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生まれ変わったらザコ役を演じたい話

小さい頃はヒーローになりたかった。
私はセーラームーンだけではなくスーパー戦隊も大好きな子供だった。
世代はジュウレンジャーとダイレンジャー。
お人形遊びやおままごとが苦手だった幼稚園児の私は、専ら男の子達とヒーローごっこに明け暮れていた。

小学生になるとテレビでポケモンが始まり、そちらに夢中になった事で特撮からはほんのり遠のいた。それから20年近く経ち、特撮が大好きな夫とお付き合いを始めた事をキッカケに特撮を観る機会が増え、今では立派な特撮好きになった。
スーパー戦隊、仮面ライダー、ウルトラマン、ゴジラ…様々な特撮を見ていく中で1番ハマったのは最近観終えた宇宙刑事ギャバン。主人公のギャバンこと一条寺烈の熱い心と激しいアクション、そして何より銀色に輝くスーツのカッコ良さに魅了された。近頃は仮面ライダーBLACK SUNも楽しく鑑賞した。

こうして毎日のように様々なシリーズを少しずつ観ているわけだが、最近気づいた事がある。
小さい頃には気付かなかったザコキャラの魅力だ。
彼等は敵リーダーの横でチョロチョロ動いているだけかと思いきや、よく見てみると一人一人個性がある。腰が引けてる者がいれば、威勢よく武器を振り翳す者、気が狂ったように上半身を揺らす者も居る。そして敵リーダーの「いけ!」の掛け声で一斉にヒーローに取り掛かる。が、すぐに倒されてしまう…そんな存在だ。
やられ方にも一人一人個性があって、ドジな者ほど可愛げがあるのがとても良い。いい勝負をしていたが惜しいところで斬!と倒されてしまった者には思わず賞賛のため息と拍手が出てしまう。ゲキレンジャーのザコキャラに至っては、ザコも含めて戦うのは拳法使いばかりなので、皆一生懸命修行を積んでからヒーローに挑む。故に倒されると可哀想になってくる…。

また、敵リーダーの作戦に振り回されるザコキャラもよくいる。敵リーダーの指示でヒーローや街の人々を罠に掛けようとする場合は催し物の運営スタッフになりきってダンスをしたり風船配りを行うし、工場で一生懸命働いて秘密兵器の開発をしたり基地の拡張に精を出す事もある。これがまた健気で愛おしい。彼らは最終的にヒーローに見つかり戦う事になるが、いつも呆気なく倒され、一生懸命準備していたものも全て破壊されてしまう…とても残念だ。

もちろんカッコ良いヒーロー達も大好きでいつも応援しながら番組を鑑賞している。感動し涙するのは大体ヒーロー側のストーリーだ。
だがしかし、最近はついつい注目するようになってしまったザコキャラ達のおかげで敵側にも感情移入し応援の声を掛けるようになってしまった。彼等なりの正義の為に一生懸命働く姿はどこか親近感があり、人間臭く魅力的だ。故に私はいつの間にか「生まれ変わったらスーツアクターになって、ザコ役を演じてみたい」と思うようになってきた。敵リーダー役ではない、ザコ役だ。自分でも驚いている。

しかしよく考えてみてほしい。彼等はいつも敵リーダーの魅力を引き立て、物語を華やかにしている素晴らしい縁の下の力持ちだ。ヒーローに挑む敵リーダーの迫力も、バックで控えているザコキャラ達が居てこそ成り立っている。シリアスとコミカル、どちらの表現だってお手のもの。彼等にはしっかりとした役割があるのだ。ブーケで例えればかすみ草のような役割だろうか。しかし、かすみ草もよく見てみればひとつひとつが可憐な花。好きな者にとっては主役になりうる素敵な花なのだ。とても美しい存在だと思う。

私はザコ役に大きなやりがいがあると信じてやまない。そして何より、戦う演技もコミカルな動きも演じていて楽しそうじゃないか。生まれ変わったら是非目指してみたい。今後も特撮は彼等ザコキャラに注目し、憧れ、応援しながら番組の視聴を楽しんでいきたいと思う。

※“お茶代” 9月課題 by.脱輪氏
『生まれ変わったらなりたいもの』
に参加しました。

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