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微生物検査 危機一髪!(5)

微生物検査 危機一髪!(5)
[第5回]結核菌検査危機一髪
山本 剛 やまもと ごう
神戸市立西神戸医療センター臨床検査技術部

(初出:J-IDEO Vol.1 No.5 2017年11月 刊行)

結核菌検査には曲者が潜む

 結核菌を含む抗酸菌検査には塗抹検査,培養検査,感受性検査および核酸増幅検査がある.抗酸菌症は慢性感染症のひとつで,顕在化するまでには経過が長いこともあり,自覚症状や身体所見から疾患を突き止めにくいことがある.そのため発見の糸口は,検診で肺に異常陰影が見つかり精査した場合,長引く咳のため医療機関の受診を機会に発見される場合,不明熱で抗菌薬を投与しているが改善がなく検査をすると発見される場合,呼吸器症状に改善がない,または治療しているが皮膚症状が進行した後に発見される場合などいろいろある.
 抗酸菌症のうち結核を例にとるが,結核のうち約85%が肺結核で,呼吸器症状を主な症状として始まることが多い感染症である【1】.病理学的に結核結節とよばれる乾酪壊死を伴う肉芽腫性病変が形成され,時間とともに肺は空洞形成を伴うため,病理組織診で結節内に抗酸菌が証明されると肺結核が鑑別に上がり,診断を進めることになる.微生物検査では喀痰検査で塗抹検査,培養検査や核酸増幅検査において結核菌を検出することが最も確実な結核診断であるが,それぞれの検査は,特異性は高いが感度が良いとはいいがたく,簡単にいえば「若干クセがある検査」という言葉がしっくり合う臨床検査である.塗抹検査にしても,培養検査にしても,その特徴を理解することで「えっ? 結核なん!?」という背筋が凍る思いが少なくなる.今回はドボンしないための結核菌検査について考えていきたい.


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