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建築デザイナーの目指すべきポジション

3つめの記事も壮大ですw

建築や都市の勉強や仕事をしつつ、広告やビジネスなどの分野を学んでいますと、建築デザイナーにもったいなさを感じることが出てきました。

どんな点にもったいなさを感じるかというと、

ビジネスの成果にコミットしていない点です。

建築は実現のために、意匠や法律、環境、構造、使い方、等々の複雑な要素を調整し、まとめあげていく高度な職業だとつくづく感じており、それゆえにいつまで経っても半人前感を自覚しつづける職業だと感じてます(他の分野もそうなのでしょうが…)。

そのように多種多様な要素を統合していく職業であるのに、空間芸術でもありますが事業投資のツールでもある建物を扱う職業なのに、

経営・マーケティング・事業に関しては建築業界において、ほぼ全くといって良いほどに語られていないのです。。むしろ資本主義を毛嫌いしている様子もうかがえます。

ここで、すごく安易で怒られてしまいそうですが、建築デザイナーの目指すべきと考えるポジションのマトリクスを作成してみました。

建築デザイナーの取るべきポジション

縦軸:そのデザインした建物が、きちんと稼げているか、赤字を垂れ流しているか。

横軸:いささか主観的となりますが、、その建物がデザインの密度を、業界内のプロの目から見て、一定程度高められているか。

赤字でかつ、ダサい建物を作ってしまうのは、素人さんとカテゴライズ。

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次は、稼げているけどダサい建物

大量のコピーペーストのような建物や、商業地でのきらびやかな(でもどこでも同じような)建物に対して、建築業界は忌み嫌ってきていました。

しかしながら、コピペなので設計の手間もかからず、早く大量の稼げる床を生み出すので、稼ぎは大きく、稼ぎの面では逆立ちしても勝てない。だからこそ、そのような稼げているけどダサい建物を忌み嫌うことは、建築・デザイナー業界のポジショントークという側面もあったとみています。

この建築業界のポジショントークの中では、資本主義への迎合やら、資本主義の犬やらと、稼ぎへ傾倒するスタンスが酷評されてきました。この資本主義への迎合を決して許さないポジショントークにより、「稼ぎ・ビジネス」に対して業界全体として消極的になってしまうもったいなさが生まれてしまったと考えています。

旭川駅

上のポジショントークの延長にあり、僕が問題視しているのは、赤字垂れ流しなのにカッコいい建物です。特に、公共建築であれば、その赤字は税金で補填されてしまいます。カッコよさの実現のためには、相応の費用や時間・労力がかかります。赤字の建築を作ってしまい事業としては失敗しても、建築業界では良しとしてしまうことは、プロの業界としてどうなのでしょうか。。?

荘銀タクト鶴岡

人口・税収の減少が明らかな地方都市においては、そのカッコいい建築作品は通常のハコ建築よりも高額な建設費および維持費用がかかりますので、それらの費用を税金で補填することが、そのまちの衰退のエンジンとして働きかねません

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こちらのビルバオのグッゲンハイム美術館のように、そのデザインによって観光地としての集客・収益に貢献した作品は評価されてしかるべきです。

しかし、ビジネスとして見るのであれば、かけた費用を回収できるほどの収益を得られたのかを分析する必要があります。そうした不動産業界なら当たり前な分析は、建築業界において寡聞にしてみたことがありません。

建築デザイナーの取るべきポジション

以上の問題意識から、建築デザイナーとしては、稼げてカッコいい建物をデザインすることを目指すべきだと考えています。

建築業界では、ボスの作家性を前面に出す比較的小規模な設計事務所を「アトリエ事務所」。意匠・構造・設備等の様々な専門家を社内に抱えてチームとして仕事をする比較的大規模な設計事務所を「組織事務所」と定めて、「組織 vs アトリエ 論争」が度々勃発します。

僕は、稼ぎの観点でみると、組織事務所に大いに軍配が上がるような気がしています。だからこそ、設計業務の売上の差は広がってきている≒マーケットから評価されているのかと考えます。

しかし、組織事務所はかならずしも、自身がビジネスに精通しているようには思えません。高度な技術や調整力を売りにし、ある種ビジネス側面での貢献を放棄することでビジネスに適合しているとみています。アトリエの巨匠先生のように、デザインを優先しビジネスの枠組みを壊してしまうような主張はせず、与えられた範囲内にて最善のデザインを尽くすというスタンス。少し言い方を変えると、建築と異なる専門性にも敬意を示し、ビジネスには触れないスタンス。もちろん、アトリエ事務所でも同様なビジネスへの適合はされていて、残された表層だけをデザインするのも同じ構図です。

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しかし、その延長は、ますます表層化に拍車がかかるだけだと危惧しています。組織事務所においてはあるいは、ますます(面倒な作業や行政協議の)調整屋さん化が進むことを不安視しています。

既に、意匠・構造・設備・法・アクティビティなどなどの他分野の統合を行っている建築デザイナーだからこそ、ビジネス側面にも精通していくことに希望を見出したいと考えています。ビジネスを理解し、カッコいいデザインを、自分でデザインし、自分で高く売れる建築デザイナー。デザインにより新たなニーズを切開き、稼いでいける建築デザイナー。自分でマーケティング・プロモーションもデザインしたり、事業・意匠・技術を高いレベルで統合することで、より効果的に空間を売ることのできる建築デザイナー。個性的なビジネスを生むことで、より個別性の高い空間デザインを実現し、個別性の高い空間デザインが顧客体験価値を高め、ビジネスを加速させていくような、ビジネスとデザインのポジティブな循環をデザインする建築デザイナー。

大量に安く供給することが価値であった時代を経て、現在ではモノからコトへの消費嗜好の移行や、シェアリングエコノミーにより良質な空間体験の総量増加、情報化の進展等により、良質の空間体験がきちんと価値を持つ時代になってきていることも、上の流れを後押しするはずです。

そんな理想を抱いているので、建築デザイナーはビジネスにもアンテナを持ってほしいのに。。と、一人モンモンとしております。(自戒を込めて)

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