忽那先生

日本全国感染症ケースカンファレンス道場破り(2)

日本全国感染症ケースカンファレンス道場破り(2)
[第2話] 佐久の青いイナズマ
(vs 佐久医療センター総合診療科 嶋崎剛志)
忽那賢志 くつな さとし
国立国際医療研究センター国際感染症センター/国際診療部


忽那「ここが長野県佐久市の佐久医療センターか……めっちゃ寒いな……」
上村「ええ……けっこう冷えますね……でも先生が寒いのはその柔道着みたいなヤツを着てるからじゃないですかね……」
忽那「バカヤロウ! これを着ないと道場破りの気分が出ないだろ! よし,じゃあ行くぞ.たのも~! 道場破りであるッ! 誰かおらぬかッ!」
嶋崎「何奴! ムムッ……そのヒゲ面……その柔道着……そしてこの平成の世に道場破りなどという時代錯誤な行動……貴様,神経梅毒だなッ!」
忽那「ほほう……オレを見て神経梅毒を疑うとは,お主,なかなかできるな! だが残念ながら,オレはMSM(men sex with men:男性と性行為を行う男性)でもないし神経梅毒でもないッ! 正気で道場破りをやっているんだッ!」
嶋崎「バカな……正気だと……ますます怪しいヤツめッ!」
上村「ですよね~」
忽那「しかし,現在日本が未曾有の梅毒流行状態であるという疫学的背景と,オレの風貌,そして奇異な出で立ちからとっさに神経梅毒と診断を下すその診断力……少なくとも診断力4兆は超えているとみた!」
上村「なんなんですか,急に出てきたその診断力とかいう概念は? しかもケタが異常に大きいんですけど」
忽那「上村,うるさいッ! 嶋崎とやら,相手にとって不足はない.さっそくオレに症例を呈示してみろッ! そしてオレが見事に診断できたら病院の看板をもらって行くッ!」
嶋崎「な,なんて自分勝手なヤツだ……」
上村「ですよね~」
嶋崎「仕方ない……貴様らにはとうてい診断できぬだろうが,私のとっておきの症例を呈示してやろう」
忽那「しゃらくさいわッ!」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2型糖尿病,脂質異常症を基礎疾患に持つ60歳代男性が発熱,頭痛,関節痛を主訴に受診した.受診当日の朝8時ごろから頭痛を自覚していたが,昼ごろには39℃の発熱も出現したため,市販の感冒薬を内服したが改善せず17時ごろに当院救急外来を受診した.受診時にも39℃の発熱があり,間欠的ではあるがNRS(Numerical Rating Scale)で10/10程度の拍動性の後頭部痛を自覚していた.
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