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Wabi-Sabi,IKIGAI,Konmari,Zen,THから見る日本の可能性


生まれてこのかたずっと不況。好景気なんて経験したことがない、バブル崩壊後生まれの塩谷です。こんばんは。


「日本も昔はよかった」
「とにかく中国の勢いがすごい」
「K-POPは世界制覇している」
「インド市場は一番注目すべき」
「アメリカはこんな進んでるのに日本は……」
「北欧では女性が働きやすいのに日本は……」
「日本は絶望や」「オワコンや」「ディストピアや」 

……みたいな、絶望感たっぷりの話が今日もタイムラインに溢れています。


子育てにおいて、「あなたなら出来るよ!」と褒めて育てると自己肯定感の高い子どもが育ち、「あなたに出来るわけないでしょ」と否定すると自己肯定感の低い子どもになる……みたいな話はよくありますが、もっと広く見れば、SNSやメディアで毎日のように目にする「日本は駄目だ」という言葉の力により、私たちは自己肯定感を下げまくっているのでは? とも思わされます。



しかしNYで暮らすようになってから、「あれ、日本ってブランド力高い……??あれ……めちゃんこポテンシャルあるのでは……?」と感じること山のごとし。


「いやいや、Made in Japan.に価値があったのは昔の時代よ」


そんなお声もあるかと思います。もちろん日本産の車や電化製品や工業品などは今も人気なのですが、中国や韓国のメーカーが強くなった今、かつての勢いはないかもしれません。

しかし今いちばん注目を集めているのは、Made in Japan.ではありません。「失われた10年」の先、ディストピアの先にある「思想」だと私は思います。


※ ニューヨークはかなり特殊な街で、アメリカ全土とはかなり文化が異なるかと思いますので、今回の記事に書くのは「アメリカから」というよりも「アメリカの都会から」見えた日本……という感じです。
※ 便宜上、大雑把な「くくり」で語ってしまうので、全ての文章に 「※もちろん例外があり、全ての人には個々の異なる思想があるので、一概には言えません」という注記を加えつつ、読み進めていただければ幸いです!




Wabi-Sabi , IKIGAI , Konmari , Zen , TH


これら5つは、アメリカで最近注目を集めている「日本」らしい言葉たち。「最近のトレンド」とは呼べないほど息の長いものもありますが……。


侘び寂び、生き甲斐、こんまり、禅。そして最後の「TH」はテラスハウスっす。なんでも略すアメリカの若者ですが、THはテラスハウスっす。


ここになんとな〜く共通しているのは、「大量消費の時代を終えた後の、慎ましく幸せに暮らす空気や思想」です。



#Wabi -Sabi

まず「侘び寂び」というのは「不可避の受容」だとも言われています。物事を完璧に支配する……というのが西洋的な思想ですが、自然を受け入れ、劣化や消耗すら美しいと感じる……というのが東洋的な思想。


アメリカ人がよく言う「Wabi-Sabi Style」とは、自然を好み、風化を楽しみ、豪華絢爛ではない質素な空間や暮らしに美しさを見出す……といったスタイル(だと私は認識しています)。


前にも書きましたが、インスタで #wabisabi を検索すれば、欧米の方が思う「Wabi-Sabi的世界観」が沢山出てきて興味深いです。

ちなみに、こちらはSohoのど真ん中にある、Roman and Williams Guild NYというお店の地下空間。

まさにWabi-Sabiを感じさせるような日本の器などが(ものすごいお値段で)販売されてます。

もちろん、こういったカラフルでPOPなイメージだって、アメリカの若者に人気があります。ミニマリズムの反対、マキシマリズムとも言うそうなのですが……。(以下、インスタ画像埋め込み)


ですが、Wabi-Sabiスタイルも静かな勢力ながら負けていません。

かつ、Wabi-Sabiスタイルを好む若者たちは単なる「ファッション」ではなく「思想」としてそれを取り入れようとする。だから、知的なアメリカの人は日本人の私に対して「Wabi-Sabiに対して、あなたはどう捉えている?」と聞いてきたりします(これ、答えるの難しくないですか……?!)。


最近仲良くなった画家のEsther Chang(台湾系アメリカ人)からも、Wabi-Sabi Styleについてよく尋ねられます。彼女のInstagramのポストにもよく #wabisabi がついている!(真似して私もつけている)



#IKIGAI



アメリカの女性起業家らが登壇するトークイベントを聞きに行くと、何度も「IKIGAI」という言葉を耳にします。

スペイン人のFrancesc Miralles氏とHéctor Garcia氏が2016年春に出版した「IKIGAI」という本があり、そこから火がつき、世界的ベストセラーにまでなったもの。

我々日本人的には当たり前の言葉ですが、英語圏にはこれに対応する単語はなく、「この新種の単語の意味は、一体何なの?」と分析することで盛り上がっていたようです。IKIGAIを分析した図が、日本人の我々からすると興味深すぎます。

こちらの記事より引用)

・あなたの大好きなこと
・あなたの得意なこと
・あなたがお金を得られること
・社会が必要とすること

……このすべてを兼ね備えたのが「IKIGAI」だそうです。へぇ、そんな意味やったんかーー! と、逆に新鮮ですよね(笑)。

心を豊かにして、社会も豊かにする……というのは、数字ドリブンでの競争社会に少し疲れ、そこから少し離脱した先にある思想のようにも思います。




#Konmari


これはもはや解説する必要性もないかもしれませんが、「片付け」で世界的セレブになり、アカデミー賞にも招待されたこんまりさん。

(以下ツイッター埋め込み)


毎日毎日毎日、アメリカのTwitterタイムラインを見ていると「Marie Kondoは私の救世主!」「彼女のスタイルには日本の禅文化が……」「私は彼女が好きじゃないわ!本を捨てろと言うのよ!」などなど、賛否両論が尽きません。本当に毎日見るし、Uberで隣り合わせた女性からもMarie Kondoへの意見を求められるレベルです。

しかし冷静に考えて……「片付け」でここまで全米の知るセレブになるというのは、、、、、信じられなくないですか?

だって、多くのインフルエンサーは「消費」の象徴です。でも彼女は、片付けするときに基本、新しいものを買いません。細かいものをまとめておくのに、無印のクリアボックスなどを買うのではなく、基本的には靴の空き箱などを使って、非常〜〜〜〜に地味に地道に、質素倹約なお片付けを提案していくのです。

派手な夜遊びやブランド物にじゃぶじゃぶお金を使えるような景気の良い国から、彼女のようなタレントが生まれたでしょうか? きっと、生まれないと思います。

彼女はもはや、日本の長引く不況が生んだ世界的セレブ……と呼んでも過言ではないかもしれません。「セレブ」と「不況」という単語が水と油みたいな相性の悪さですが……!


もちろん、これまでも「片付けの名人」という職業はありふれていました。が、ここまで強烈なブランド力を持つのは彼女だけです。それは単純な「片付け」ではなく、こんまりさんの根底にある「片付けを通して心を整える精神」(アメリカ人はこれを、日本人特有の禅カルチャーに根付いていると言う)があるからこそ、カリスマ性が高まっているのです。

今、世界クラスのセレブリティになった日本人の肩書は、ロックスターやアーティストではなく、「片付けコンサルタント」なんです。誰がそんな未来を想像しただろうか……。


派手な消費を謳歌する時代から、家の中を整え、精神を整え、健やかな心を求める時代への移行を象徴するような存在。それがMarie Kondoなんだと思います。こちらの記事も興味深かったので貼っておきますね!



#Zen

ここは私も勉強不足で説明出来ないのですが……。

アメリカでよく話題に出てくる「Zen」とは、宗教というよりも思想。スティーブ・ジョブズはアメリカ的なZenを、Googleは日本的な「禅」を好むとも言われており、その解釈のされ方は様々なんだそう。2013年の記事ですが貼っておきます。


私の生活レベルの話に落としますと(汗)、欧米のライフスタイル系ドキュメンタリーを見ていると、とにかく「Zenを感じるか?」「Zen空間を提供したいの!」「私達のZen Houseへようこそ!」など、あらゆるポイントにカジュアルなZenが詰まってます。(いやそのZenってなんなんだ………!!!!



#TerraceHouse


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