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S&P500への独り言

1.アノマリー

今回は、S&P500について、通常とは違った角度から眺めてみようと思う。精緻な分析というようなものではない。ほとんど独り言のようなものである。こうした無駄な遊びの中から、何か新しい気づきがあることも、たまにある。そういう類の独り言である。
下のチャートは、1990年以降の大統領選挙の年の四半期毎のS&P500の騰落状況である。年間を通じて冴えないというのが、大統領選の年の株価の動きである。特に第1四半期が弱い。足元は、年末ラリーに向かっているが、来年前半は少し注意が必要かもしれない。

次に来年は辰年だ。過去5回の辰年のS&P500の騰落状況が下のチャートだ。5回中で4回は上昇し、平均上昇率は10%を超えている。辰年とS&P500は相性が良いようだ。

ちなみに、日経平均株価は下の状況だ。過去4回の平均上昇率は13%を超える。バブルの88年がちょっと異常であることや、2012年はアベノミクス元年であった影響が大きい。

2.業種の特徴

S&P500は11業種に分けられるが、今回は不動産を除いた10業種の状況を見ておく。下のチャートは2000年1月を100として指数化したチャートである。

上のチャートだとS&P500に対しての差が分かりにくいので、S&P500とのパフォーマンスの差を見たのが、下のチャートだ。5業種がS&P500指数をアウトパフォーム、5業種がアンダーパフォームしている。特に通信が大きくアンダーパフォームし、一般消費財がアウトパフォームしていることが分かる。

(2000年1月との比較)

2015年1月を100としたのが、下のチャートだ。2015年くらいからGAFAMが市場で圧倒的なパワーを持っていく。2015年ベースだと、S&P500をアウトパフォームしているのは、情報と一般消費財の2業種しかない。いかに、情報セクターが全体を押し上げているかが分かるだろう。

(2015年1月との比較)

コロナ直前の2020年1月を100としたのが下のチャートだ。情報以外は全てアンダーパフォームしている。この傾向は強まっており、特に今年はマグニフィセント・セブンとその他の493銘柄で大きな差が出た1年となった。

(2020年1月との比較)

ここからは、各分野を少し違った角度から見てみよう。来年は大統領選の年だ。更にはFRBが急激な利上げを終了し、Higher for Longer方針のもとで、高い金利の据え置き期間に突入している。この2つの観点を業種別に見てみよう。

【情報】
アップル、マイクロソフト、エヌビディア、マスターカード、ブロードコムなどが主要銘柄だ。
大統領選の年の情報セクターの四半期毎の騰落率を示したのが下のチャートだ。情報セクターも、あまり勢いは良くないようだ。

FRBは2004年6月から2006年6月まで17回連続で利上げを行い、FF金利を1%から5.25%に引き上げた。そして2006年6月から2007年9月まで15カ月間に渡り、高い金利を据え置いた。その際に情報分野は、どういう動きをしたか?下のチャートのように金利引き上げ局面は冴えなかったが、金利据え置き期間は、非常に強い上昇となっている。

【ヘルスケア】
ユナイテッド・ヘルス、J&J、イーライ・リリー、メルクなどが主要銘柄だ。大統領選の年は、やはりあまり大きな動意は出ていないようだ。

FRBの利上げ局面では弱く、金利据え置き期間で大きく上昇という点では、情報セクターと同じような動きをしている。

【金融】
バークシャー、ビザ、JPMなどが主要銘柄だ。大統領選の年は年の前半は弱いものの、年後半以降から大きく回復している。

FRBの利上げ局面では金融株は好調だ。金利据え置き期間も、それなりに好調を維持している。

【一般消費財】
アマゾン、テスラ、ホームデポ、マクドナルドなどが主要銘柄だ。大統領選の年は冴えないが、底堅いイメージか。

FRBの利上げ局面でも、金利据え置き期間でも堅調だ。米国の一般消費財セクターは優秀だなー。

【資本財】
UPS、レイセオン、ハネウエル、ロッキード・マーチン、ユニオンパシフィックなどが主要銘柄だ。大統領選の年は、後半に少し堅調地合い。

2004年~2007年のケースでは、資本財は非常に好調だった。

【通信】
アルファベット、メタ、ウオルトディズニー、Tモバイル、ベライゾン、コムキャストなどが主要銘柄だ。大統領選の年は、総じて冴えない。

FRBの利上げ局面と、据え置き期間では堅調だ。

【生活必需品】
ウオルマート、コストコ、フィリップモリス、コカコーラなどだ。第1四半期は冴えないが、その後は安定推移している。

FRBの動向にあまり影響はないようだ。

【エネルギー】
エクソンモービル、シェブロンなどだ。この業界は、下のチャートを見ると、上下に大きく変化している。民主党、共和党のエネルギー戦略がかなり違うことが原因かな。

FRBというよりは、2004年~2007年の新興国を含めた世界的な景気の良さの影響で上昇している。

【公益】
ネクステラ・エナジーやデューク・エナジーなどだ。

【素材】
リンデが突出した銘柄となっている。

3.結論

今回の視点からだけの結論だ。大統領選の年の株価は、年を通じて冴えない。強いて言えば、一般消費財や生活必需品、公益が底堅い。エネルギーや通信は変動が大きい。但し、FRBが金利引き上げから、金利据え置き期間に移行した場合には、各セクターともにかなり恩恵を受けている。
また長期的には、情報、ヘルスケア、一般消費財が強いという特徴がある。
近年はとりわけ情報セクターが全体を牽引する状況が顕著。


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