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自閉症の人の不思議な感覚の世界 #とは

同じ気温でも、寒いと感じたり暑いと感じる人がいるように、外からの感覚情報をどう感じるかっていうのは、本来、人それぞれ違うものなんですよね。でもその振り幅が異常に大きい感覚の持ち主が自閉症の人達には相当数いることはまだあまり一般には知られていないんですよね。物が肌に触れる触覚の違いや、聞こえ方が違う聴覚の問題などなど、それは過敏であったり鈍麻であったり…。

今、noteの運営さんが「これをみんなに知ってほしい!」っていう投稿に、 #とは  っていうハッシュタグを付けて書いてみてって募集しているので、せっかくなので今日は、私の専門分野でもある自閉症の人の感覚の問題について広く知ってもらうために書いてみたいと思います。

自閉症の人の感覚の問題は、数年前に改定された自閉症の診断基準に新たに盛り込まれたんですが、自閉症のある本人や親以外には、その困難はなかなか伝わりにくいんですよね。だから「聴覚が過敏です」「痛みに対し鈍麻です」っていう説明の仕方よりも、生活/学校面でどんな風にそれが影響を及ぼすのかっていう具体的な伝え方を心がけて書いてみます。だからきっと、自閉症の人の事をあまり知らない人にもわかってもらえるかなと。

過敏すぎる触覚って?

例えば、触覚が過敏だと、長袖が着れなかったり、首元のタグが針が刺すように感じる人もいるんですよね。それが原因で、学校や会社の制服が苦手だったり苦痛だったり、何かの発表の場で、他の人とお揃いの衣装(被り物やアクセサリーなども含めて)が着られなかったりもするんです。

また、てのひらの触覚過敏がある場合、他の子と同じように砂遊びが出来なかったり、手を繋げなかったり。あと「おはよう」って肩をポンっと触られるだけでも「痛い」と感じ怪訝な反応を示して相手に誤解を与えたりしてしまうことも…。

「何かが肌に触れる恐怖心」から、列に並ぶ時に前後の人と距離を取ろうとすることもあって「もっと前につめたら?」「ちゃんと列の中にまっすぐ並べよ」ってたしなめられたりってこともよくあるんですよね。だからね、もしそんな風に列にちゃんと並べない人がいたら、「もしかして感覚過敏がある人なのかな」って思ってもらえたらって思います。そういう小さな知識や理解を元に見守ってもらえることで、自閉症の人は少し暮らしやすくなるんですよ。

前庭感覚?それって何?

自閉症の子で、ぐるぐる回るのが好きだったりブランコにずっと乗りたがる子の場合、前庭覚というバランスや重力を感じる感覚が鈍麻なのが主な原因で、そのなかなか感じられない感覚を一生懸命感じようとしているんですよね。

「やめられないとまらないかっぱえびせん」のように、好きな感覚だからこそやめられないし、追い求め続けるんですよ。だからこそ、中々ブランコなんかで順番を次の子にかわれなかったりするんですよね。だからこういう子には「順番交代」の大切さをそんなに好きなブランコの場面で無理矢理教えるんじゃなく、他のことでまず学ばせてあげて、それからブランコのような好きな場面でも適応できるようにしてあげてほしいなって思います。

うちの息子もこの前庭感覚の鈍麻が小さいころからあって、授業中に椅子を前後にロッキングしたり、食事中や勉強の合間に突然体を前後にゆすり出したをり今でも日常的にするんですよね。授業の時なんかは、クラスの前後の休み時間に軽くランニングをしたりトランポリンでジャンプしたり、クラスや自宅の椅子にバランスクッションをしいたり(どれも前庭感覚を意図的に入力することで前庭感覚を満足させ安定させる為なんですよね)しています。鈍麻な感覚の探求には、行動の禁止よりも、その刺激をうまく与えてあげることの方が有効なんですよ!

だから「じっとしなさい」って叱られても、体が感覚を欲していて無意識に動いてしまうことなので、体を揺すり始めた子に意図的に「このプリント配って」など立ち上がって体を動かす機会を作ってあげるような関わりをしてもらえると助かります。

また、こういった前庭感覚の鈍麻とは逆に、滑り台で遊ぶ事や、タカイタカイを異常に怖がる子は、前庭覚が過敏だからゆえなんです。好みや、我慢の問題じゃないんですよね。これらについて詳しくはコチラのnoteに書いています→”怖がりとか、根性とか、やる気の問題じゃない重力不安のある子”。

自閉症の人に多い偏食の問題も感覚過敏が原因

口の中やその周辺の感覚に過敏さがあると、好き嫌いのレベルとははるかに違う偏食の問題につながっちゃうんですよね。それについてはコチラのnoteに詳しく書いています→”好き嫌いとは別次元な”自閉症の人の偏食”。「食べたくない」じゃなく「食べられない」んですよ!

他の人と極端に違う感覚の持ち主だからこそわからない他の人の気持ち

上に色々述べてきたように、感覚の問題がない人にとっては感覚の問題のある自閉症の人の行動が理解できず、叱ったり強制したりしがちなんですよね。でもそれと同じように、他の人と極端に感覚の感じ方が違う自閉症の人にとっても他の人の行動がうまく理解できなかったりするんですよね。

例えば注射の泣く泣かないって「我慢力」で片付けられがちだけど、痛さの感じ方も人それぞれ違うからなんですよね。

息子は注射で泣いた事がないんです。なぜなら痛いと思った事が無いから。歯医者さんの治療だって平気。だから注射後や歯の治療後の「よく頑張ったね」「泣かずに偉かったね」の意味が全く理解できなかったんですよね。だから逆に、泣いている子の気持ちがわからず泣いている事をからかってその子を傷つけてしまったこともあったんです…。こういった自閉症の子たちには、ソーシャルスキルトレーニングなどで、他の人の気持ちに気づいてどんな風に行動した方がいいか学ぶ機会が必要なんですよね。

こんな風に、自閉症の人と自閉症でない人は、違う感覚の世界で生きているからすれ違いが起こっちゃうんですよね。

でもね、今日私がこのnoteで書いたような事を知ってもらっていると、そのすれ違いも「相互理解」にかわる可能性があるんですよね。だからこそ多くの人に知ってもらいたい自閉症の人の特異な感覚の世界。

もっと詳しく過去のブログに書いています↓↓↓。ぜひこちらも読んでみて自閉症の人の事を知ってみてください!よろしくお願いします。


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