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ひたむきな愛のカタチ 『うきわー友達以上、不倫未満ー』

お互いを心の拠り所とし、ほのかに思い合う二葉さん(森山直太朗)と麻衣子(門脇麦)はどう着地するのか… 
気になる最終回、じんわりとほろ苦く、でも清々しい終わり方でした。

サブタイトルで「友達以上、不倫未満」と謳っているのだから、二人の間がいわゆる不倫関係にはならないことがわかってはいても、何かちょっとあるかもと(あるいは何かちょっとあってほしいとすら)思ってしまうような二人でした。

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8回で終わりとは知らなかったのですが、ドラマは回数(長さ)じゃないということを証明するような作品でしたね。8回なら8回で出来ることがある、ということなのかもしれません。登場人物も絞り込まれていましたし。ドラマ化でそうしたのではなく、そもそも原作もそうなのかもしれませんが。

二組の夫婦を演じた四人の俳優はみな、普通の人々を普通に演じるのが上手く、特に無言の時がとても良かった。それぞれ微妙な心境がわずかな表情の変化で表現されていました。

今回の、二組の夫婦がそれぞれ向き合う場面もそうでした。
二葉さんも麻衣子も、心の中の真実をそれぞれ聖さん(西田尚美)とたっくん(大東駿介)に打ち明けます。

実は、聖さん以外に、愛しいと思ってる人がいる。
ごめんね。これを隠してたら、きっと聖さんの前で笑えなくなると思って。
聖さんは… 僕の前で笑える?

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ねえ、たっくんにはいる? その人の幸せを考えるだけで、自分も嬉しくなれる人。
たぶん… そういうところが欠けとったんよ、うちら。
愛しとったけど、大切じゃなかった。

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二葉さんと麻衣子には、散々苦悩した末の軽やかさがありました。それに対し、打ち明けられた二人の沈黙と表情。良かったですねえ。

二葉さんも麻衣子も、“愛してる人”とか“好きな人”とか言わないんですよ。いかにも心の中を真っ直ぐ見つめたあとの言葉という感じで、人としての真摯さが現れていました。サレタ側の様々な感情をくぐり抜け、内省した上で得た、真摯さ。愛しい、なんてなかなか聞けないです。こんな形の愛があるのですよね。

「俺のことを真剣に愛してたか?」とたっくんに問われて頷く麻衣子も、「俺は愛してた」と言うたっくんも、「愛しとったけど、大切じゃなかった」と麻衣子は言います。

その昔、「Love」の日本語訳は「御大切」でした。愛の根本は、大切に思うこと。そのことを忘れていたとしたら、二人が言う愛とはなんだったのだろう、と思わず考えてしまいます。
人はなにを愛と呼ぶのかというのは大変に深い問いですね。

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麻衣子とたっくんの不倫相手である福田歩(蓮佛美沙子)が遭遇する一番の修羅場とでも言うべき場面ですら低温モードだった本作、シタ側サレタ側、さらには不倫相手まで、それぞれの心情を掬い上げて、最後まで静けさを貫いた良い作品でした。


余談ですが、不倫ものでお隣同士のお話に、ウォン・カーワイ監督『花様年華』があります。

まったく違うテイストだし、内容的にもいろいろ違いますが、心の通いあわせかたなんかにちょっと共通する部分も無きにしも非ず。

こちらについてもいつか何か書こうかなと思ってはいます。

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