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【映画】ブラッド・シンプル(1984)

テキサス州のとある町で酒場を営むマーティ(ダン・ヘダヤ)は妻アビー(フランシス・マクドーマント)と従業員レイ(ジョン・ゲッツ)の不倫を疑い私立探偵(サム=アート・ウィリアムズ)を雇う。やがて浮気の証拠を突きつけられたマーティは探偵に2人の殺害を依頼するが、、



小さな悪事(本作の場合妻の浮気)をキッカケにあれよあれよという間に事態は転がり、気づけば死体が積み重なる。
コーエン兄弟お得意のクライムサスペンスだ。
久々に再見したが、めちゃめちゃ面白かった。これが処女作というのだから驚く。

スター俳優が出てるわけではない。制作費もそれほどかかってなさげだが、見せ方で映画はこれだけスリリングになるというお手本みたいな一本だろう。

アクの強い面々のアップを多用し、殺意や不安の増していくジリジリ感を演出する。
光と影の使い方も美しく、モノクロ映画を観たと錯覚するカメラワークがいい。
CGは使ってないと思うのだが、ナイフが刺さって動く、あの手はどういう仕組みなのか。

あー、そんなところに銃入れたら、、とか、ちょっ!電気つけるなよ!とか
悪いことが起きるのを嫌でも予見してしまうスリルの演出もうまい。

コーエン兄弟の代名詞とも言えるユーモアは控えめながら、意外なほど(失礼)可愛くて、無垢を纏いながら男を翻弄する若きマクドーマントこそがブラックユーモアとも言えそうだ。

そもそもバーのバックヤードで燃やされてたのは何だったん?という、テキサスの田舎の何でもありの怖さだったり、壁に開く銃痕増から放たれる光の線が暗い部屋に増え広がるさまなど、不穏さを演出する要素を数え上げればキリがない。面白い映画だった。

それにしても、マーティがレイに未払いの給料を払ってあげていれば、もしかしたら命は助かったかもしれず、他に誰を死なすこともなかったかもしれない。
ケチは命取り。