無題3

変われる?変われない?変わりたい?「ブルーガール・ドクトリン」

ニコニコ動画⇒http://www.nicovideo.jp/watch/sm28178160


聴くだけでネガティブをポジティブに一発で変えられる音楽があるとしたら、それはもうド○えもんのひみつ道具に匹敵する代物だと思ってます。


「変えていこうか」「変えていければ」「変わんなきゃ」
軽妙なボカロファンクに乗せて歌われる、ポジティブなメッセージ。
でもそれは、約束された成功をマニフェストすることと必ずしもイコールではないように思います。


たとえどんな力強いポジティブなメッセージの込められた歌であっても、所詮それは歌の世界の中でのお話であり、"物語"の域を出ないものだと、当方は考えています。
この曲の中でも、けして「変わった」とか「変われる」とか、断定するような表現は一言も含まれていません。
結局、現状を「変え」られるかは聴き手の実際のアクションに委ねられているものであって、歌を提供する側がそれを保証するものではないからです。


それでも、当方はそんな根拠もないアジテートに、少しばかりの前向きな気持ちを後押しされるんです。
その所以はひとえに、この曲が未実現の理想を想う"反実仮想"の歌だと思うから。

裏を返せば、先に述べたサビのフレーズも【「変わらなかった」過去/未だ「変わっていない」現在/これから「変えていきたい」未来】という図式が見えてはこないでしょうか。
当方がこの曲に覚える共感というものは、ごり押しのポジティビティからくるものではなく、こうした健気な野心が詞中から汲み取れるからこそ、自身に投影してしまって得られるものなんだろうな、と。


「変わんなきゃ 雲散霧消に終わる未来へ 世界へ」
前述のようにけして成果を約束することなく、不確かなフレーズで終わるこの曲。
曲中で演説するミクさんも、聴いている有権者である我々も、結果を伴えるかは自分次第、という苦い現実を突きつけられると同時に、聴き終えた後にほんの少し背筋のしゃんとするような、そんな歌です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?