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今夜、ハードロックカフェにて @第14夜

昼下がりの東京。ここは上野・・・ではなく、下北沢だ。

今日もまた、客もまばらな店内の片隅で
ニューウェーブ好きな先輩(40代後半独身好きな女性のタイプ清楚系)とギターロック好きな後輩君のビール片手にダベりタイムが始まる。。。


「先輩、この店、いいっすね」


「だろ?俺だってさあ、魂売った後のエアロスミスとか、魂売った後のチープトリックとか、ジャーニーの野球の曲みたいなゴリゴリの産業ロックばっかりかかるような店じゃなくてね、たまにはこういうガチな大人のアメリカン・ロックがかかる店で飲みたいんだよね」


「わかります。しかし、こんな店、まだあったんすね〜」


「ああ。今日は泊まりだから、終電気にせずゆっくり飲もうや」


「はい!あ、先輩、この店も聴きたい曲のリクエスト受け付けてくれるみたいすよ」


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待て。お前、この店のリクエスト・システムはなあ、素人が気軽に手を出せるようなシロモンじゃねえぞ」


「はあ」


「ハードロック・カフェで、マイ・シャローナとかフロック・オブ・シーガルズとかリクエストして喜んでる世界とは全くの別物なんだぞ」


「分かってますよ」


「ほお。じゃあ、本リクエスト入れる前に、俺にお前の魂の選曲を聞かせてもらおうか」


「はい。まず、オールマン・」


「はい消えた。お前、退場。まさかいきなりNGワードぶっ込んでくるとはね。さっき飲んだギネス吹き出しそうになっちまったぞ。それダメだ。ちなみに第2候補は?」


「えっと、クラプトン・」


「ふざけるもいい加減にしろよ。お前、この店で一見さんの客がリクしちゃいけない「全米代表」と「全英代表」言っちゃったよ」


「なんでですか?」


「なんでもクソもあるか!店の名前と看板から思いっきりオールマン臭出まくってんじゃねーかよ。これ創業以来ずうっーとずうっーとかかってるだろ。どう考えても、店の人、何千回、何万回って聴いてるよな。・・・いい加減飽きてるだろ、いくら好きでも」


「はあ」


「クラプトンも一緒。まさかリクエスト曲レイラじゃねえだろうな?デュアン・オールマンとクラプトンって、実は接点濃いんだよ。だからこの店でクラプトンもバンバンかかってるはずだ。とはいえ、今日が誰かの命日とか記念日なら、話は別だけどな」


「あ、1979年の今日、クラプトンが水戸でライブ演ってますね」


「どんな記念日だよ!って、もしかして行ったの?」


「生まれてません。しかし、水戸に来てたんだ〜」


「だから?」


「クラプトン、納豆食ってる可能性高いっすね」


「だから?」


「あの粘り強いスライド奏法、納豆の影響かも?」


「んな訳あるか!」


「じゃあ、そういう先輩のリクエスト教えて下さいよ」


「ん?しょうがねえなあ。まずはね、ヴァン・モリソンのデュエッツってアルバムな」


「はあ」


「次は、ルーシー・フォスターのレット・イット・バーンな」


「ちょっと待って下さい。それってAmazonプライムの「ピーター・バラカンが選ぶ21世紀の愛聴盤」じゃないすか!」


「あ、バレた?」


「バレたも何も、先輩が僕に「黙ってこれ聴け!」ってすすめてきたんじゃないですか⁉︎」


「そうだっけ?」


「・・・あ!この身を削ぐようなギター・カッティングのイントロ、きたーーー!!STILL ILL!!!」


「嘘でしょ!いつの間にリクエストしてたんすか!って大丈夫なんすか?この店でNEW WAVEは?」


「大丈夫、大丈夫。ニューウェーブなんつってるけど、今やオールド・ロックだから。ほら見ろよ、店の男の子もノリノリだろ?」


「まあ、そうですね」


「生身の人間が出してる音はね、みんなロックなんだよ」


「こうなると、先輩もニューウェーブ・ロックバー開きたいっすね」


「いいね!ニューウェーブ・ロックバー!」


「店の名前どうします?」


「スティル・イル?」


「客来ないでしょ」


「ゼア・イズ・ア・ライト・ザット・ネバー・ゴーズ・アウト?」


「長すぎです」


「プリーズ・プリーズ・プリーズ・レット・ミー・ゲット・ホワット・アイ・ウォント?」


「だから長えよ」


「ブルー・マンデー?」


「あんた、客呼ぶ気無いでしょ」


(2020年2月11日)

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