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ヨーコと見合い

「あ、お名前、ヨウコさんって言うんですね」


「はい」


しかも太平洋の洋。オノ・ヨーコと同じか。そういえばどことなく顔も雰囲気もヨーコに似てるな。

もし俺がこの子と結婚したら、俺がジョン・レノンか。俺がジョン・レノン・・・悪くない。

「だってヨーコみたいだから、俺がジョン・レノンじゃない?」なんて、心の中で口ずさんでみる。



「いい名前ですね」



「え? 初めて言われました。なんだか昭和っぽい地味な名前じゃないですか。自分ではあまり好きじゃないんです」



「すごくいい名前ですよ。多分、世界で一番有名な日本人女性の名前です」



「?」



「オノ・ヨーコさん。ご存知ないですか?」



「えっと、ごめんなさい」



「ジョン・レノンの奥さんですよ」



「ジョン・レノン?どなたですか?」



マジか!こいつヨーコの名前で今まで生きてきて、ジョンの事も知らんのかい。
ますますオノ・ヨーコみたいじゃないかよ。



僕たちは、待ち合わせ場所のファミレスを出て、僕の誘いで美術館へと向かった。



「ヨーコさんは、やっぱりアートとかお好きなんでしょ?」



「いえ、私、美術とか全然興味無くて」



「本当ですか? あ、それって「世間一般でいわゆる”芸術”として崇め奉れれているもの」に興味が無いって意味ですか?」



「え?ちょっと何言ってるかわかんない」



「あ、あそこの庭に置いてあるアレ見てください」



「アレって・・・脚立ですか」



「そう!やっぱ芸術作品よりも、あっちの方にグッときちゃいます?」



「いや、本当に何言ってるかわかんない」



「あの、一つお願いがあるんです」

「何ですか?」

「ヨーコって呼んでもいいですか?」

「初対面で呼び捨て?・・・いいですよ」

「僕の事は、ジョンって呼んでください」

「いやなんでやねん。無理無理無理無理。ジョンは無理」

次に僕たちはメガネ屋さんに行き、僕はロイド型のメガネを作った。



「目、悪いんですか?」



「いや、両目2.0です」



「めちゃめちゃ見えとるやないかーい」



「ヨーコ、さっきからちょいちょいツッコミが厳しいね」



「私、お笑い好きなんです」



「そうなんですか」



実際のオノ・ヨーコって、お笑い好きだったかな?



「これ、ヨーコにプレゼント。2人の出会いの記念に」



「え? いやこんなデカいサングラスどこでかけんねーんって話やね」



「ヨーコに絶対似合うって。さあ、かけて」



「え〜」



照れながらドデカいサングラスをかけて、僕の方を見て髪を整えるヨーコ。



ロイド眼鏡越しにヨーコに微笑かける僕。



「ねえジョン。女がサングラスをかける理由って、涙を隠すためだって知ってた?」



「え?」



このヨーコがそんなセリフ、言う訳ないか。



「いや、これ、ふられ気分でロックンロールやないかーい」

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