ウィスキーの洪水
久しぶりに友人と飲みに行った。
いつもバーに行ってもメニューなんか見やしないのに、たまたま見たメニューの中に、「ポーグス」という酒を見つけてしまった。
「マスター、このポーグスって、あのポーグス?」
「そう、あのポーグス」
「アイリッシュ・ウィスキーか〜。ハードル高いな〜。いつもは絶対に飲まない種類の酒なんだけど、これたまたま見つけちまったし、追悼の意味も込めて、これ飲んでみっかな」
「あ〜、ボーカルの人?最近亡くなったの?あの人、まだ生きてたんだ。とっくに死んだと思ってたわ」
「これ、どういう風に飲むの?」
「おすすめはストレートやな」
「ストレート⁉︎無理無理無理無理」
「いや、あのボーカルの人なら、このボトルに口つけてラッパ飲みでしょ」
「まあ、そう言えば、ストレート・トゥ・ヘルって映画に出てたよね」
「うちの店、誰も知らねえ映画のタイトル言うの禁止だから」
「失礼な。アレックス・コックスだぞ」
「だから、誰も知らない映画監督の名前をドヤ顔で言うのも禁止な」
「まあいいや。ポーグス、ストレートでくれや」
「大丈夫?」
「大丈夫!ポーグス、ストレート!」
その後、全く記憶がございません。まさにストレート2地獄。
色んなお客さんに絡み倒したみたいですが、覚えてないからひとつも恥ずかしくもないわ。
多分さ、天使が降りてきちまったんだと思うよ。なにしろ、最高の酒と最高の音楽さ。
パンパンだったはずの財布の中身も、天使の魔法でいつの間にか空っぽだったけどね。
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