ミュージックトゥナイト ‐ 村井君七変化

今回は、「戦国鍋TV」の中でも特に人気だった、「ミュージックトゥナイト」の、パロディーユニットの中から「押し」の村井良大氏が参加していたものを紹介しよう。ちなみに戦国鍋TVは、現在もTVKや、千葉テレビでエンドレス再放送中である。
 
「SHICHIHON槍」 加藤嘉明(孫六)
 持ち歌は「シズガタケの七本槍」
最年少のメンバーとして、可愛さを前面に押し出して演じている。クリッとしたお目々の美少年。無邪気で人懐こい笑顔は好感度抜群。オープニングでソロを担当する3名のメンバーに選ばれ、終始一貫気合の入った本気の歌唱。煌めく高音が印象に残る。移動の多いハードなダンスで、全力疾走する姿が健気。それでも愛嬌のある笑顔を絶やさず、息を切らしているようには見せないところがプロだ。決めポーズの美的な安定感もセンターにふさわしく、ピカイチ。
 
「天正遣欧少年使節」 千々石ミゲル
 持ち歌は「GO!天正遣欧少年使節」
洋行帰りを気取った所作も顔もセリフ回しも、鼻につく王子様キャラ。これを見て彼に惚れた女子数多。恒例の自己紹介では、カメラ目線で歯の浮く甘い一言を添えてファンサービスをするのだが、気障なセリフに、自分で言ってて口元がむずむずしている様子が見て取れる。きっと照れ屋さんなのね。美形四人をそろえておいて、徹底したコント仕立て。その後のミュージックステーションのスタンスを決定づけたユニットだ。
 
「堺衆」 津田宗及
 持ち歌は「エブリデイ儲かんでい!」
そろばんは持っているけれど、豪商という設定でこの衣装ですか、というラフさ。ま、動きやすそうだし、軽さが彼には似合っている。きれいな顔を保ち続けなくてはならなかった「天正遣欧少年使節」の反動か、リラックスして役を楽しんでいるようだ。姿勢も悪いし態度も横柄、コテコテの関西弁の下世話なセリフもよくはまっている。比較的動きが穏やかなダンスでは、体幹の強さとバランスの良さが際立つ。頼りになるメンバーのおかげか、歌はあまり力まずにさらっと流している感じ。
 
「信長と蘭丸」 織田信長
 持ち歌は「敦盛2011」
ファンデーションで肌色を濃く見せているのが健気。アイメイクは濃い目だが、まなざしはマイルドだ。眉間や目じりのしわ、顎を張った口元の表情で年齢を演出し、行動力が有り余ってる信長様を演じている。蘭丸の前での情けないまでのデレデレさは彼の真骨頂だが、鈴木氏演じる、清楚で妖艶な蘭丸なればこその、ハイクオリティーなBLラブコメにしあがった。これまでユニットの一部として調和してきた部分を「個」の勝負として吹っ切ったか、この役を機に、村井氏の戦国鍋でのスタンスが変わる。本気モードの役者として、チャーミングでかっこいいスケベおやじ「信長様」をアクセル全開で演じ、人気と実力を兼ね備えた、押しも押されぬ不動のメインキャストとしての立場を確立する。
 
「徳川十五代将軍」 徳川家康
 持ち歌は「幕府って統べろう」
この役が最も辛かったのではないか。ミュージックトゥナイトで彼が参加したユニットの中で、この時だけ必死の造り笑顔が感じ取れる。大先輩を含む癖の強い15人の役者たちの、名実共にリーダー「徳川家康」として、番組初参加の諸氏をまとめ、時には立て、調整し、言うことを聞いてもらわなければならない。トーク番組パロディー企画の、スピンオフ的なユニットだったが、彼の頑張りで、何とかいい雰囲気で放映できた。奇跡だ。前髪でちょんまげ作って広いおでこがかわいかったが、この後、彼は急速におっさん臭さが増す。苦労すると人は変わるんですね。
 
AKR47&フィーチャリングKIRA 大石内蔵助
 持ち歌は「討ちたかった」
ビジュアルも歌も若手にメインを譲って、演技に軸足を移しての参加という感じ。比較的まじめな表情で説明しているシーンが多いので、色気のないファッションのわりに、久々にきれいな真顔が見られる。若手の中では実力派をそろえたとはいえ、まだまだ未熟。トークが滑りがちなメンバーをまとめるリーダーとして、一生懸命空気を盛り上げている「お父さん」は、苦労人に見えました。鈴木氏演じる吉良上野介が参加してからは、実に落ち着いた表情で、安定の演技を見せる。この二人がいるとほっとするよね。演技にぶれがなくて安心。
 
天草四郎と島原DE乱れ隊 大矢野松右衛門
 持ち歌は「シマバラン伝説」
番組の締めとして、かなり無理のあるオファを出して作ったのではないか。「鍋」の功労者、相葉氏と村井氏はMUST。ネタは不滅の究極のアイドル「少年隊」。当然ダンスがメインになるが、ここまですごい振付についてこられるキャストの在庫がない。そこで白羽の矢が立ったのが加藤氏だったのではないかと推察する。後光のように巨大な襟を背負って弾けまくる相葉氏の「四郎」もすごいが、ナイーブなハイティーンにしか見えない村井氏の役作りには脱帽だ。ぽちゃぽちゃとしたかわいい顔にリーゼントが全く似合わず、可憐なくらい情けないネガティブ演技が素晴らしい。役者としての成長を実感できてうれしい限りだったのだが、イケメン「ミゲル」のファンには物足りなかったかもね。どうしてもかっこよくなってしまう歌のシーンで、寄りのショットが少なくても、わざとらしい口パクやダンスの抜け方までパロディーでも、カメラのフォーカスは村井氏演じる「大矢野」に絞られていたのだけれど。

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