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(5)メタファーと世界観について part.1

こんにちは。

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クリーンランゲージ&シンボリック・モデリングには、様々な使い道があります。
色々な場面で、クリーンな質問を使用することもできます。
その時、必要なことが、前回の<クリーン>です。

クリーンでなければ、クリーンランゲージでもないし、クリーンランゲージ&シンボリック・モデリングでもありません。ただの質問技法になってしまいます。

そして、今回取り上げるもう一つ。

この技法の大きな特徴の一つは、メタファーを使うことです。

今回は、ザクっと、メタファーについて、そして、メタファーと関係する個人の世界観について説明してみましょう。

では、早速始めましょう!
まずは、メタファーの効果を、実際にご体験いただきましょう。

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現実に、あなたの背中に羽が生えたことは一度もないのを、私は知っています。

(クリーンランゲージでは決めつけはご法度ですが、これは決めつけさせていただきます。未来はわかりませんが、背中に羽が生えているホモ・サピエンスは現在まで確認されていません。(笑))

けれど、この文章を見て、なんとなく、このセリフを言った人の気分が、どんなで、どんな体の感覚か、何となくわかるような気がしませんか?
あなたが、背中に羽が生えた経験がなくても、です。

そして、おそらくは、セリフを言ったその人自身にも、背中に羽が生えた経験はないだろうにも関わらず、このセリフ。

背中に羽が生えた経験がないのに、「背中に羽が生えたみたいな気分」という人。
そして、おそらくは、大体の人は、変なことをいうねえ・・・とは思わずに、そうなんだ、とこの人の気分が何となくわかる。

どうして、わかるのでしょう?
どうして、そう想像することができるのでしょう?

メタファーは、世界中の毎日の日常の中で、普通に使われています。

「今日の天気は、真夏みたいだね。」
「それ、なんか子供っぽくない?」
「もう、腹が立ちすぎて、ちゃぶ台をひっくり返しそうやわ!」
「人の心の中に土足で立ち入らないで。」
「嬉しくて、空飛びそう!」
「お腹が減りすぎて、もう背中とくっつきそう。」

目の中に入れても痛くない孫、水に流そう、火に油を注ぐ、エトセトラ、エトセトラ。

私たちの毎日の暮らしの中に、メタファーはゴロゴロ転がっています。
日本だけではありません。世界中にです。
誰にも教えてもらった記憶はなくとも、誰もが普通に、自分の気持ちや状況を表すために、メタファーを使っています。
耳を澄ましてみていただければ、いくらでも見つかると思います。

クリーンランゲージ&シンボリック・モデリングでは、このメタファーを使って、コミュニケーションをとります。

メタファーには3種類あります(別に書きます)が、特にその中で、この「背中に羽が生えた」みたいな表現のメタファーを使います。

さてさて、では、まず、メタファーとは何なのでしょう?

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ザクっというと、こう。

比喩ですよね?と思われる方もいるかもしれません。

確かに比喩的な表現がメタファーであることは多いのですが、この場合は、文学的な表現の比喩とは少し意味が違います。

例えば、もし、Aさんが「背中に羽が生えたみたいな気分」というのと、Bさんが「背中に羽が生えたみたいな気分」と言ったとして。

どちらもおそらく、軽やかな気分なのだろうと推測されます。

しかし、さて、ここで一つ。

Aさんの羽と、Bさんの羽は、同じ羽でしょうか?
違うでしょうか?

もしも同じ羽でないとするならば、その羽の違いは、どこからやってきたのでしょう?
ちょっと考えてみてくださいね。

その違いは、どこからやってきたのか?
質問を変えるなら、何が違いを生み出しているのか?


さて、ではここで、そもそものメタファーという言葉の語源をご紹介します。

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イラストのような器のことをアンフォーラと呼んでいました。

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その他にも、香料なども入れられていたようです。
アンフォーラの中に入っていたものは、どれも、<人の役に立つ貴重なもの>だったとか。

さて、では、現在のメタファーには何が入っているのでしょう?

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そう、メタファーは記憶を運んでいます

メタファーは、その人自身と、その比喩を結ぶつながりの記憶を持っています。
特に、今回、例に使った「背中に羽が生えた」みたいな表現の時は。

生まれてから、今日に至るまで、全く同じ経験をしてきた人は、世界中に、それぞれ一人しかいません。

例えば、今、この瞬間、同時に、このブログを読む経験を何人の人がしていたとしても、それぞれの人は、きっと違う場所にいて、違う端末でこれを読み、違う洋服を着て、違う感想を抱いていることでしょう。
いる部屋の温度も違うことでしょうし、お天気も違う、椅子に座って読んでいるかもしれないし、寝転がって読んでいるかもしれない。
これを読んで、何かを思い出したかもしれないし、もしくは、つまんない記事だなと思っているかもしれない。

経験は、一瞬一瞬、一人ひとり異なります。
一人ひとりが持つ、それぞれに固有な経験です。

そして、記憶は、その経験から作られます。

そして、メタファーは、その記憶を運んでいます
その経験(した記憶)を、別の視点から言い換えて、そして、別の経験として言い表しています。

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何とまあ!

「背中に羽が生えた」の中に、もしも100個意味があるなら、誰かが言ったその言葉の本当の意味を他人が理解するのは、もはや不可能に近いような気がします。

その100個の中のどの意味が、今回の「背中に羽が生えた」かを言い当てることは・・・私にはできそうな気がしません(笑)

私がクリーンランゲージ&シンボリック・モデリングを、私が提供するセッションで使っている理由は、他人の世界観を汚さないためにクリーンでいるというよりも、もはや、他人の世界観を言い当てることが無理だと思っているというのもあります。

「そして、背中に羽が生える、そのについて他に何かある(かしら)?」とか、「その羽は、どんな羽(なの)?」と尋ねる方が簡単ですからねえ。

<クリーンな質問>の基本の質問・・・・*〇〇は相手が言った言葉そのまま*

「その〇〇について、他に何かありますか?」
・・・特徴を尋ねる質問

「その〇〇は、どんな〇〇(ですか)?」・・・特徴を尋ねる質問

*それぞれの質問は、<機能(function)>がはっきりしています。*

そして、例えば、「その羽はどの辺(どの辺り/どこ)(にあるの)?」と質問すると、あら不思議。言葉上の羽だったはずのものが、何とまあ、その辺にあるのを見つけてしまったりするのですから。
体感まで伴って、羽が背中に生えている自分という新しい経験が始まってしまったりするのです。

<クリーンな質問>の基本の質問・・・・*〇〇は相手が言った言葉そのまま*

「その〇〇はどの辺(どの辺り/どこ)にありますか?」・・・場所を尋ねる質問

そして、その新しい経験は、何かしら、新しい、まだその人が気づいていない知恵を持っていたりするのです。

だから、メタファーを使うのです。

そして、そこには、魔法のようなパワーがあります。

人は時に、記憶(自分の経験)を思い出すのが難しいことがあります。

デイビッド・グローヴが、メタファーに着目した理由は、彼のクライアントが、経験を出来事としては語れなかったり、思い出せなかった時でも、「メタファーでなら語ることができた」からだそうです。


ちなみに、前回のクリーンとは?で<言葉を言い換えない>と書いたのは、メタファーについても同じです。

どういうことかというと、「羽」を「翼」と言い換えたりしないということです。
これは、誰かの記憶と経験の一部を奪うことになると、クリーンランゲージでは考えます。

それから、「羽」を「空を飛ぶ道具」と決めつけたりはしないことも大事です。
わかりませんよ、その羽は、ホウキのように床をはいてくれる便利な道具かもしれないし、誰かに何かを伝えてくれるのかもしれないし。


どういう経験から生まれた気分が「背中に羽が生えた」みたいな気分なのかは、人それぞれということです。


さて、では次回は。

あなたの経験が関係していて、あなたのメタファーは誰とも違うんだ!ということを、ご自身で体験していただくところから始めたいと思います。

では、また。

_________________

<参考文献:References>

James Lawley&Penny Tompkins, Metaphor in Mind,2014


Marian Way&Clean Learning, Clean Language Core Skills, 2014


クリーン実験室のホームページはこちらから
(クリーンランゲージ関係の翻訳記事、学習サポートなど)


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