食からジェンダーを考えてみる

昨日、3月8日は国際ウィメンズデー(IWD)だった。

調べてみたところ、どうやらもともとは1904年にニューヨークで婦人参政権を求めるデモが行われたことに因んでるらしい。かのアメリカでも婦人参政権がなかった時代があるというのが実に新鮮な事実で、この約10年後に起こるロシア革命はそういった意味でまさにパラダイムシフトだなと思ったりする。

さて、ジェンダーというと、最近だと我が国では#kutoo運動に代表されるフェミニズムの文脈で語られることが多いけれども、このIWDに前後していくつかの海外メディアで話題になっていたジェンダーの議論の切り口が、重要な視座を提供してくれたのでちょっとまとめてみたい。

これは国連食糧農業機関(FAO)が6日にwebで発表したアーティクルで、題は『持続可能な食料システムを保障する要となるのはジェンダー平等である』となっている。

IWDを迎えるにあたって、FAOが発表したジェンダー平等への考え方がまとめられていて、重要な点は、ただジェンダー平等が正義であるという当たり前の枠を超えて、ジェンダー平等への注力こそが発展途上国での豊かな食の実現に寄与するという強調だ。

多くの途上国では農業をはじめとした食料生産の担い手の多くが女性である。その一方で、女性は男性よりも十分な食料を手にすることが出来ないことが多い。このことの一因は、女性が男性と比べて、農業の技術的知識や生産性に関する教育や情報にアクセスする機会が少ないことにある。また、情報アクセスの問題と並んで深刻なのは、女性が農地を所有すること自体が難しい場合が多いということだ。すなわち、ジェンダーの不平等によって途上国の食料事情、特に女性の食料事情に重大な問題が発生する構造となっている。

イギリスのINDEPENDENTは、FAOよりもさらに具体的なデータを示しながら、同様のジェンダーと食の問題を解説している。

1ヘクタールあたりの女性の生産性は男性よりも20%〜30%ほど低い。これは女性が農地を所有していないので、農地を担保とした融資や投資を受けることが出来ず、生産性が低い種や肥料を使わざるを得ないことによる。

しかし、アフリカでは基礎的な食料の80%が女性の手によって作り出されているというデータもあり、途上国の食料生産を支えているのは間違いなく女性である。女性蔑視の慣習を見直し、きちんとした農技術の情報へのアクセスを確立すれば、女性自身のQOLはもちろん、国全体の食料生産の在り方もより佳い方向に向かうはずである。

持続可能な食料システムの実現の鍵となるのは、まさに女性の地位向上なのだ。こういう言い方をすると女性を利用するような印象になってしまうが、そもそもジェンダーの平等は社会的正義として当たり前の話である。

しばしば、途上国などでの安定した食料システムの確保を、農薬使用の免罪符にしようとする議論がある。むろん、多くの人口を養うために農薬が果たす役割というのは無視出来ないと思う。だけれども、そもそもの前提としたの社会システムに目を向けなければ、適切な農薬の使用もあり得ないんだよなと、あらためて考えさせられる。

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