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“お茶代”3月課題 by.脱輪氏 「好きな音楽家について」

『チリヌルヲワカ』


・これはすべて実話に基づいた物語
とある女の人生にまつわる話
(by.ある人生)


かつて、私はどうしようもない片想いをした。
相手は恋人であったが、彼の理想に近付けない悔しさと構ってもらえない寂しさを理由に小娘だった私は彼の元を去った。思い返せば彼の笑顔だけではなく、彼の言葉に、彼の生き方に、彼の好きなものにまで恋をしていたのに…間違いであった。
彼と共に生きられない悲しみを、彼と共に生きる道を得た私でない人に羨望を覚えた。
己の未熟さを、拙さを呪うばかりの長い恋だった。


自分の気持ちを代弁するようなメロディと歌詞に共感と安心感を覚え、そこに心の居場所があるような気になる…特定の音楽を好きになる理由の1つとして至極メジャーな思考であろう。
恋に傷心的な感情を抱いていた私にとって『チリヌルヲワカ』というバンドはそういう存在であった。

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チリヌルヲワカ
元GO!GO!7188のギター•ボーカルを担当していたユウが2005年に立ち上げたロックバンド。
ベースに多くのアーティストのサポートを行うイワイエイキチ、ドラムにはザ・コレクターズの阿部耕作などを含め4人体制でスタート。
メンバーの入れ変わりを経て2022年現在はユウとイワイの2人が公式メンバーである。
2011年以降、1年に1枚のペースでアルバムのリリースを続けている。
キャッチーなメロディと時折混じる変速的なリズム、繊細かつキレの良いギター、底でメロディアスに轟くベースと曲に彩を与えるメリハリのあるドラム、可愛らしくも力強いユウのボーカルが魅力的である。
全楽曲において作詞作曲は全てユウが行なっている。

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カッコイイ楽器の演奏にも身を浸したいバンドではあるが、個人的に最大の魅力は歌詞だ。
日本語で丁寧に綴られるユウの歌詞は、人が人を求める必死な想いを静かに叫ぶ。


・「ある」というよりもそこに「存在」する
誰とも違う貴方の影
(by.イロメキ)

・君の未来に用があるだけだ
(by.ドルチェ)

・ああこんな日は悲しみの血が騒ぐから
「もう止まらない」深層心理ではみんなギリギリ
(by.怒りの筆先)

・抜け道のないセカイなんてありえないよ
わたしにしかできないことをしてあげるよ
(by.針と糸)

・つきまとう追い風 抜け出せない記憶の中を
遠くまで走れど、手のひらの上
(by.はなむけ)

・頭のナカより精密で心臓より素直でタンジュン
(by.ノイロニテイル)

・細胞がマネく貴方はあたしの五カンを魅了し
カザらない月より紳士で草木よりココロが見えない(by.ノイロニテイル)

・言いたくてしょうがないのです
この想いを 口じゃない場所で
(by.馴レ初メ)

・水を求めるように誰かの蜜を、
枯れない海のように途絶えない日をくれよ
(by.蜻蛉)

・ああどこまで行けば満たされるのだろう
嫉妬、失望そして憎むこともやり終えた
(by.カスガイ)

・耳を通り過ぎる歌がキミの心を揺さぶることがあるように ああボクはちょっとの期待を傷にたらす
(by.カスガイ)

・あなたの中の私が色を保てるように
絵画に閉じ込めて変わらない鮮度でいさせてよ
(by.保存)

・声色は果てしない色
ひとつとして同じものはないよ
いくらまねてみても
どこまで行ってもキミにはなれない
(by.連鎖)

・世間に今ちょっとだけきれい事言うなら
ここに一つの約束があれば
明日を汚せる勇気もわくだろう
(by.々々々〜トリプレット〜)

・笑えないよいつでも 私は人だから
守れないよ全部は
(by.ヒトダカラ)

・頭の中を流れる歌をキミが急に
歌いだすから繋がってるって思った
(by.連鎖)

・忙しい毎日の中でいつでもキミを想ってる
(by.新月)

・アカルイヒカリを
(by.ホワイトホール)


歌詞に共感し、自分がどうしようもなく女だ、と自覚する瞬間が実は好ましい。チリヌルヲワカの曲に身を浸しながら恋を、相手を、そして自分自身を想ってきた。憂を帯びた心にじわっと滲みてくる歌詞がとても好きだった。自分の心を代弁するような歌詞には感謝を覚え、彼女の歌声に耳を傾ける日々を送った。

そして年月が経過し別の男性と結婚した今、チリヌルヲワカで1番好きな曲は『浮キツ沈ミツ』。好きな歌詞は「変わったのはきっと私の方で あなたじゃない」

歌は記憶と直結している。
片想いの身体に音楽を纏っていたあの頃、当時を思い返すと思い出がチクリと心に刺さってくる。
しかし歌は昔も今も勇気を与えてくれるものだ。
今では上記に挙げた以外にも存在する、人生を後押ししてくれるような歌詞達に背中を支えてもらいながら生きている。

チリヌルヲワカ、
是非あなたの片想いと人生のお供に。


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