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泣く子も黙る感染対策

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この連載は・・・感染対策を推進するには,筋の通った上手な主張と現実に負けない熱意が必要.そんな「泣く子も黙る」感染対策担当者に役立つ最新情報をお届けします.
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泣く子も黙る感染対策(最終回)

[最終回]日常と非日常をつなぐ医療関連感染予防・制御の体制 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー (初出:J-IDEO Vol.6 No.1 2022年1月 刊行) J-IDEO創刊号(2017年3月)から始まったこの連載は今回で30回目,そして,最終回を迎えた.最後に何を書こうか迷ったが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応を通してみえた,パンデミックに強い医療関連感染予防と制御(infection prevention an

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泣く子も黙る感染対策(29)

[第29回]第5波以降のCOVID-19医療関連感染対策考 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー (初出:J-IDEO Vol.5 No.6 2021年11月 刊行)  本稿を執筆している2021年10月1日現在,都内では過去最大級の第5波がいったん収束し,緊急事態宣言が解除され,ほっとした雰囲気が街にも医療現場にも漂っている.  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の中心地は各地の都市部であるが,なかでも東京は,その人口規模や密

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泣く子も黙る感染対策(28)

[第28回]カテーテル関連尿路感染の予防 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー (初出:J-IDEO Vol.5 No.5 2021年9月 刊行)  カテーテル関連尿路感染(catheter-associated urinary tract infection:CAUTI)とは,採尿バッグに接続された膀胱留置カテーテルを使用する患者に起こる尿路感染を指す.医療関連感染に占めるCAUTIの割合は年々低下しており,かつては約40%を占めていたが,近

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泣く子も黙る感染対策(27)

[第27回]手指衛生について考える 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー (初出:J-IDEO Vol.5 No.4 2021年7月 刊行)  一つの病院の話で恐縮だが,新型コロナの流行でよかった数少ないことの一つは,手指衛生実施率が上昇したことである.手指衛生には二通りあると言われており,一つは他者のための手指衛生,もう一つは自分のための手指衛生である.たとえば,世界保健機関(WHO)が推奨している下記の手指衛生の5つのタイミングのうち,他者

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泣く子も黙る感染対策(25)

[第25回]新型コロナウイルスの職業感染予防 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー (初出:J-IDEO Vol.5 No.2 2021年3月 刊行) はじめに 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が医療従事者の健康に与える影響について,世界保健機関(WHO)は以下の5つをあげている【1】. ・新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染するリスク ・不規則な長時間労働や個人防護具(PPE)を着用しながらの不慣れな作業に従事するこ

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泣く子も黙る感染対策(26)

[第26回]新人に伝える新型コロナ流行期の標準予防策 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー (初出:J-IDEO Vol.5 No.3 2021年5月 刊行)  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行開始から2度目の4月がやってくる.昨年医療機関に就職した新人は,常にマスクを着けて働き,(少なくともおおっぴらには)飲み会に行かないのが当たり前の一年を過ごしたことになる.大変気の毒ではあるが,それもこれも,医療従事者が発端となるクラス

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泣く子も黙る感染対策(24)

[第24回]新型コロナウイルス感染症対策1年間の経験則 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー (初出:J-IDEO Vol.5 No.1 2021年1月 刊行) はじめに  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生して約1年が経過しようとしている.筆者が勤務する病院では1月以降,900名以上の疑似症を含むCOVID-19患者を受け入れてきた.今回はこの1年を振り返りながら,COVID-19対応を行うにあたり「これが役に立った」という(

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泣く子も黙る感染対策(23)

[第23回]新型コロナウイルス対策におけるマスクの使い方 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー (初出:J-IDEO Vol.4 No.6 2020年11月 刊行) はじめに 新型コロナウイルス感染症の感染経路については,本稿を執筆している9月28日現在,飛沫感染が主体であり,次いで接触感染であること,また,状況によっては空気感染も起こり得ると考えられている.  医療現場において飛沫感染を防ぐ手段として用いられるのがサージカルマスクとゴーグルま

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泣く子も黙る感染対策(22)

[第22回]新型コロナウイルス感染症の感染経路 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー (初出:J-IDEO Vol.4 No.5 2020年9月 刊行)  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染経路に関する考え方が変化している.報道された通り,2020年7月9日に各国の研究者らが連名で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が空気感染するとの書簡を専門誌上に発表し,WHOに感染対策を見直すよう要求した【1】.これを受けてWHOは同

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泣く子も黙る感染対策(21)

[第21回]検査でCOVID-19の院内感染を防ぐことができるか 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー (初出:J-IDEO Vol.4 No.4 2020年7月 刊行) ❶ 院内感染の水際対策としてPCR検査に寄せられる期待  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について,2020年4月20日に全国医学部長病院長会議が「無症状であっても,手術や分娩,内視鏡検査,病理検査あるいは救急医療などの診療実施前,また病理解剖を行う際に院内感染を

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泣く子も黙る感染対策(20)

第20回 新型コロナウイルス感染症の院内感染対策 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー (初出:J-IDEO Vol.4 No.3 2020年5月 刊行)  新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の国内感染者が今年1月中旬に初めて報告されてから2ヵ月以上が過ぎた.4月10日現在の感染者数は3,998人(死亡者85人)である【1】.3月下旬以降は東京都の感染者数が急増しており,その一部は患者と医療従事者からなる病院のクラスターで占められている【

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泣く子も黙る感染対策(19)

泣く子も黙る感染対策(19) 第19回 手指衛生(手指衛生のモニタリング編) 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー  世界保健機関(WHO)の“手指衛生を推進するための多角的戦略”は5つの中核要素から構成されており,このなかに手指衛生のモニタリングが含まれている【1】.WHOがモニタリングを重視する理由は,適切な手指衛生の方法を知っていても,手指衛生が感染予防のために重要だと認識していても,多くの医療従事者は放っておくと手指衛生を行わないからである

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泣く子も黙る感染対策(18)

泣く子も黙る感染対策(18) 第18回 手指衛生(手指衛生のタイミング編) 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー  前回に引き続き,手指衛生である.今回は,手指衛生のタイミングを取り上げる.医療機関で手指衛生をやらないという選択肢はないが,やみくもにやりさえすれば感染予防の効果が上がるというものでもない.手指衛生の目的が手指を介した病原体の伝播を防ぐことにあることを考えると,(少し古いが)「今でしょ」という効果的な実施のタイミングというものが存在す

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泣く子も黙る感染対策(17)

泣く子も黙る感染対策(17) [第17回]手指衛生(基礎知識編) 坂本史衣 さかもと ふみえ 聖路加国際病院感染管理室マネジャー  手指衛生は最も重要かつ基本的な感染対策に位置づけられているものの,医療従事者の平均的な手指衛生実施率は40%に満たないことがわかっている【1】.手指衛生は本能ではない.学習により後天的に獲得される行動様式であり,それには組織を挙げた積極的かつ複合的な対策が必要とされる.今回から数回に分けて手指衛生実施率を向上させる対策について解説するが,まずは

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