もある(失敗の方が多いかな…)」っていう事も、周囲の人がわかって下さってたらありがたいです。子供のパニックに対し、親もパニックになってることが多いので…。

「あなた親なんだから、なんとかしなさい。みんな迷惑してるでしょ」って言われた経験は何度もあるんですけど、これを言われちゃうと、その場から逃げ出す事しか解決策はないんですよね。でもやはり逃げ出すんじゃなくて、その場で子供に公共の場でのルールを教えたい気持ちもあります。それがその子が本当に必要としている「学ぶべき社会のルール」だからです。

その為に「障害があるから仕方ないでしょ」という妥協を周囲の人に強いるんじゃなく「障害があるから必要な事だよね」と協力を得られるよう親として行動していきたいなって思っています。

ここで、最後になりましたが改めてお願いです。

夏休み中の鉄道や飛行機での帰省や慣れない場所での外食など、いつもと違う日常が続くと自閉症のある子は興奮状態になりやすく、いつも以上にパニックを起こす事が多くなります。そんな光景を目の当たりにしたら、目で合図を送って理解を示してくださったり、一言優しい言葉を掛けてもらえたら嬉しいです。結果的にその場を去らなきゃいけなくなったとしても、その行動に本当に救われるんですよ。

自閉症の子が公共の場で学ぶチャンスを少しだけください。
ありがとうございます。

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