「この人の記事だから、SNSでシェアしたくない」インフルエンサーのぶつかる壁


マスメディアの力が分散して、SNSを中心にそれぞれが好きな情報をキャッチアップしていく時代。

メディアの情報流通が難しくなっていく中で、SNS上で数字を集められる「インフルエンサー」が一種、情報のハブとして重宝されていく……というのはよく言われている流れなのですが、そんな中で困ることがあります。

「情報に個人の色がつきすぎる」という点。

もちろん、これは捉え方によっては、良いことだと思うんです。私はとても感情的な人間なので、ニュースにも誰かの感情が添えられていると、面白いなぁと思うし、そういう「人間くささ」みたいなものが大好きです。

ただ、場合によってはその「人間くささ」が「ノイズ」になってしまう。



これはメディアに限った話ではなく、ファッションブランドなどでも当てはまります。先日、Instagramを徘徊していると、めちゃくちゃ好みの商品を見つけたんですね。

「欲しい……可愛い……めっちゃ好み……買お……ん???」

と、通常なら思考をぶっとばして物欲のままに即決済しているような商品なのですが、あることに気づいて「歯止め」がかかってしまったんです。有名なインフルエンサー主導のブランドだったために。

「私、この人のファンって訳じゃないしなぁ……」「もしかして、ファンの子から見たら、これはファングッズに見えるのかも……???」


ファッションというのは少しややこしくて、ただただビジュアル面を装うだけのものもあれば、思想を表明するものもあり、コミュニティの一員であることを示すものもあり……。「ビジュアル的には好きだけれども、この人の思想を理解していないし、理解しようというモチベーションもない」場合に、購入モチベーションが下がっちゃたんですよね。(ややこしい客だな!)


で、メディアの話に戻ります。

私は2015年に会社を辞めて独立したのですが、会社にいた頃に書いていたブログは、多くの「IT、クリエイティブ関係の人」がシェアしてくれていたような記憶があります。エンジニアやデザイナー、経営者の方なんかが多かった。「この子のブログ、面白いから読んでみなよ」という感じで。

当時の私のTwitterフォロワーは4千人くらい。今が5.3万人なので13分の1(!)だったんですよね。それくらいの知名度だと、「第一発見者として自分がシェアする」ということに意義を感じてくれる人が多かったんです。

「このバンド知ってる?まだ無名だけど、めちゃくちゃ良いんだよ」
「このブランド知ってる?ロンドンに留学してたデザイナーさんが立ち上げたやつなんだけど…」


そういった「インディーズのものを紹介したい」という感じで、私の記事もシェアされていた。でも、フォロワーが2万、3万と増えていくに比例して、シェアしてくれる人の属性が明らかに変わっていきました。身近な、というか「発掘好き」の人が逃げていっちゃった感じです。おそらく、「いまさら自分がシェアしなくても、もうみんな知ってるし……」という感じで。。


この場合の「みんな」というのは、その界隈の人…という意味なのですが、もう私はIT、クリエイティブ界隈では「知る人ぞ知る」じゃなくなってしまった。言い方を変えれば、昔から知ってる一部の人にとっては「今更シェアするのはちょっとイケてない」って感じになってしまった。(すげぇわかるわ……)。




インフルエンサーが編集長、インフルエンサーが代表、などのメディアやブランドは、ファンがいるからこそ、初動の数字は良いんです。

でも、そこを超えた次のレイヤーに突入すると「この人だからこそシェアしたくない」ゾーンに突入してしまうので、すごく大きな伸びが生まれにくい。

「この人だから●●したくない」的な心理が生まれるラインを、「インフルエンサーの壁」と呼ぶことにしましょう。




東京で働きまくっている時は、「あぁ、このまま私は、"インフルエンサーの壁"を突破できないだろうなぁ」と思っていました。前まで記事をシェアしてくれていた「発見欲の強い人たち」が、どんどん去っていくのがわかるんです。"シェアするのがダサい存在"として認識され始めていることを、肌で感じていました。


そこを突破するには?

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新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。