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日本全国感染症ケースカンファレンス道場破り(1)

日本全国感染症ケースカンファレンス道場破り(1)
[第1話] 忽那,旅立ちのとき
(vs 国立国際医療研究センター 上村 悠)
忽那賢志 くつな さとし
国立国際医療研究センター国際感染症センター/国際診療部


ある日の国立国際医療研究センターにて……

忽那「おい,上村よ」
上村「なんですか」
忽那「突然だがオレは今日から道場破りの旅に出ることにした……」
上村「ど,道場破り? どうしたんですか急に…….おかしくなっちゃったんじゃないですか? 先生……もしや脳炎ですか? あ,そうか,先生,マダニ取りにいったりしてるし……ダニ脳炎かッ!? 急いでルンバールをせねばッ!」
忽那「落ち着け! オレは正気だ!」
上村「いや,むしろ正気の方がやばいんですけど! この平成の時代に,道場破りだなんて……ホントに正気なんですか?」
忽那「世の中にはまだまだ診断困難な感染症の症例がたくさんあるに違いない……オレはそういった難しい症例を診断した猛者に症例提示をしてもらい診断力を高めていきたいのだッ!」
上村「な,なんて自分勝手な理由なんだ……ホントに40近いオッサンが言うことか…….そもそも先生,今日当直でしょ? 当直前に病院出ていっちゃダメですよ」
忽那「そこでお願いなんだが,当直を代わってくれ.カネなら払う!」
上村「そうやってなんでもカネで解決しようとする大人の論理……最低ですね!」
忽那「うるさい! あの青○眞先生だって国立国際医療研究センターに勤務されていたときは当時のレジデントに当直を代わってもらっていたんだぞ!」
上村「先生みたいな小物が青○眞先生のマネをしちゃダメでしょ!」
忽那「どうしても当直を代わらないというんだな……よーし,こっちにも考えがある.上村,おまえが最近診断した症例を提示してみろッ! そしてオレがその症例を診断できたら黙ってオレの当直を代わってくれ! そしてオレは旅立つ!」
上村「どこまでも自分勝手なヒトだな! 言ってること無茶苦茶でしょ!」
忽那「いいから,早く症例を提示しろッ!」
上村「なんて強引なヒトなんだ……仕方ないなあ……じゃあ先生には診断できないであろうとっておきの症例にするか.じゃあいきますよ!」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 生来健康な19歳の男性が発熱と倦怠感を主訴に受診した.X日に38℃の発熱,倦怠感が出現したが市販の感冒薬を内服して様子をみていた.X+2日には発熱が遷延するため近医を受診しインフルエンザ迅速検査を施行されたが陰性であった.この際も解熱薬を処方され経過観察となった.X+5日にはやや解熱傾向となったが倦怠感が持続するため当院を受診した.━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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