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年記 2023年

 小学4年ころだったろうか、夏休みの宿題として何に使ってもいいからノート1冊埋めてこいという今思えば独創的な夏休みの宿題が出たことがあった。子供のほうが頭が柔らかいはずという世間の期待とは裏腹に、宿題を出した先生に比べて独創性の乏しい小学生だったので、何で埋めるかで非常に困った。ノートが中盤に差し掛かったころ、ネタ切れ気味だった私は苦し紛れに日記を書くことにしたのだが、残念ながら三日坊主で終わってしまった。うろ覚えだが、初日の日記は「日記を始めることにした」で3日目の日記は「日記を終わることにした」だったような気がする。そんなわけで日記というものに苦手意識があるのだが、年記ならどうだろう。一年に一度その年にあったことを書くだけならばなんとかできそうだ。年記ならば三日坊主になっても3年続いたと言えるのがよい。さらに言うなら日記を書いている人がよく言う、「何年か経ってから見返すと当時の自分が何を考えていたか思い出せて面白い」という憧れのあれを、少ない労力で実現できる点も優れている。

 さて、前置きが長くなってしまったが本題に入ろう。時系列順に振り返ろうとすると、6月以前のことの記憶が薄れまくっていることが如実に表れるので順不同で思い出したことを記していこうと思う。

 生活面での大きな変化はやはりマンションを購入したことであろう。昨年からなんとなくSUUMOで中古マンションの情報を眺めていたのだが、割安な物件が流れ星のように現れては消えていく様に焦燥感を覚えた私とMSH(マイスイートハニー)は、試しに内見にいくことにしたのだが、なんかもうその勢いで購入することにしてしまった。この判断が正しいかどうかはわからないが値下がりしてたら悲しいのでSUUMOは数年間見ないことにしよう。
 あまり購入の流れを下調べをしていなかったので、手付金などでそれなりの現金が必要になることを知らず、ちょっと慌てる羽目になった。次回買うときは気を付けようと思うが、まあこの記憶が定着するかどうかは神のみぞ知る世界である。

手付金用のお金で下世話なひな人形ごっこ。この2か月ほど後、私は数千万の借金(住宅ローン)を背負うことになる

 仕事に関して振り返ると、ChatGPTの台頭はやはり大きな変化であった。コードを書く機会があると会社で使えるGPT的なものにとりあえず聞いてみるのだが、出てくるコードはどこか冗長で怪しいことが多い。「まあ、そんなもんか」と思いながら手作業で修正するのだが、テストしてみると「あ、ふーん、そういうパターンもあるんだ。へえ、やるじゃん」などと思いながら私が思い至らなかった例外処理のコードを元に戻すことになるのだ。これがシンギュラリティってやつか。シンギュラリティを全身で感じられる時代に生まれたことは幸運である。
 ところで、今年のいつだったかに感じたことなのだが、エレベーターの話をするときに「エ(エスカレーターがエスカレートする様を思い浮かべながら、これはエスカレーターじゃないから)レベーター」みたいな感じで一瞬でエレベーターとエスカレーターを判断しながらしゃべれる人類ってとてもすごいと思う。わしゃあまだまだシンギュラリティには負けんぞ!

 今年は細々と用事があって出社頻度が去年よりかなり増えた。出社すると、テレワークがメインになってから随分社会人としての自覚が失われたなと実感する。会社の敷地内だというのに、この白線以外マグマごっこを何度無意識のうちにしてしまったことか。

生成AIに作ってもらったこの記事のイメージ画像

 今年の大きな出来事の一つに阪神の優勝・日本一がある。30年ぐらい応援していると、生え抜きの現役選手はすべて入団時から見ていた選手で、コーチ陣も現役を知っている選手が多くなる。優勝はもちろんうれしいのだが、この愛すべき選手たちが優勝を経験できて本当によかったという何目線かよくわからないほっとした感情を抱き、我ながら少し困惑した。来年は余計なことを考えず単に喜びたいので是非連覇してもらいたい。思えば阪神の現役選手はみんな年下になったし、会社の飲み会でも若手がたくさん食べているのを見ると妙に安心する。おじさん化の足音がひたひたと忍び寄ってくる。

日本一のお祝いに食べに行った神戸牛

 阪神の日本一は38年ぶりだったのだが、もう一つ約30年ぶりの出来事があったことを思い出した。
 おねしょをした。そう、おねしょをしたのだ。35歳男性が、おねしょをしたのだ。その日の前日は雀荘にいっており、雀荘に行くと決まって帰ってから沢山水分を取ってしまうのだが、この時はそれに加えてお酒を飲んだせいで余計に水分を摂取してしまい、さらにトイレに行かずに寝てしまった。約30年ぶりのおねしょはそれなりにパニックになったけれど、その日以降会社で後輩を指導する機会があると、「こんな偉そうなこと言っているけど、俺おねしょしたんだよな」という事実が頭をよぎるようになり、妙に可笑しい気持ちで日々を過ごしている。思えばちゃんと確認したことがないから知らないだけで、同僚も意外と皆おねしょしてるかもしれないな。私のようなごく普通の人間の身に起きることは、他の人の身にも起きうることなのだ。

 今年訪れた旅行先についても触れておこう。旅行の記憶というのは存外
混濁しやすいので年記に書いて記録しておくにふさわしい話題である。今年は大分、山梨、新潟に行った。このうち大分、新潟はMSHと、山梨は一人旅で行ってきた。

 大分は温泉県を自称するだけあって、旅館の温泉のクオリティが他の県の同価格帯の宿と比べて5割増しぐらいだった気がする。別府では今回は地獄めぐりをしたが(なおめっちゃ楽しかった)、次回はもっといろいろな日帰り温泉に入りたいものだ。次回したいことって、次回行った時の帰りに、「そういえばあれしたいと思ってたんだった。しまった。」みたいになりがちなので、ちゃんと記録するようにしよう。
 今回は湯布院、別府、中津に行ったぞ!国東半島とか耶馬渓とかは行きたいけど行けてないぞ!
 未来の自分にこの声は届くだろうか。

宿の近隣にあった金鱗湖

 新潟では新潟駅周辺、咲花温泉、佐渡を巡った。佐渡は景色もよく、たらい舟や金山など楽しいポイントも多かった。金山が世界遺産に登録されるらしいので数年後はもっと観光しやすくなるかもしれない。ご飯が美味しいところでもあるので違う季節にも行ってみたい。
 ところで佐渡にはジェットフォイルで移動したのだが、翼走という形態は初体験だった。というか翼走自体知らなかった。35歳まで無知を熟成したうえで学んだ知識というのは味わい深いものがある。

金山の近くにあったかっこいい遺構。遺構に行こう

 山梨は別記事で詳しく書いたので省略。

 本当だったら美味しかったお酒の紹介でもしようかと思っていたのだが、今年はあまり記録を取らずに過ごしてしまった。美味しいお酒との出会い自体は結構あったはずなんだけど。

 来年以降も年記を書くかは現段階では分からないが、数年すれば生成AIに私の文体をマネさせて、代わりに年記を書かかせる時代が来るかもしれない。それまでは頑張ってみようかな。

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