本質の感染症(4)
本質の感染症(4)
[第4回]欧米化
岩田健太郎 いわた けんたろう
神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座
感染治療学教授
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ふざけているのではない.いや,白状すると,少しはふざけている.
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最近はさすがに「欧米では」という輩は減ってきた.欧と米ではえらい違いである.いっしょにされたら,お互い憤慨するのではなかろうか.ベンツ売ってくんじゃねえ,フォード買えよ! と凄んでくる大統領氏とか.
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感染症の世界においても,「欧」と「米」はかなり違う.そして「欧」のなかでもバラバラだ.感染対策の優等生オランダと,まったくいけてへんギリシャを同列に扱うことはできない.前者には耐性菌はほとんど存在せず,後者は耐性菌だらけだ.それはそれとして,行きたいなあ,ギリシャ.
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「米」のなかもバラバラだ.東海岸と西海岸はずいぶん違うし,北と南でも随分違う.そもそも,近年はリベラルと保守派の対立が鮮明になっており,分断化された社会はますます分断化されている.「アメリカ人は○○な人たちだ」とはもはや言えないのである.前回述べた,過度の「一般化」になる.
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それはさておき,よく「これは欧米のエビデンスだ.日本では使えない」というコメントを見る.
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しかし,これは本当だろうか.そして,本当だとしたら,なぜそうなのだろうか.
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ぼくらがいわゆる「エビデンス」というのはランダム化比較試験(randomized controlled trial,RCT)の結果を指して言うことが多い.では,欧米で行われたRCTの結果は日本人患者には使えないのだろうか.そして,使えないとすれば,なぜか.
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