見出し画像

PVでメディアの価格を決めるのはやめて、これからは相手の価値観で決めます。


明けましておめでとうございます!本年もどうぞよろしくお願い致します。

新春っぽい話題を……と思いながらも、年末のnoteで怒涛にエモ散らかしてしまったので、なんだかあらためて、新年の抱負とかはもう大丈夫かな、という感じです。2018年も頑張ります!めざせ健康!


さて。昨年末に公開した中で一番反響があったnoteが「2017年、milieuの売上はいくらだったのか?メディアの立ち上げとマネタイズ」でした。

私は明瞭会計が好きなので、金額を公開することに全く抵抗はないのですが……だって、価格のわからないレストランとか、マッサージ店とか、ちょっとヒヤヒヤしちゃいますし(それはそれでゴージャスそうだけど)。

でも、クリエイティブ系の職種は金額がブラックボックスになりがちなんですよね。その状況もよくわかって、スキルが個々人によってあまりにもバラバラだし、案件を公開してみなければ成果がわからないし、その「成果」をどこに感じるかも人それぞれだし…。(長期的なブランディングなのか、短期的な売り上げなのか、有名クリエイターに依頼することがそもそも重要なのか…)

……ということで、まぁ難しいなぁ、とも思っております。

ただ、やっぱり一人でメディアを運営していると、お金の話をしないままに案件だけが進んでいく……というのはちょっと大変です。

案件の相談を受けて、実際に稼働して、数ヶ月後に経営者のGOが出るまで具体的な金額がわからない…なんてことも多かったりします。それも営業スタッフや経理スタッフがおられる組織であればフォローできるのかもしれませんが、私は一人なので、この「すっごく稼働は多いけどいくらいただけるかわからない」案件を複数抱えてしまうと、わりと死活問題だったりします。

ということで、昨年はmilieuの記事広告単価を「1本40万円」と設定して、オープンにしたんですよね。もちろん、面白そうなお話であれば、金額関係なくご相談ください、という前提も含めて…。

http://milieu.ink/media-guide/ より


こうすることで、お問い合わせ時のミスマッチが激減したし、執筆や取材という本来の仕事にかなり集中できるようになりました。(お問い合わせ対応をしていたら、1日が終わる…なんてことも多かったので 😂)


…というメリットはあったものの、困ったことが2つ。

「予算の少ない案件は、相談すらされなくなる」ことと
「milieuの金額が業界の水準にされてしまうかも」ということ。


1つめは、そのままなのですが、「えっ、40万円も払えないな…」という方からのご相談を、せき止めてしまいかねない、ということ。

実際、駆け出しのサービスだったり、個人の作品だったりで、私やmilieuにとって有意義なものであれば、価格はすごく柔軟に相談させていただいているし、そういうサービスや作品や人こそ、どんどん伝えていきたい、とも思っています。大企業の新商品とかはもちろん予算も潤沢にあったりするんだけど、私が好きなものってもう少し小回りの効く世界で、尖ったことをしている方々だったりするので……。

そんなインディペンデントで面白いことをされている方との出会いに、自ら蓋をしてしまうことは、本質的に機会損失だなぁ…とも思っていました。


そして2つめ。「milieuの金額が業界の水準にされてしまうかも」という話。これは自分が思っている以上に、クリティカルかもしれない。

先日ツイッターでもこんなやり取りをしていたのですが「エンゲージメントの高いmilieuで1記事40万円だと安すぎるから、倍の価格にした方が業界全体にとって健全」というご意見を、同業の先輩方複数人からいただいてしまって。

実際、milieuの価格表を参考にされている代理店さんや、メディア系の企業さんも多いようで、(他のメディアが価格をあまり公にしていないぶん)あれが指標だ、と捉えられることが度々あるようです。


「よし。じゃあ業界水準をあげるために2018年からは1本80万円にしよう!」

…とかズバッと言えたら良いかもしれないのですが、私としてはそれは、すごく抵抗があるわけです。自分の仕事にそこまでの価値を感じていない…という訳じゃないですが、記事広告に80万円を支払うクライアントさんって今はまだ本当に限られているだろうし。そして、私は会社組織ではなく個人なので、経費や固定費などもかなり少ないぶん、記事1本に魂と時間を注ぎ込んだとしても、40万円が妥当では、と思う訳です。個人的には。

ただもちろん、Webメディアを組織で運営されている方々は、もう少しインフラまわりにお金がかかったりするので、40万円だと割に合わないかもしれません。だからといって、今のmilieuの価格を業界水準に合わせて上げるのは、うーん、うーーーーん…………


と悩んでいたのですが、決めました。

milieuの記事広告は、お客様に価格を決めていただきます。


0円でもいいです。40万円でもいいです。私のモチベーションは売り上げよりも「書きたい!」に支配されているので、高いから絶対にお受けする、というものでもありません。

そして金額を相手に委ねたい一番の理由は、milieuで記事を書かせていただくとき、PVはそれなりに多くとも、直接的な価値を生むことは少ないからです。

milieuは商品がいくつ売れた……という今すぐの効果を期待できるメディアではありません。というよりも、「あぁ、あの人って、そういう志だったんだ」「あぁ、これには、こんな価値があったのか」と知っていただいたり、思い出してもらうきっかけになる…という記事が私は好きで、好んで書かせてもらっています。

たとえば、こちらはアシックスさんの記事広告なのですが、おそらくこの記事を読んで「よっしゃ、今すぐスニーカー買おう!」という人は限りなく少ないと思います…。(いや、いらっしゃったかもしれないですが…そもそも商品の宣伝してないですし…)


noteで更新しているマガジンのタイトルは「記憶に残る、Webメディアの作り方」ですが、私は誰かの記憶にしっかり残したい。1本の記事でも、記憶に残っていれば10年後に何かを動かすかもしれないし、そういう種を撒くことが、短距離戦の多いWebの世界で、必要な仕事だと思っています。

これまで、価値を代理店さんが提示されるような「1PV・1UU単価」などでお金に換算することはすごくすごく難しくて、私自身も、価格設定にはかなり悩んでいました。


でも今年は、こうしてnoteやTimebankをスタートして、記事広告に依存しない働き方へとシフトチェンジしたので、より柔軟に、「価値観」ベースの関係性を築いていくほうが、自然ではないか?と思い至りました。

捉える人の価値観によって、価値は変わるものなので。


そもそもmilieuでは、記事広告を減らしていく方向で考えているのですが、とはいえ記事広告(というか、接点のなかった企業さんからのお問い合わせ)は、本当に有意義なものです。

南三陸を訪れるきっかけになったのも、最初はヴァル研究所さんという企業さんからの問い合わせでした。そこから、どれほど視野が広がって、どれほどの出会いがあったか。自分の興味関心を中心にメディアを作っていたのでは、こういう出会いは起こりようがありません。


メディアとしてはイレギュラーかもしれませんが……価格は「お客様の価値観次第」ということで、2018年は進めていきたいと思います。


伝えたいことはここまで!
読んでくださって、ありがとうございました。


ここからは、おまけ的な最近のこぼれ話を書いていきたいと思います。

- - - - - - - - - - - -
(注)月額マガジン「記憶に残る、Webメディアの作り方」を今から購読スタートしていただいても、こちらのように先月以前に出された過去記事は読むことができません。単品のみでの販売となります。マガジンでは、今月以降に公開された記事をまとめて読むことができます。(/注)
- - - - - - - - - - - -

ここから先は

1,338字 / 1画像

¥ 210

新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。