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孤独な母親たち

 ルナルナというアプリを利用している女性は多いと思う。生理の記録や周期把握をするための、有名な無料アプリだから。
 妊娠すると、ルナルナベビーという別のアプリに誘導される。そのアプリでは日に日にお腹の中で大きくなる様子を解説してくれて、妊娠当時はなんとなく妊娠したことや母になることへの実感が積み重なったものだ。

 その、ルナルナベビーには悩み相談の項目がある。アプリを利用している人同士で、悩みや疑問をシェアして励まし合うような場所だ。
 私は最近まで、その項目を目にしつつも開きもしなかった。悩み相談、することないなぁ……娘ちゃんは初めての育児に優し過ぎるほどやさしい、良い子だから。
 ただなんとなく、暇になったときに開いてみた。そこには孤独や怒りが渦巻いていた。

 本当に、母親同士で話し合うだけの場所に書き込むようなことではない悩み相談があった。モラハラDV……パワハラセクハラ……パートナーの実家とのトラブル……子どもの病状怪我……
 なんてことだろう。こんなに孤独な母親がいた。数秒ごとに悩み相談は投稿され続ける。早くその環境から逃げてほしい人に、明確な逃げ場所を教えてあげられない。匿名で、どこの誰かもわからないから。
 全国サービスに相談したってこの人は次のサービスに案内されるだけで、その繰り返しで擦り切れるだろう。だから匿名の悩み相談に投稿したのだろうから。
 病気や怪我は医療従事者、特に医師に相談するべき内容なのに、それが怖いんだろう。なにかとダメな母親として責め立てられるから。大事だとしたらこの子はどうなるのか知るのが怖いから。正しさを受け止める余裕が、ないから……

 こんな孤独をずっと人類の母親は抱えてきたんだろうか。新生児の死体遺棄で逮捕され罰せられバッシングを受けるのは、ボロボロに傷付いた母親だけだ。どうして助けられなかったのか自省する報道なんてテレビでは見た記憶がない。だからワイドショーは見たくない。
 そうやって目を逸らした孤独を、アプリの悩み相談欄で突き付けられた気がした。

 なるべく、私に受け止められる内容の投稿にやさしい言葉を書き綴った。
 それぐらいしかできることがないのだ。できれば、もっと適切な場所やサービスへ相談する気力を持って欲しいと願いながら……
 どうしてこんなことになってしまったんだろうね。子どもたちを守るためにも、自分自身を慈しむ心を育まないといけないはずなのに、それを削ぎ落とされるよう社会になっている気がしてならない。

 娘はどんどん成長してくれている。
 これから、言葉を交わせるようになったら。自分で自分を愛せるように、娘と向き合いたい。
 孤独の再生産をしたくはないなぁ……