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世間知らずの起業物語 その18

新会社TrustPointの行く末に不安を抱きつつ、会社設立は急速に進んでいた。
そして、不確かな未来の計画を描きつつ、通常業務もこれまで通り、ドタバタと進んでいた。


伏魔殿

会長室に呼ばれた次の日の朝、僕は法務局へ出向いていた。

TrustPointの法人登記のためだ。
元々、僕1人の会社の予定だったため、自宅で登記することになっていた。
だから、東京ではなく僕の地元の神奈川の法務局へ。

僕:『これで、会社は設立できるけどな・・・』

会社設立自体は問題はない。
いざとなれば、ひとり親方ではないが、エンジニアとして稼げばいい、とさえ思っていたからだ。
ただ、村上さん、桜田さんの2人がいるとそうもいかなくなる。

村上さんは、前職はアパレル系の会社の管理部の責任者であった。
グループに転職してきたのは、昨年の年末。まだ6ヶ月程度しか経っていないのだ。川上会長も、まだ日が浅い村上さんに、こんな大事な役割を任せるのは不思議だな?とは思った。

元々、管理部は北条が責任者として任されていた。
太陽光発電事業が大きくなるにつれ、管理部の業務だけではなく、太陽光発電事業も担当することとなり、今では土地担当、いや、土地事務担当として、管理部を離れているのだ。

そうは言っても、それまでの長い間、SIerが主業であったときから10年近く、北条が責任者として任されていた部分もあり、北条の管理部に対する「圧」は強いし、見えない「権限」が残っていた。

そのため、村上さんが管理部の責任者となるまでの間、何人もの人がやってきては去っていっていた。北条の圧に耐えられなかった、というのが事実であった。まさに伏魔殿を表していた。

そんな伏魔殿の状況が長く続く中、以前、川上会長に聞いたことがあった。
管理部の全てを任されていた北条を管理部から、土地事務担当と異動した理由をだ。

正直、事業自体が忙しくなったとしても、SIerから太陽光事業に転換し、複雑化する会計処理は、それまでの管理部の責任者である北条が対応した方が、効率的だと僕は感じていたからであった。

土地業務は、新しい人に覚えてもらえば良い。誰にとっても新しい業務だからだ。

『なぜ、北条を管理部から土地担当にするんですか?』という僕の問いに、川上会長は「北条は数字に弱いから、複雑な太陽光事業の会計処理はできないでしょう。元々、経理とかは向いてないと思いますよ。」と、いつものようにニヤニヤしながら言っていた。

そして、昨年末、約半年前に入社してきたのが村上さんであった。
これまで1年もった管理部の中途組はいなかった。

飲食事業

もうひとりの桜田は、元々、グループの新規事業として計画していた飲食事業の責任者として3年前に転職してきた。

元々、自身で飲食業、店舗経営などをしており、その後、事業のために中途採用したシェフの加藤と共に、約2年半ほど、飲食業の事業展開に勤しんでいた。

昨年末から、グループの資金繰りに問題が生じたため、飲食事業の計画を一旦ストップし、グループ全体として太陽光発電事業に注力することとなり、桜田も加藤も携わることになっていた。

桜田は、そのコミュニケーション力の高さから、山田と共に販売を担当することとなった。

立場的には桜田は部長級であったから、本来は山田よりも役職は上であった。

が、しかし、この半年間、桜田のにこやかだった顔が、どんどん苦しくなっていくのが周りからも明確に分かるほどであった。

太陽光事業スタート時から携わる、いや、この事業を立ち上げたメンバーの中心人物と言って良い山田は、我がもの顔のように立ち振る舞い、文字通り、桜田を顎で使っていた。

山田が言っていないことを先回りして対応すれば、「なんでそんなことするの?」と言い対応を咎め、山田の頭の中にある業務を(もちろん知らない)桜田が対応していないと「なんで、そんなことをしていないの?」と罵り、言われたことだけを、自分の指示通りにただやっていれば良い、という状況を作り出そうとしていた。

桜田は、それに抗うということではなく、うまく進むように、持ち前のコミュニケーション力で対応していたが、それ以上に、揚げ足をとられるようなツッコミばかりの日々が続いていたのだ。

だから、桜田にとってみると、販売担当から、新しい会社でひとりで販売を進めるということは、良いことだったのかもしれない。

しかし、2人に本当に新しい会社に来てもらっていいんだろうか?

法務局を後にして、新宿に向かう電車に乗り込んだ。
もう梅雨も明け、暑さが増しつつ7月の中旬のことであった。

つづく

※この物語はフィクションです。

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