【通年企画】50音ノベルゲームレビュー いろとりどりのセカイ 

作品データ

  • 作品名:いろとりどりのセカイ

  • ブランド:FAVORITE

  • 発売日:2011/7/29

  • ディレクター:水間ホシひと

  • 原画:司田カズヒロ,なつめえり,GT

  • ライター:漆原雪人

  • BGM作曲:忍

  • OP製作:KIZAWA Studio

  • 声優:澤田なつ,外屋舞美,加乃みるく,杏子御津,藤森ゆき奈

――主人公、鹿野上悠馬(かのうえゆうま)は魔法使い。

≪自らの生きた時間(思い出)を代償に、他者のいかなる負傷をも治療してしまえる力≫を持っている。
舞台は最果ての港町、風津ヶ浜(かざつがはま)に建つ少し不思議な学生寮、嵐山(あらしやま)荘。
その地下室は繋がりを持っていた。
色鮮やかな異セカイとの繋がりを――

少年はそんな些細(ささやか)な不思議に包まれながらも、当たり前の日々をまるで夢見るように緩やかに、過ごしていた。
「不思議な力を与えてくれる魔法使いの少女。彼女と共に夢の在り処と失ってしまったものの行方を探り」。
「ちょっとだけ素直じゃない幼馴染に、出不精な生活を世話されて」。
「学生寮の二階に住むグウタラなお姉さんと、不思議な世界を旅して回る……」。

そんな変わり栄えのしない時間を過ごしていた、ある日のこと。
満月が丸々とオレンジ色に煌く、夜のこと。
……空からひとりの少女が降ってきた。

「お願いします、魔法使いさん。どうか私を助けてください」

――そうして動き出す、ぼくらの時間。

吹き抜ける海風が頬を撫で……空からまっしろな羽根が降ってくる。

手と手を繋いで見上げた空に、ぼくらはまた恋することを、誓った──

http://www.favo-soft.jp/soft/product/world/index.html

評価データ

  • C(キャラクター要素)5点
    キャラクターデザインを含め色とりどりな個性を持つヒロインやサブキャラクターが魅力、そして何よりFAVORITEを支え続けている二階堂真紅を生み出したという最大の功績が存在する

  • R(関係性要素)2点
    基本的に様々な出来事に振り回され続ける物語のため、恋愛を楽しむ余裕はかなり少ない。

  • S(世界観要素)4点
    書きたいテーマ性とそのための世界観構築は見事、公開しきれなかった世界観が見え隠れしているのが少々勿体ない。

  • G(脚本・展開要素)3点
    とにかくヒロインと主人公を絶望の淵に叩き落し続ける展開に霹靂する可能性あり。

  • H(エロ)1点
    何故か澪だけ3シーンあるが、基本2シーンで真紅は1シーン。入れることが難しい物語ではあるが真紅1シーンはちょっと……

  • E(演出力)3点
    音楽の使い方や世界観を活かすための背景の使い方など作品の世界に浸るための素材量と使い方は圧巻レベル。

戯言

ということで2回目です。
……正直テンション低いですよええ。少々リアルでいろんなことがありました。疲れ切った体に鞭を打って文を書いています。幸せになりたい……楽して生きていきたい……とは言いませんが、まあしっかり休んでエロゲができるくらいのお時間くらいは欲しいものです。ただそんな状況でも愚痴を言える場所とそれを聞いてくれる人が周りにいる今はとても幸せな状況なんだと思います。そんな人も何もなく、ただ色んなものに振り回されてボロボロになっていた時期があり、そんな時に自分を助けてくれたのがこの「いろとりどりのセカイ」という作品でした。自分にとってオリジンと言っても差し支えのない作品です。
あらすじから見える通りがっつりとしたファンタジーの作品、そこで描かれる異世界の数々はどれも独特のもの、この世界の設定を再利用してライターが書いた「異セカイ迷子の半透明とやさしい死神」という作品が存在していることからも緻密さは伝わるでしょうか。因みにFAVORITEでこの作品の後に発売された同ライターの作品、「さくら、もゆ。-as the Night's Reincarnation-」もこの作品と繋がりがあります。大好きかよこの世界観。そんな余談は置いといて、個性豊かなヒロイン達に囲まれて、その日常を送り、そして彼女達の抱える自分がここにいていいのかというアイデンティティに関わる悩みを解決していくことが個別ルートの大きな軸になっていきます。そしてもう一人、この作品を語るうえで絶対に欠かすことができない……どころかこの作品そのものとも言っていいような少女が存在します。それが二階堂真紅、もう生まれて10年が経つというのに熱心なファンが本当にたくさん存在するどころか、増やし続けているヒロインです。真紅可愛いはアレセイア。そんな彼女は他のヒロインと違ってヒロイン達との日常には存在しません。主人公にしか見ることができない彼女、なので日常の中に顔所は存在できず、そして主人公とは他のヒロインと結ばれたときに記憶と共に別れる定めにある少女です。各ルートで消えてしまったことと記憶が消えてしまったやり取りが存在するのですが……吐きそうです。なんであんなに人の心がないような演出ぶっこむのでしょうか。辛いです。しかも4人分しっかりあります。泣くぞ。真紅のルートに入るには全員分のルートに入らないといけないので余計に辛いです。そんな悲しみを越えて真紅ルートに入ることができた後に知る真実は……また地獄です。世界の意味、時折挟み込まれた真紅の記憶、そして異世界とは何だったのかがこの章でがっつり語られます。超長いです。さくらもゆでも過去話が入るパートがありますが、この衝撃の真実編はとにかくなげえ!そしてこれまでの話がそんなに重い話じゃなかったんじゃないかと錯覚するほど重いお話が語られます。今回の場合は主人公がどのような罪を犯してしまったのかとその罪の精算の方法が描かれます。……まあ読んだらみんな口をそろえて同じことを言うと思います。この主人公最低だな!、と。まあ状況が状況とはいえ倫理的に最悪なことをやらかして、そしてそのせいで最悪の結果に繋がってしまっています。ただすべてを否定するには状況が酷い。そして何より一番の被害者であるはずの二階堂真紅という少女はそれでも主人公、鹿野上悠馬のことを愛し、一緒に生きたいと言葉にします。そのうえでこの罪をどう償えばいいのか、悩み苦しんだ結果とその結末が描かれるまでがいろとりどりのセカイという作品です。
そしてその結末とは正直に言うと甘いとしか言いようがないものでした。たどり着いた道のりはすべてを解決することができる二階堂真紅のために都合のいい世界を作り切り、彼女を幸せにするというもの、結局そこに彼が罪を赦される描写は存在しません。そんな「罪を犯した人でも幸せにしたい人のために生きることを肯定する」物語がこの作品です。
さて罪は赦されなければいけません。そのための物語、他の4人のヒロインにとってFDであるにもかかわらず、二階堂真紅にとっては本当の幸せにたどり着くため、二階堂真紅と鹿野上悠馬が幸せに生きていくための物語が「いろとりどりのヒカリ」という物語です。ということでいろセカをやっただけでは本作は終わりません。罪を犯した鹿野上悠馬という少年がそれを雪ぐために今作でも真紅には何回も泣いてもらいます。ライターさんは以前女の子は泣いている顔が一番可愛いと言っていましたが……やり過ぎだ。既プレイの方にとってはトラウマになっているのではないでしょうか、「諦めるか」という言葉を。

大体こいつが悪い

この作品は真紅以外の4人は本編個別ルートのその後の物語と真紅の妹の物語、そして真紅と悠馬の本当の贖罪の物語で構成されています。一番最初は真紅と悠馬の幸せな日々と地獄の始まり、どう考えても碌でもない終わり方をしているのにそんな彼女が消え去った後の物語を読み、悠馬が何をしてしまったかを知るための妹の物語を越えなければ真紅との物語に進むことさえ許されません。ということでその道のりは非常に険しいです。
そしてそんな最終シナリオですが……重い上に何回も絶望します。悠馬が何をしてしまったかを詳細に語られ、その被害者たちに赦しを請い、何度も否定される。その裏で悠馬を助けるために真紅が必死になっても失敗して状況が一気に悪化していく。これがかなり長い尺で語られます。この中で何回も繰り返されるのが「諦めるか」という言葉、話を聞いているとこの言葉でマジで諦めてやめてしまった人も多いとか、とにかく重くて重くて話が進むにつれて明らかに詰んだ状況に突き進んでいくのがこのルート、そんな状況を打破するためにある女の子が立ち上がります。そこからどのように幸せをつかんでいくのか、ここからは自分の目で確かめてください。どんなアナタであったとしても、そんなアナタが幸せになって欲しいと思う誰かはいる。だから頑張っていきてほしい。長く、重く、辛くて何度も心が折れてしまいそうになったとしてもその先で語られたテーマは自分にとって今でも支えになっている言葉です。
そして最後にもう一つ、「紅い瞳に映るセカイ」という作品が存在します。この作品は真紅のためのFDです。一応真紅は酷い目に合いません……一応。
なんだかんだで幸せそうな彼女とヒロイン達との日常を楽しむことができます。内容的には幸せそうな姿ばかりなので全然堪能できなかったであろう真紅とのイチャイチャ成分はここで回収しましょう。そしてこの作品のラストシーンもぜひ見てほしいです。

どうかここまで辿り着いてほしい。

結局1作品どころか3作品の紹介となりましたが、このゲーム実は昨年の9月にHD版が発売されています。ここには今回紹介した3作品がしっかりと収録されており、買えば全部揃います。最高ですね!買いましょう!こちらにはこれまで同人誌という形で発売された資料集やライターによるSS集などなど色々ついています。そこまで読むことができればこの作品を閉じることができたと思えると思います。資料集には一番最初のいろとりどりのセカイの原型の話なども書かれているので結構おすすめです。

ということで今回は「い」であるいろとりどりのセカイを紹介していきました!この作品のシナリオライター、漆原雪人先生はこのように「幸せになってはいけないと思っている人への応援歌」のようなシナリオを作ることが多いです。それは今回記事中でも挙げさせてもらった「さくら、もゆ。-as the Night's Reincarnation-」と「異セカイ迷子の半透明とやさしい死神」でも同様です。そしてそんな漆原先生が新作ラノベを書かれました!それが「もしも明日、この世界が終わるとしたら」、今回もあらすじを読んでる感じだといつも通りのノリの模様。まだ読み切れていませんが、相変わらずヒロインの幸せを左右する物語となっているようです。こちらもぜひ興味があったら手に取ってみてください!

そして次は「う」の作品!こちらどうしようかなと思っていたのですが、やはりこの作品……しかないでしょう。
アニメにもなったあの作品を書いていきたいと思います。

Next Hint!

アニメなんであんな風になっちゃったですかね……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?