「法的三段論法」は難しくないじゃない。
*初心者of初学者向けの記事です。
*作者は一介の駆け出し法学部生に過ぎません。誤り等ありましたら、XのDM等で速やかにご指摘いただければ幸いです。
*上記画像はhttps://twitter.com/rain_shower0119/status/1720449631837134983 より引用しました。
第1 そもそも三段論法とは?
1.「お気持ち表明作文」にならないために
法学部に入学すると、先生方は口を揃えて「答案は法的三段論法で書け」と仰います。「法的三段論法」が何かについて、もちろん「法学入門」の授業などで解説はされると思いますが、一応全回出席していたはずの私には、あまり記憶がありません。いずれにせよ、大学は高校や予備校ではないので、懇切丁寧に教えてくれることを期待すべきではないと思います。
ところで、例えばC大学で民法総則Aを担当する某教授は、入学して3か月しか経っておらず、しかも語学の試験に追われている1年生に、期末試験として事例問題を出すわけです。その是非・功罪はともかく、書けなければ0点となるため、同科目には出席点などない以上、単位を落としてしまいます(「落単」)。
そうならないために、大学生の過半数は人脈を駆使して過去問を入手し、だいたい語学の試験が終わってからの1週間から2週間ほどではじめて真面目に勉強し、ぶっつけ本番で「コスパよく」期末試験に挑むわけです(私見及び偏見。コツコツ勉強する勤勉な中大生も当然たくさんいます)。
ですが、答案を書く上で大前提のルールである「法的三段論法」が分かっていないと、期末試験の答案はまともに書けません。本人には自信があったとしても、また、日本語的には正しくとも、いわゆる「お気持ち表明作文」になってしまいます。お気持ち表明でも“楽単”なら単位をゲットできることはありますが、いずれにせよ、成績発表まで落単・再履の恐怖と戦うことになります。
それに対して、法的三段論法で答案を書くことができれば、単位取得の可能性は格段に上がります。成績発表を待つまでもなく、ウキウキして夏休みに突入できるはずです。
2.そもそも「三段論法」ってなに?
「法的三段論法」という前に、そもそも「三段論法」とは何なのでしょう?
百科事典マイペディアには、こうあります。
これで理解できたという方は、ブラウザバックしてください。
私の頭にはあまり入ってきませんでした。
小学館のサイトには、分かりやすいものの抽象的な説明が載っています。
なお、Wikipediaでは、必ずしも「三段」である必要ではないとのことです。独占禁止法の専門家である白石先生のポストも併せてご参照ください。
3.「三段論法」は等式で表わしてみよう!
辞書的な説明ではしっくり来ないという方も多いかと思います。
そこで、角度を変えてみましょう。そもそもですが、「三段論法」は何をどう説得するためのものなんでしょうか?
この問題提起が明確でないと、法学部の期末試験では減点される可能性があります。問題提起ができていない答案では、整然とした論理が展開されにくい(=整然とした論理が展開できない人は、法律のことを理解していない可能性が高い)からです。
では、百科事典マイペディアにもある有名な命題、「すべての人間は死ぬ。ソクラテスは人間である。ゆえにソクラテスは死ぬ」の問題提起はどうでしょう。
これを言った哲学者(?)は、「ソクラテスは、死ぬと言えるのか?」と問題提起したわけです。
期末試験の答案風に書くなら、まず一番最初に、「ソクラテスはなぜ死ぬといえるか。」などと書き始めることになります。
そう問われた一般人は、
「ソクラテスは人間なんだから、死ぬに決まってんじゃん」
と答えるでしょう。ですが、そこには、「人間は死ぬ」という前提が明確には示されていないことに注意する必要があります。「人間は死ぬ」というのは自明の理であるとはいえ、厳密に言えば、論理が飛躍しているのです。
法学は説得の学問である、と言われます。
そこで、法学部生の思考方法としては、三段論法を使い、「全ての人間は死ぬものだ。ソクラテスも人間にあたる。だから、ソクラテスは死ぬと言える」などと答えるべきことになるでしょう。この答案を書けば、論理は飛躍しておらず、提起された問題に対してきちんと説得したことになります。
さて、これを等式で表わしてみましょう。
そうすると、
問題提起:「ソクラテス」(A)=「死ぬ」(C)という等式は成り立つか?
①すべての「人間」 (B)=「死ぬ」(C)
②「ソクラテス」 (A)=「人間」(B)
③ゆえに「ソクラテス」(A)=「死ぬ」(C)
となります。つまり、まず
①B=C(大前提:一般的・普遍的な原理)
②A=B(小前提:具体的な事実)
という等式が成り立ちます。
そして、①と②において、「B」が共通しているため、
A=B=C
となり、
③「A=C」という結論を導き出しているわけです。
4.【注意】覚えやすくしてみた
以上の説明が、「三段論法」についての必要十分な説明です。
もっとも、この説明に若干しっくり来ないという人もいるのではないでしょうか。私がそうでした。
その原因はおそらく、「『A=C』を証明したいのに、いきなり『B=C』から始まっている」からではないでしょうか? 考える際にも、少しややこしくなってしまいます。
そこで、大前提と小前提の順序を逆にしてみましょう。
すなわち、「ソクラテスは人間である。すべての人間は死す。ゆえにソクラテスは死す」とするわけです。
そうすると、
「ソクラテス」 (A)=「人間」(B)
すべての「人間」は (B)=「死す」(C)
ゆえに「ソクラテス」(A)=「死す」(C)
つまり、
①A=B(小前提)
②B=C(大前提)
③A=C(結論)
という流れになります。もちろん、こうすると小前提→大前提となってしまっているため、三段論法に関する正確な説明とは言えなくなっています。論理学に対する冒涜だと言われてしまうかもしれません。
しかし、本稿の目的は、法学部に入学した方・法律科目が苦手な方に「法的三段論法」の感覚を簡単に掴んでもらうことにあります。そのために最も重要なのは、大前提と小前提の順番ではなく、「順序立てて、丁寧に説得(論証)する方法を体感し、その重要さを納得してもらうこと」だと考えます(そして、それが法学部教育の意義の一つではないかと思います)。
また、法的三段論法においては、「大前提」や「小前提」といった紛らわしい言葉は基本的に要しません。そして、三段論法の理解という点では、こちらの等式の順番の方が覚えやすいと思ったため、あえて書いてみました。もっとも、これ以上、三段論法について深入りする必要は、私を含め一般人にはないと思います。
なお、サイト等によって、「A」「B」「C」の割り振り方が異なることにご留意ください。
★要するに、「A=B」と「B=C」という2つの条件から、「A=C」という論理を導くことを、「三段論法」というわけです。
第2 法的三段論法とは? ~「規範」→「あてはめ」→「結論」~
三段論法の感覚を掴みさえすれば、7割がた理解したも同然です!
というか、「法的三段論法」とは、「規範」→「あてはめ」→「結論」であると言ってしまえばそれで終わりです。
ここでは、論文式の問題を法的三段論法で答える方法という観点から、簡単に解説してみます。
①規範:三段論法でいう「大前提」(「すべての人間は死ぬ」など。B=C)にあたるものです。
法的三段論法において先ず定立する規範は、主に法律です。
また、その法律の条文について行われる解釈も、問題の「論点」として、規範となり得ます。
→実際の試験では、その問題で問われているものに関する法律の条文などをピックアップする(「規範を定立する」)ことになります。
②あてはめ:①で定立した規範に対して、問題文において書かれている事実があてはまるか(A=Bが成り立つか)、検討を行ないます。
ちなみに司法試験では、この「あてはめ」をいかに充実させられるかが、一つの勝負になるそうです。
法学部の期末試験においても、問題文中において、検討の不要な事実は基本的に存在しないと考えるべきでしょう。
③結論:「あてはめ」の結果として、問題提起に対する結論を書きます。基本的に、その問題提起を肯定するか、否定するかを書くことになります。
例えば民法の問題で、「所有権(民法206条)に基づく本件土地明渡請求は認められるか。」と問題提起を行なった場合、その結論は、「以上より、本件請求は認められる。」のように書くことになります。
刑法の問題なら、「甲に窃盗罪(刑法235条)が成立するか。」と問題提起した場合、その結論は、「以上より、甲に窃盗罪が成立する。」のように書くことになります。
なお、接続詞としては、「以上より」あるいは「よって」を使うことが多いです。
なお、前掲の白石先生の一連のポストでは以下のように書かれていますが、これも基本的に意味は同じです。
*ただし、白石先生のポストでは、「事実」と「規範」の順序が逆になっています。法学部の試験においては、まず⓪「問題提起」を行い、次に①「規範」を定立し、その規範に②事実を「あてはめ」て、③(⓪の問題提起に対する)結論を導くという書き方が一般的なのではないかと思います(私見)。
実際の答案の書き方や答案例については、期末試験の少し前あたりに投稿したいと思っています!(願望)
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