抗菌薬相互作用整理BOX(9)

抗菌薬相互作用整理BOX(9)
[第9回]ラシックス®,お前もか!
~フロセミドによる抗菌薬の腎毒性増強!?~
山田和範 やまだ かずのり
中村記念南病院薬剤部係長


はじめに

 ラシックス®(一般名:フロセミド)は,ループ利尿薬に分類される強力な利尿薬の1つです.
 集中治療の場では,十分な酸素化を得るために肺水腫を避けようと過剰な輸液を避ける一方で,適切な前負荷を維持し十分な心拍出量を得るために輸液を十分に負荷することがあります.このように呼吸・循環動態を維持するため,一見すると相反する管理が必要となることもあります.この体液管理をするためフロセミドの経静脈的な投与が日常的に頻用されています.
 ラシックス®の添付文書およびインタビューフォーム(IF)【1】には,「利尿作用はイヌを用いた実験で腎尿細管全域(近位,遠位尿細管およびヘンレ係蹄)におけるNa+,Cl+の再吸収抑制作用に基づくことが認められている」とされています.
 同じく添付文書の相互作用の項には,「アミノグリコシド系抗生物質,セファロスポリン系抗生物質との併用により,腎毒性を増強するおそれがある」と記載されています.機序としては,「近位尿細管でのNa+再吸収の増加に伴い,抗生物質の再吸収も増加することにより,組織内濃度が上昇し腎毒性が増強する」とあります【1】.
 あれ? 尿細管でNa+の再吸収を抑制しているのに再吸収増加とはこれいかに? 禅問答のようですが今回はフロセミドと抗菌薬による腎毒性増強(?)について取り上げてみたいと思います.


相互作用のメカニズム

 相互作用のメカニズムの前に薬剤性腎障害について少し整理したいと思います.
 薬剤性腎障害は,①中毒性の機序により薬剤が直接尿細管を障害する急性尿細管壊死(acute tubular necrosis,ATN)と,②アレルギーによる急性間質性腎炎(acute tuburointerstitial nephritis,ATIN),③腎虚血による腎障害,および④薬剤の結晶析出による尿路閉塞での閉塞性腎不全に分けられます2).ただし,薬剤のなかには,中毒性かアレルギー性か判別できないものも存在します.また,原因は1つとは限らず,①や②に③がオーバーラップしていることもあるでしょう.
 ここでは,①の中毒性の機序による腎毒性発現を主に考えたいと思います.① に属する抗菌薬には,アミノグリコシド系抗菌薬や第一世代セファロスポリン系抗菌薬,カルバペネム系抗菌薬,キノロン系抗菌薬,サルファ剤,ホスカルネットやアムホテリシンBなどがあります.ちなみにβ—ラクタム系抗菌薬は②の間質性腎炎を引き起こすリスクもあります.
 ①に属する薬剤は,何らかの原因で組織の濃度が高くなることにより毒性を発現する薬剤と考えられます.
 それでは,冒頭に記載した尿細管での再吸収抑制と増加について紐解いていきましょう.
 IF【1】をよくみてみると,その他の副作用の処置方法と機序という項目に高尿酸血症があり,その説明には,「ヘンレ係蹄におけるNa+の再吸収が抑制されることによる代償機能として近位尿細管での尿酸の再吸収が促進されるので尿酸の血中濃度が上昇し,高尿酸血症を起こす」と記載されています.
 これと同じように近位尿細管では代償的に再吸収が促進するようです.アミノグリコシド系抗菌薬は,尿中からメガリンという受容体を介してエンドサイトーシスによって管腔側(頂側膜側)から尿細管上皮細胞に取り込まれることによって腎障害が発症すると考えられています.セファロスポリン系抗菌薬は,血管側(基底膜側)から有機アニオントランスポーター(OAT)を介して近位尿細管上皮細胞に取り込まれますが,尿酸の再吸収が促進されると血管側から有機酸であるセファロスポリン系抗菌薬などの取り込みも増加すると考えられます(J—IDEO Vol. 1 No. 2 p. 193~5参照).
 このように近位尿細管上皮細胞の薬物濃度上昇が毒性発現に関与している可能性が考えられます.

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