無題

シリアスに、されどアバウトに伝わるメッセージ。紗原音依さん「Realize」

ニコニコ動画⇒http://www.nicovideo.jp/watch/sm22677359


まず、何よりイントロからふわ~っとフェードインしてくるピアノのリフレイン。
曲を通してところどころ顔を出すこのリフレインは、影の主役とも言うべき名フレーズでしょう。
「Do Realize?」「To Realize?」とタイトルで踊るように韻を踏むサビもなかなかに印象的。
マイリストコメントによると3日でできたというこの曲ですが、それも妙に納得のいくまとまりの良さと、勢いを感じてしまいます。
何をやるにしても、調子のいい時ってびっくりするくらいトントン拍子に事が進むんですよね…

歌詞の方ですが、現代社会を生きる人々の生き様を痛烈に皮肉ったものとなっています。
世の中にいくつも蔓延る不条理だったり、少しの努力で乗り越えられる壁だったり、そういったものからはことごとく目を背け、
自分にとって都合のいい事柄ばかりを信じた結果それが自らの狭い殻の中での「常識」となる。
そのことに自分自身うっすら気づいていながら、自分で作り上げた「常識」という無難な世界の中から動けず平行線を辿り続ける。
(…と、自分は解釈しました)
一見厨二っぽい言葉の羅列のようでいて、実はかなりシニックに的を得た歌詞ではないかと思わされます。

ただ、その表現はあくまでも抽象的なものに過ぎず、いわゆる「メッセージソング」系にありがちな、言いたいことが前面に押し出されすぎて頭でっかちになってはいないところが秀逸。
言いたいことは「何となくわかる」程度であくまで添え物にとどまり、曲のインパクトの方が常に前に来る。
それこそが、ポップスの理想形ではないかなと。



※当記事は2014年10月27日にボーカロイダーズ.com様に寄稿したものの再掲です。

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