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シビックパワーバトル オープンガバメント推進協議会2019

2020年1月19日、千葉市のホテルグリーンタワー幕張にてシビックパワーバトル オープンガバメント推進協議会2019が開催された。

オープンガバメント推進協議会
一般会員として大津市、桑名市、郡山市、武雄市、千葉市、奈良市、日南市、浜松市、福岡市、三重県、室蘭市の地方公共団体、また特別会員として民間団体を含む6つの団体で構成される組織である。同評議会は年に1回、情報共有や、新たな知見の発見を目的として公開シンポジウムが行われているが、昨年度に続き今年度も公開シンポジウムの一つのイベントとして「シビックパワーバトル」が行われた。

シビックパワーバトル
オープンデータを用いて市民と行政が一つになり、自らが住んでいるまちの魅力をプレゼンで競い合うイベントであるが、今年度は出場者は「高校生以上の学生」と限定され、9団体による戦いとなった(注:三重県と桑名市は合同チーム、日南市は都合により辞退)。昨年の11月に動画による予選(関係者による投票・非公開で実施)により、4市に絞られ今回の決勝を迎えた(千葉市は地元開催のためシード権により決勝進出)。

4市による決勝
実は決勝に進出した団体は昨年と同じ千葉市、奈良市、浜松市、室蘭市。4市ともに高校生のチームだ。
昨年は室蘭市チームのみが高校生で、みごと最優秀賞を獲得した。今年度も同じ北海道大谷室蘭高等学校の生徒が先輩に続いて”V2”を狙っていた。
今年のテーマは「わたしの好きな○○市」。自分のまちの好きなところをデータで表すのには工夫が必要である。なぜならばデータで表すことは定量的に表すことになるので「好き」を定量的に表すこと自体が難しい。また「好き」という主観的な感情は第三者の目とは異なる可能性もあるわけで、プレゼンするにしても自分の「好き」を聴衆に共感してもらう必要がある。

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また、今回の公開シンポジウムに参加した6市の市長が審査をした。またすべての観戦者にも投票権がありオーディエンス賞が選出されている。

最優秀賞:浜松市代表(浜松学芸高等学校)
https://youtu.be/kD-Xyk8RhWo?t=565

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浜松市は「モノづくりのまち」ということでピアノなど製造出荷額が全国一位のものが多いが、軽自動車やテレビなど日本初で製造された商品も多い。また製造業だけでなく農業もチンゲン菜やガーベラなど、日本一の生産高の作物も多い。またストーリー展開において昔から新しい取り組みをしてきた「やらまいか精神」やガーベラの花言葉の「希望・前進」が背景にあるからこそ多くの日本一のものを輩出しているとした。単に良い数字をデータだけで語るのではなく、昔から伝わる浜松市民の気質がそうしたと説明している点がすばらしい。

オーディエンス賞:室蘭市代表(北海道大谷室蘭高等学校)
https://youtu.be/kD-Xyk8RhWo?t=1004

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室蘭市章に含まれる6つの"O"から6つの魅力を展開。Cool、Food、Enjoy、Comfortable、Body、Lovelyになぞられている。Coolは北海道らしく涼しいこと。公園の広さ、簡単に行くことができる温泉の数、夜景の数などをテンポよく紹介していた。温泉の数が北海道は多いという表現については北海道全域で言ったらそうなるわな、と思いつつ登別温泉にも1時間以内に行けるとそれは魅力であるかもしれない。夜景のスポット数は扱い方(見るポイント?光を発するポイント?)が微妙なのだが、数字の出典を記載してもらうとより信ぴょう性が上がると思う。よさこいソーラン節の音源が鳴らないというトラブルに見舞われたが機転を効かせて自分たちで歌い、踊り切ったところに心の強さを感じた。

CPA賞:奈良市代表(奈良市高校生観光特派員)
https://youtu.be/kD-Xyk8RhWo?t=1414

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複数の高校から構成されている「奈良市高校生観光特派員」が発表。奈良と言えば日本のルーツといっても過言ではないが、奈良市民はたくさん食べることを着目し、バナナ、牛乳、卵などの食品の一世帯あたりの支出金額が全国一。またそれが一因なのか胃腸薬の支出金額が全国2位らしい。そのほか、かき氷の専門店が多いことなどを取り上げているが、歴史のまちという先入観がある中で高校生の新しい視点が加わっている点は高く評価したい。またストーリーの中のデータの使い方は見本にしたいくらいによくできている。発表のコンセプトである「TRADITIONOW」は「伝統と新しさ」だがそれがよく分かった。

協議会賞:千葉市代表(稲毛高等学校)
https://youtu.be/kD-Xyk8RhWo?t=129

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放送部によるチーム。服装は加曽利貝塚博物館から縄文時代を再現した衣装を借りてきたとのこと。都心から近い利便性と幕張のアーバンライフを中心に展開した。モノレールも自慢だが最近導入されたシェアサイクルにも触れた。シェアサイクルは千葉市の平坦な地形が活かされ健康の向上にも役立っていて平均寿命のもっとも長い浜松市を追い抜くのは時間の問題としているのがおもしろい。
そのほか加曽利塚貝塚や花火大会、幕張メッセなどに言及したが、幕張メッセのイベントに集まる人数が「室蘭市の人口の2倍」と表現するところが、小規模の市に対し容赦のない表現が楽しくてよい。

戦いが終わって
最優秀賞を受賞した浜松市のプレゼンに着目をしてみたい。
最も目を引いたのは説明のスライドや多くの棒グラフ。なんとこの時代に手書きなのである。手書きと言っても表現方法はデジタルであり数字だけでない温かみは、見やすさを超えて、記憶に残るインフォグラフィックである。日本一を語る場合も、テレビで最初に表示された文字がイロハのイだったり、丸ノコギリがキュンとくる書き方も芸が細かい。

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CPA賞を受賞した奈良市は数字の使い方が上手だった。最初から最後まで数字で語っているのだが「TRADITIONOW」というコンセプトでストーリーを構成し、最大の強みである歴史を背景に食べ物で自慢→幸福度が高い(自殺者の少なさ、喫煙者が少ない)を数字で証明は引き込まれる内容だった。
もちろん、室蘭市、千葉市の発表もよかったが、シビックパワーバトルも回数を重ねてくるとどうしても目が肥えてくる。
差別化をするために、ゆるきゃらやパフォーマンスに頼りたくなるが、原点は「データを使ったプレゼンテーション」と「ライバルのディスリで盛り上がる」であることを重視していただきたいと思う。もちろんプレゼンのストーリーを盛り上げるためのパフォーマンスであれば、ぜひやって欲しい。

今回発表した4市については有名な場所なので、だれでもある程度の知識はあるだろう。今回参戦している高校生たちはその地で育ち、誰かに聞かされたり、成長する過程で地元の良いところを学んでいるだろう。おそらく発表内容は未知のものではなくむしろ知っていることの方が多いと思われる。そして、それらは発表をしている本人たちのプライドになっていることがよくわかる。

最後に市長全員からの質問の時間があったが、ここで高校生たちがすばらしい回答をしている。

データを調べるにあたり、自分の市の施設がギネスブックに載っていること、お祭りの数が多いこと、食べ物の支出額が多いこと、昔から親しまれている形跡があること、などを新たに知って、ますます自分のまちに愛着が湧いた。また勉強熱心な風土があることから自分も頑張りたい。
高校三年生であるが、地元の大学に進学をしたいと思い進路を決めた、

などと語っていた。
その後のパネルディスカッションにおいても、奈良市の仲川市長は「EBPM(注:Evidence-based Policy Making、エビデンスに基づく政策立案)と言われるが、若い人にはこういった活動を通してデータを使うことに慣れ、数字への感度を高めて欲しい。根性論、雰囲気、思い込みなど大人を突き上げて欲しい。」というお話しがあった。

シビックパワーバトルというイベントはプレゼンテーションの場所ではあるが、準備をする際に自分のまちの魅力を整理したり、新しい魅力を発見する必要がある。さらにライバル市よりも優位性があることを探す必要もある。バトルは成果発表でしかなく事前準備の段階で既にバトルは始まっているのだ。
今回の大会は、高校生以上の学生という制限があったが、去年の室蘭市で実績はあったが高校生が本当に理解し参加してもらえるのだろうか、という不安が正直あった。しかし今の高校生たちは論理的に考え、データを見て説明をしたり納得するという習慣が身についているのではないかと思えた。自分たちの時代とは違うかもしれない(汗)。

昔の人が伝えてきたものを大切にし誇りにしつつも、常に新しいことを取り入れるコンセプト「TRADITIONOW」は私たちも見習いたいと思う。
今回発表したチームのメンバーを見ると3チームはすべて女子。室蘭市チームのみが男子女子混成チームであるが、普段から地元の「胸キュン!」を伝えたいと思っている特定のグループに白羽の矢が立ったのではないか。「わたしの好きな○○市」というテーマがそうしたのかもしれない。
プレゼンテーションの目的は発表をすることではなく、聴いている人の行動を変えることがゴールなのだから。少しでも多くの人がそのまちに対して、興味が湧く、思いを馳せる、調べる、名産品を買う、訪問する、帰省する、住むなどの行動を促すようなものであってほしい。
予選の様子はこちらから見ることができる。
https://www.civicpowerbattle.org/cpbog2019precon

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シビックパワーバトル全国大会2020(2020年10月17日@名古屋)

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