見出し画像

「物語」のように、心に残る記事を書くには?


3連休ですね。

このnoteで何を書きましょうかね…と相談していたところ、「編集後記的なものを読んでみたい」というニッチな声をいくつかいただきまして…。

昨日公開したばかりの、思い入れ強めなこちらの記事について、ゆるっと編集後記をお届けしたいなぁと思います。

『優秀な人財が、大きな企業の中でもつぶされず、その人らしく輝くためには?』 

こちらは、milieuではなく、私が編集長をやらせてもらっているオウンドメディア「THE BAKE MAGAZINE」で公開したのですが……とても多くの、そして濃い反響をいただけて、本当にしみじみ、嬉しかったです。は〜〜。(安堵のため息)


オウンドメディアの難しいところが、ネタに走ったり、自社にあまり関係のないハウツー系の記事で数字を稼いでも、多くの企業にとってはあまり意味がない。かといって真面目すぎて企業紹介パンフレット的になりすぎても、広まらない。

かつ、自社紹介ばかりでも、なんだか自己満足なものになってしまったりもするのですが……この記事は、しっかり数字も伸びて、たくさんポジティブな感想もいただけた…よかった……。は〜〜。(もっかい安堵のため息)


(以下ツイート埋め込みです。メールでは表示されないのでブラウザでみてね)

読者の方々からのこういった声も嬉しかったのですが…

何より、BAKEで働くみんなから「入社してからのことが走馬灯して…泣いた!」「デスクでうっかり読んでたら涙が!」という声が届いたのが……オウンドメディア冥利に尽きる、嬉しい出来事でした。

以下は、BAKEの久保田さんのFacebook投稿より、ご許可をいただいたので転載させていただきますね。

「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」⠀

これは、わたしの好きな言葉のひとつ。もともとはアフリカのことわざだそうです。⠀⠀

入社前、THE BAKE MAGAZINEの社員インタビューを読んで、素敵な方がたくさん働いている会社だなあって思っていたわたしは、「こんな魅力的な方たちと、会社が掲げてる大きなミッションに向かっていけるなんてわくわくするー」って、「【遠くへ行きたければみんなで行け】をこの会社でやりたいなー」って思っていました。⠀

でも、今日「あ、なんかちょっと違うかも」って思いました。⠀
そう思ったのは、シェアしてる記事の中の一文⠀

「グローバルで勝負をしていく中で、スピード感を保って走り続けるには、若干のリスクがあっても現場の裁量権を大きくして、個々の能力を最大限に発揮していくことが必須なのだ。」⠀

を読んだから。⠀⠀

BAKEの場合は、そう。⠀
この冒頭の言葉がちょっと違くて、、、⠀

「みんなで! 早く!! 遠くへ!!! 行く!!!!!」⠀

な気がします。笑

BAKEがどんなカルチャーなのか、とてもよく分かる素敵な記事です。記事に書かれているイベントの実行委員をやっていたので、内容のチェックもあってちょっとだけ早く読ませてもらったんですが、席で泣かないように必死で堪えておりました。周りにバレてなかったかな。笑⠀

いやーエモい( ; ; )⠀
ご一読いただけたら嬉しいです!!!


いやはや、嬉しいなぁ……。



実は、この記事を書く時に、ヒントにしたエピソードがありまして。

お菓子屋さんともスタートアップとも全然関係ない話なのですが……。

音楽家の高木正勝さんが、オーケストラとともに演奏したときに、指揮者の広上さんからアドバイスされた言葉をFacebookに残されていたんですね。

以下、高木正勝さんのFacebook投稿からの引用です。

どんな風な3日間だったのか、少しだけ書いてみます。

この20年間、作曲も演奏も、楽譜なしでやってきたので、まず楽譜を見ながら弾くという練習をこの2ヶ月間ずっと家で繰り返していました。

いざ、リハーサルで大人数で演奏してみると、今までと勝手が違うことにまず戸惑いました。

遠くの人の音は、当たり前ですが、遠く、遅れて聞こえます。
近くの人の音は、近く、早く聞こえます。

なので、「いっせいの〜で」と思っていても、
近い人の音に合わせれば正解なのか、遠い人に合わせれば正解なのか、はじめは判断できませんでした。

指揮者の広上さんが
「あなたがいつも一人で演奏してきたのは、例えるなら小型車だから、どんな道もスラスラ行けるし、急発進もできる。でも、オーケストラはダンプ車みたいなものだから、ゆっくりスタートして、ゆっくり曲がる。その感覚を3日でつかんでください」
と、戸惑っている僕に、何度も仰ってくださって、
結局、その感覚がわかってきたのは本番当日でした。

ドーンと一緒に合わせたい時は、
ドーン!(いつもならここ)、、、ドカン!(オーケストラの時は遅れてやってくる波、ここで弾く!)

と自分なりにわかってからは、70名近くで一気に音を鳴らす醍醐味を楽しめるようになってきました。

それでも、普段、やはり一人で自由に弾いてきた癖がつきすぎて、「テンポを保てない、拍をよく飛ばす(というか数えない。。)」というのが、盛り上がって弾けば弾くほど出てしまい、、、
みんなよりも先に進んでしまって、ひとり迷子になっていました。

「あなたは才能で弾いている。それはそれでいいんだよ。でも、僕たちは技術で奏でているんだよ。才能は才能で大事だけれど、ずっと才能で突き進んでは駄目。技術も覚えなさい。僕たちも本番では才能で奏でます。このことも本番までにつかんでください」

広上さんから教えてもらった言葉をこの短い時間でどう昇華できるか、考えて考えて、、、。

他にもたくさん、このような感じで、何か問題にぶつかっては、広上さんが言葉をくださって、それを自分なりに解釈して、解決していくというのをリハーサルでは続けていました。

濃厚な3日間でした。

コンサートが終わってからも、いつもなら「よかった。本当によかった」としみじみ終わるのですが、今回は、その感動に加えて、広上さんの言葉がじわじわと残っています。

ああ、観客席でも聞きたかったなあ。


そう、この「小型車」と「ダンプ車」というたとえが、ずっと心に残っていて。1年以上の時を経て……小さなスタートアップが大企業になる間、を表現するのに使わせてもらったのでした。


以下が、THE BAKE MAGAZINEに公開した記事の序文です。

 
オートバイは、自分の思うスピードで、力量で、かっ飛ばすことが出来る。運べるものは少ないが、小回りは効く。

一方列車は、多くの人や荷物を運ぶことはできても、突然路線は変えられないし、急発進も急停車も出来ない。

スタートアップが大きな会社に成長していくとき、最初は好きに走りまくるオートバイかもしれないが、次第に乗客が増えて自動車になり、安全運転を心がけ、いつしか長い長い列車のようになっていく。

大きくなれば、運べる荷物はうんと増える。安心感も増す。しかし同時に、失われてしまいがちなのが、スピード感や、現場の主体性だ。

http://bake-jp.com/magazine/?p=10857


取材やイベントの現場で、単純に見た景色、聞いた言葉を書くだけだと、どうしても味気なくなってしまう。事実は伝わっても、隙間の感情が描かれないんですよね。

感情を伝えるためには現実を見てもらうのが一番なのですが、そうはいかないから、記事にして、多くの人に伝えるわけです。

その記事の中で、現実で起こっている、隙間の感情をちゃんと伝えるには、現実をそのまま…ではなく、「表現」をお借りしなければいけません。

とはいえ、「表現」がひどい誇張になってしまったり、嘘になってしまってはよくない。だから現実を捩じ曲げるのではなくて、こういうたとえ話であれば、誇張でも、嘘でもなく、でも読者の頭の中になんだか物語のように、情景が湧き上がってくるかな?……と思っております。

この「たとえ話」みたいなものが浮かび上がると、サクサク記事がかけるのですが、浮かび上がるまでが大変です。

記事を書く前によく、ぼ〜〜〜〜っとシャワーあびながら、ぼ〜〜〜〜っと考えてます。自分の頭の中にあるどの引き出しと、今回の記事内容がマッチングするか……?ってことを。。

それで、時には、記事広告の取材現場に従姉妹を連れ出してみたり

時には、大学時代の悔しかったジェラシーを引き出してみたり…

と、個人的な感情だったり、どこかで聞いて心に残っていたエピソードだったりと、クロスさせて記事を作っていくことが多いです。


取材時間は30分だったり、1時間だったりと、短かったりしても、その記事を書くために引用した人生の時間が長いほど、なんだか「長く残る」ものが出来る気がするなぁ、と。

milieuの場合は私のメディアなので、自分の過去のエピソードや感情を掘り出してくることが多いですが、

THE BAKE MAGAZINEの場合はBAKEの運営するオウンドメディアということもあり、「塩谷舞」という主語は薄めたほうが良いので、私の過去エピソードをゴリッと混ぜるのではなく、今回のようにたとえ話を入れてたりします。


あと、今回のBAKEの総会では、BAKE CHEESE TARTスピード箱折り対決!というゲームが超盛り上がっていたのですが、そういうのは、記事にして第三者に伝えても、現場の熱量がないと絶対に面白くは伝えられないので(笑)、潔くほとんどカットしております。

実際、取材が丸1日だったり、丸3日だったとしても、記事で使う箇所はほんのわずか。断腸の思いで「ごめんなさいごめんなさい…」と泣きながら、バシバシとカットしております。いろんな人に気を使いすぎると、ついつい長くなってしまうのですが、読む人にとって最善なものを作るのが最優先です。


という訳で、このあたりで編集後記はおしまい。

しかしBAKEという会社は、本当に面白くて、毎週オフィスに行くたびに「え、まじで?!」という変化にワクワクさせられっぱなしです。

私は飽きっぽいので、継続案件は極力少なくして、単発のお仕事のほうが向いているのですが……THE BAKE MAGAZINEの編集長になってからは、もうすぐ3年。いやぁ、新卒で入社したCINRAと、同じくらいの年月を共にしていると思うと、なかなか感慨深いものがありますね……。

面白い会社じゃなかったら、面白い記事は絶対に書けない。上澄みだけ取材して、それっぽく書くなんて、まっぴらごめんなので、BAKEが嘘偽りなく「この会社は面白い!」と推せる会社で、本当によかったと思います。あと、お菓子が美味しい。


さて。ここから先は、限定公開になります。

- - - - - - - - - - - -
(注)月額マガジン「記憶に残る、Webメディアの作り方」を今から購読スタートしていただいても、こちらのように先月以前に出された過去記事は読むことができません。単品のみでの販売となります。マガジンでは、今月以降に公開された記事をまとめて読むことができます。(/注)
- - - - - - - - - - - -


Timebankで「バズる記事ってどんなものだと思いますか?」という質問がきたので、それに長々と回答しているのですが…気になる方は、どうぞ!


Q.バズる記事って、どんなものでしょう?

A.「私もそれ言いたかったんですよね」と、人の欲望の蓋をパカッと開けてくれるものは、バズりますね。

たとえばこの記事は、2015年で最もバズった?と評判のものなのですが…


ここから先は

1,311字

¥ 200

新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。