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Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(8)

Dr.岸田の 感染症コンサルタントの挑戦(8)
第8回 ICT(→AST)への臨床推論教育 ①
岸田直樹 きしだ なおき
感染症コンサルタント
北海道科学大学薬学部客員教授


はじめに

 前回は,メールや電話での感染症コンサルトについて述べました.感染症のもっとも効果的な学びの機会は一つ一つの実症例の現場へ出向いたコンサルテーション対応であることは間違いありません.しかし,臓器横断的な教育を受けた感染症専門医がいる施設はきわめて限られること,また,コンサルタントという立場は非常勤であるため常に院内にはいられません.よってベストとはいえませんが,いつでも気軽に相談できる間接的なサポート体制となりますが,このような関わりは現状では(今後も?)とても大きいと感じます.
 さて,このような臨床感染症のコンサルテーションが増えていますが,AST加算の流れからも,ICTメンバーが臨床推論の知識を持って実際の症例にアプローチすることが必要になってきました.また,今回の診療報酬改定の流れからも今後は感染対策に関する加算は減額され,ASTなど適正使用への加算の方向に向かっていると感じます(ICTからASTが分離する移行期とも捉えられますが,完全に分離可能なマンパワーを持つ病院は10年後もきわめて限られたごく少数の急性期病院ではないかと思います).当然感染症専門医が対応することがベストですが,ICDじゃダメとか,薬剤師,ICN,さらに検査技師ではダメというのも現状を理解していない現場目線ではない言い方と思います.日本スタイルとしてICTなど感染に関わる多職種が臨床推論の知識を共通言語として持ち,日本オリジナルな多職種チーム医療として抗菌薬適正使用に関わることが重要だと思います.ということで,今回は,「抗菌薬適正使用への道―ICTメンバーも職種を問わず臨床推論の知識を持って適正使用へ!―」です.多職種が十分なマンパワーを持っていて明確な役割分担ができる病院はそうしてください.日本オリジナルなハイコンテクストな関わりとして,臨床推論の知識は医師だけではなく多職種の共通言語となり,抗菌薬適正使用へのアプローチに必須と考えます.


ICTと臨床感染症

 感染症コンサルタントとして複数の病院に関わっていると,ICTメンバーから臨床感染症(感染症の診断・治療)の相談を受けることがとても増えています.ICT(infection“control”team)にもかかわらず,臨床感染症に関する判断を迫られることがあり,日々その対応に困っていてどうしたらよいか教えてほしいと言われます.臨床感染症の何に困っているか? を丁寧に分析してみると次の2つの側面があると感じます.

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