衆院小選挙区をアダムズ方式で割り振り直てみると?

  まず、この図を見てください。


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 この渋谷区の外、目黒区、品川区、杉並区、中野区の4つの区に部分的にかかるいびつな選挙区.これが衆議院第七区です。(画像は長妻さんのサイトから拝借しました)

 何故、こんないびつな形の選挙区が誕生したのか。それは、人口が少ない県を過剰に優遇して議席を割り振っており、人口が集中する東京都は人口に対してあまりに少ない議席を無理やり都内でやりくりしているためです。このいびつな選挙区は今後、さらに人口が増加するたびに、さらにいびつになっていくでしょう。

 この状況を改善するためには、正当な方法で議席数を割り振りなおす必要があります。議席を割り振る方式はドント式や最大剰余方式など、さまざまあります。ここでは、アダムズ方式を採用したいと思います。
 アダムズ方式の説明は割愛しますが、一人別枠ドント式みたいなものだと思ってください。アダムズ方式の利点は、人口が少ない県を優遇しながら一票の格差を最小限に抑えられる点です。

議席数の割り振り

 では、実際にアダムズ方式で割り振ると議席数はどのように変化するのでしょうか。以下が平成30年の日本人人口を基に計算した数になります。

無題

 3列目が新しい議席数、4列目が都道府県人口を議席数で単純に割ったものになっています。色分けは青が議席減、橙が議席増です。今回は、衆議院小選挙区数289議席はそのままに、割り振ってみました。では、議席数が変化した都道府県は選挙区割りはどのように変化するのか、というシミュレーションを北から順にみていきたいと思います。
 この区割りはどうなるのかという予想というより、この区割りがいいのでは、という提案です。

宮城選挙区(6→5)

現行の区割り

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区割り案

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1区(511,128人)
2区(399,595人)
3区(475,421人)
4区(465,057人)
5区(417,573人)

福島選挙区(5→4)

現行の区割り

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区割り案

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1区(460,909人)
2区(458,701人)
3区(487,181人)
4区(459,779人)

埼玉選挙区(15→16)

現行の区割り

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区割り案

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 埼玉は1議席増加です。東京のベットタウンとして人口が増加傾向にある3区と14区の間に新設しました。3、13、14区域を大幅に変更。
 余談ですが、15区と3区が逆だと番号振りが一筆書きになります。

1区(467,109人)
2区(423,288人)
3区(436,970人)
4区(465,886人)
5区(447,133人)
6区(482,951人)
7区(456,553人)
8区(485,036人)
9区(429,391人)
10区(432,594人)
11区(403,484人)
12区(439,235人)
13区(437,221人)
14区(500,876人)
15区(425,733人)
16区(466,733人)

東京都選挙区(25→28)

現行の区割り

画像7

区割り案

画像28

1区(452,859人)
2区(465,109人)
3区(407,087人)
4区(467,877人)
5区(507,698人)
6区(465,780人)
7区(516,994人)
8区(510,036人)
9区(508,118人)
10区(469,966人)
11区(459,872人)
12区(478,227人)
13区(503,778人)
14区(465,875人)
15区(489,007人)
16区(455,660人)
17区(440,742人)
18区(516,519人)
19区(507,831人)
20区(491,556人)
21区(485,631人)
22区(495,095人)
23区(422,457人)
24区(502,936人)
25区(377,289人)
26区(417,615人)
27区(463,122人)
28区(519,049人)

千葉県選挙区(13→14)

現行の区割り

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区割り案

画像28

1区(355,803人)
2区(483,189人)
3区(398,840人)
4区(365,466人)
5区(437,789人)
6区(480,268人)
7区(412,034人)
8区(468,870人)
9区(478,726人)
10区(465,883人)
11区(423,373人)
12区(448,885人)
13区(481,054人)
14区(457,505人)

神奈川県選挙区(18→20)

現行の区割り

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区割り案

画像28

1区(494,581人)
2区(498,517人)
3区(512,236人)
4区(387,099人)
5区(518,138人)
6区(475,783人)
7区(385,269人)
8区(478,071人)
9区(431,927人)
10区(380,411人)
11区(442,839人)
12区(475,077人)
13区(442,599人)
14区(471,197人)
15区(494,297人)
16区(477,198人)
17区(401,450人)
18区(472,478人)
19区(339,505人)
20区(398,282人)

新潟県選挙区(6→5)

現行の区割り

画像13

区割り案

画像28

 新潟県は1議席減で5議席になります。大体、新潟市と上越中越下越で分かれています。長岡市や新潟市北区の細分化状態が解消されます。

1区(430,699人)
2区(477,224人)
3区(455,279人)
4区(410,353人)
5区(443,095人)

愛知県選挙区(15→16)

現行の区割り

画像15

区割り案

画像28

1区(451,802人)
2区(412,087人)
3区(488,239人)
4区(486,370人)
5区(404,418人)
6区(475,459人)
7区(462,953人)
8区(415,782人)
9区(459,742人)
10区(478,317人)
11区(467,664人)
12区(416,869人)
13区(509,579人)
14区(475,548人)
15区(421,008人)
16区(485,964人)

滋賀県選挙区(4→3)

現行の区割り

画像17

区割り案

画像28

1区(470,163人)
2区(466,108人)
3区(454,535人)

岡山県選挙区(5→4)

現行の区割り

画像27

区割り案

岡山C

1区(454,467人)
2区(492,445人) 岡山市北区吉備・御南・鹿田・岡南含む
3区(434,017人)
4区(488,958人)

広島県選挙区(7→6)

現行の区割り

画像19

区割り案

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現5区を廃止し、現7区を新5区としました。自治体分割は広島市安芸区(飛び地)だけとなります。

1区(489,162人)
2区(489,415人)
3区(438,273人)
4区(498,313人) 安芸区旧矢野町を含む
5区(460,550人)
6区(411,373人)

山口県選挙区(4→3)

現行の区割り

画像21

区割り案

画像28

1区(469,128人)
2区(467,402人)
3区(430,292人)

愛媛県選挙区(4→3)

現行の区割り

画像23

区割り案

画像28

現2区を廃止し、現4区を新2区としました。

1区(499,768人)
2区(392,650人) 松山市久谷支所含 ほぼ重信川以南
3区(477,435人)

長崎県選挙区(4→3)

現行の区割り

画像25

区割り案

画像28

散らばっている現3区を廃止し、現4区を新3区としました。

1区(447,686人)
2区(447,768人)
3区(459,769人)

おわりに

 ここまで見ていただきありがとうございます。ここで特に注目してほしいのが、新潟県、滋賀県、長崎県の選挙区です。これらの選挙区はいずれも、議席を減らしていますが、その結果、市区町村の分割状態が解消されたり、生活圏に沿った区割りとなったりしています。これらの県は人口に対して選挙区が過剰に割り振られているために、選挙区を持て余している状態となっているのです。一票の格差の是正は地方の軽視ではありません。むしろ、地方にも目を向けるからこその一票の格差の是正なのです。
 人口が多い地域も少ない地域も選挙区をゆがめる一票の格差、これを解消することは民主主義を適切に運用するうえで必要不可欠なことです。全政治家、衆議院議員選挙区画定審議会には早急に解決してほしい政治課題です。

 現行の区割りについては以下のサイトからの引用になります。


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