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呼吸器感染症よもやま話

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この連載は・・・ブログ「呼吸器内科医」(http://pulmonary.exblog.jp)や『本当にあった医学論文』でおなじみの倉原先生が紡ぐ,寝ころんで読める呼吸器感染症コ… もっと読む
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呼吸器感染症よもやま話(42)

[第42回]「結核の統計2023」を読み解く 倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 毎年この時期(本稿執筆時,10月)になると,結核年報1)が更新され,「結核の統計」2)が刊行されます.抗酸菌診療医としては,「ワクワクする秋」なのです.ではさっそく,この連載で読み解いていきましょう. 2年連続で低まん延国 まず,2022年に日本国内では新たに1万235人の結核患者の届け出がありました.人口10万人あたりに直すと,結核罹患率は8.2となります[図

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呼吸器感染症よもやま話(41)

[第41回]あなどるなかれアミノグリコシドの難聴倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.7 No.6 2023年11月 刊行)  現在も,ここぞというときにアミノグリコシドが使われます.呼吸器内科領域では,結核や肺Mycobacterium abscessus症に対してよく用いられています.  アミノグリコシドは,実臨床においてストレプトマイシン,アミカシン,ゲンタマイシンがよく用いられます.オールドファッションのア

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呼吸器感染症よもやま話(40)

[第40回]コロナ禍で活躍したハイフロー酸素療法 倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.7 No.5 2023年9月 刊行) COVID—19病棟で鳴り響いた酸素の音  中等症のCOVID—19を診療している病院では,高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula:HFNC,ネーザルハイフロー)に助けられました.HFNCは,加温・加湿をかけて大量の酸素を鼻から投与するデバイスで,経鼻で6

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呼吸器感染症よもやま話(39)

[第39回]アスペルギルス属はなぜアゾール耐性になるのか?倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.7 No.4 2023年7月 刊行) アゾール耐性の時代  アスペルギルス症の治療薬としてアゾール系抗真菌薬が用いられています.アゾールがないと正直やっていけないレベルなので,アゾール耐性の症例が増えているという論文を読むたび,ガクブルしています.  2007年に,アゾール耐性侵襲性アスペルギルス症9例のうち4例がアゾ

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呼吸器感染症よもやま話(38)

[第38回]慢性呼吸器感染症に対する吸入抗菌薬の革新倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.7 No.3 2023年5月 刊行) 使用可能な吸入抗菌薬  現在,国内で保険診療内で使用できる吸入抗菌薬は,囊胞性線維症に対するトブラマイシン(商品名トービイ®)と,肺MAC(Mycobacterium avium complex)症に対するアミカシン(商品名アリケイス ®)の2つとなっています[表1].国外では,アズトレ

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呼吸器感染症よもやま話(37)

[第37回]エタンブトールはなぜ視神経症を起こすのか倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.7 No.2 2023年3月 刊行) そもそも作用機序は?  エタンブトール(EB)は,結核か非結核性抗酸菌症のいずれかにしか用いられません.たぶん.特にMycobacterium tuberculosisとM. avium complex(MAC)にとって重要な薬剤となります.いずれの菌に対しても,強い抗菌活性に期待するだ

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呼吸器感染症よもやま話(36)

[第36回]呼吸器内科領域におけるリファンピシン徒然 倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.7 No.1 2023年1月 刊行) リファンピシン(RFP)の開発  RFPは放線菌Streptomyces mediterraneiの培養ろ液から抽出した抗生物質リファマイシンA,B,C,Dのうち,リファマイシンBを基礎として抗菌薬の実用化が模索され,結核菌(Mycobacterium tuberculosis)とグ

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呼吸器感染症よもやま話(35)

[第35回]Mycobacterium abscessusはヒト-ヒト感染するよう進化していく? 倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.6 No.6 2022年11月 刊行) Mycobacterium abscessusのジレンマ  抗酸菌のうち,迅速発育菌であるMycobacterium abscessus(M. abscessus)は,特に沖縄や九州地方などの気温が高い地域で非結核性抗酸菌(nontube

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呼吸器感染症よもやま話(34)

[第34回]喀痰を減らす方法 倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.6 No.5 2022年9月 刊行) 呼吸器感染症の主症状「喀痰」 喀痰は,呼吸器感染症を罹患したときの主症状です.膿性かつ粘性のこともあり,なかなか「キレない」とおっしゃる患者は多いです.生理食塩水のネブライザーを吸入してもらうだけでもかなり排痰しやすくなりますが,せっかくネブライザーするなら,ということでアセチルシステイン入りの生理食塩水を

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呼吸器感染症よもやま話(33)

[第33回]アリケイス®導入物語 倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.6 No.4 2022年7月 刊行) 吸入アミカシン(アリケイス®)とは この連載で吸入アミカシンの話を書くのは2回目になりますが,そのときはまだアリケイス®が発売されておらず,院内で導入する上で何が必要かということもわかっていませんでした.当院での処方も軌道に乗ってきたため,再度この薬について触れておきます.  アリケイス®は,標準治療を

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呼吸器感染症よもやま話(32)

[第32回]外国人結核を減らす取り組みを! 倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.6 No.3 2022年5月 刊行) 増える外国人結核 私が普段外来をしていると,毎週必ずといっていいほど,外国人の患者さんがいます.その多くが結核あるいは潜在性結核感染です.ベトナム,フィリピンから技術研修に来ている若者,インド料理店勤務のネパール人などが多い印象です.  日本において,人口10万人あたりの結核罹患率は年々減少し

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呼吸器感染症よもやま話(31)

[第31回]吸入ステロイドと緑膿菌の関係 倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.6 No.2 2022年3月 刊行) トリプル吸入製剤の台頭COPDや喘息の世界では,トリプル吸入製剤の処方が増えています[表1].錠剤の合剤と同じように,吸入薬も今や3種類が合体したものを使うのです.COPDにおいては,吸入長時間作用性抗コリン薬(LAMA),吸入長時間作用性β2刺激薬(LABA)によって1秒量の底上げやCOPD増悪

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呼吸器感染症よもやま話(30)

[第30回]水道水を抗酸菌染色したらどうなる? 倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.6 No.1 2022年1月 刊行) 退院できない結核患者さんが編み出した「裏技」 結核患者さんは,喀痰の塗抹あるいは培養検査が連続3回陰性にならなければ退院できません.空洞を有する症例や,もともと塗抹の菌量が多い場合,2ヵ月を超えて入院することはザラにあります.長期入院になるとストレスを感じるのは当然ですが,喀痰を出しても唾

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呼吸器感染症よもやま話(29)

[第29回]いつも悩ましい,片側大量胸水 倉原 優 くらはら ゆう 国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科 (初出:J-IDEO Vol.5 No.6 2021年11月 刊行) 抜くか・抜かないか高齢化社会を迎えつつありますが,胸水症例が増えている気がします.あくまでそういう気がするだけであって,エビデンスはまだありません.おそらくこれは滲出性胸水の増加をみているのではなく,高齢化による漏出性胸水をみているのだろうと確信しています.  呼吸器内科的には,「感染症の可能性

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