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今夜、ハードロックカフェにて @第16夜

「久しぶりだな。ハードロック。こんな時だってのにな」



「こんな時だからこそ、俺達が来ないで誰が来るって感じですな」



「こんな時だからこそ、最近、俺、よくテレビを見ちゃうんだよ」



「いや、先輩、こんな時じゃなくてもめちゃくちゃ観てるじゃないですか」



「まあね。んで、後輩君さあ、スタッフが誰かの家について行く番組知ってる?」



「ああ、ありますね」



「俺、あの番組好きなんだけどさ、どうしても納得いかない所があるんだよ」



「はあ。どこすか」



「あれさ、毎回、毎回、最後にレティビーが流れるんだよ」



「いいじゃないですか。歌詞が内容とマッチしてる感じで」



「いや、じゃあ、こう考えよう。お前に新しい知り合いができたとする」



「はい」



「ソイツが、「自分はロックが好きだ」と言う」



「はいはい」



「んで、ソイツが「俺のマイ・ベスト・テープを聴いてくれ」と持ってきた」



「テープ!シチュエーション、昭和っすね〜」



「じゃあ、Spotifyのプレイリストを共有してきた?」



「いや、無理しなくていいですよ。テープでいいっす」



「そのプレイリストに、レティビーが入っていた」



「あ、それは無いかも」



「だろ。怒りを通り越して、恐怖感じるだろ」



「確かに」



「あの、よくホームセンターのワゴンに売ってる「懐かしのメロディ」のCD感、感じるだろ」



「そこまで言いますか。でも、それとあの番組のレティビーは違うでしょ」



「いや、俺が制作者だったら、あれは絶対に流さない」



「はあ」



「ポール様に畏れ多いとか、そんな意味じゃないぞ。ビートルズを使うにしても、レティビーは無い」



「じゃあ、先輩だったら何流します?」



「ビートルズは無いな」



「はあ」



「今、パッと思いついたんだけど・・・ケネディ?」



「デッド・ケネディーズですか?」



「違う、ウェディング・プレゼントだよ」



「え?最後しんみりする感じ出したいのに、あの曲ですか?」



「あれ聴くと、しんみりしない?」



「ひとつもしねーわ!」



「じゃあ、後輩君がディレクターなら、何流すよ?」



「パッと思いつく所で、ジーザス&メリーチェインのジャスト・ライク・ハニーっすかね」



「ああ、いいな。優しい気持ちになれるな。番組を最後、包み込むように仕上げるのね」



「いや、そんな深くは考えてないすけど。先輩だったら、てっきりルー・リードとかトム・ウェイツって言うと思いました」



「うーん。やっぱ何回考えてもケネディだわ。ちょっと今からリクエストしてくるわ」



「あんた、今、聴きたいだけじゃないですか!」

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