ド・フール《悪の声》/ボードレール「レスボス」

アール・ヌーヴォーのデザイナーの描いた油絵!
法規制をかけられたボードレールの詩!
レズビアンの花園!


ごきげんよう。

城牙咲くらは(じょうがさき・くらは)です。


今日ご紹介する絵画は、ジョルジュ・ド・フール(Georges de Feure, 1868-1943)の作品《悪の声》です。

ジョルジュ・ド・フール《悪の声》、油彩・板、1895年

オランダ人の父とベルギー人の母を持つ彼は、デザイナー、画家、装飾芸術家といった多彩な才能を活かして、パリで活躍しました。

この絵の主役の女性は、どことなく「男装の麗人」という風格です。

そして、この人物の視線の先には、性交渉を終えたばかりと思しき裸の人物が描かれています。

よく見て下さい。この裸の人物は、二人とも女性です。

事を終えた二人の裸の女性と、それを見つめる男装風の女性。

そうです、この絵のテーマは「レズビアン」なのです。

今日では珍しくもないレズビアンですが、19世紀当時のヨーロッパでは、同性愛が法によって禁じられていました(『サロメ』や『ドリアン・グレイの肖像』で有名なオスカー・ワイルドも同性愛を理由に収監されました)。

そのため、男性的な女性が夢想している女性同士の交わりは「”悪の”声」なのです。

そして、もう一つの理由は、この絵画が、シャルル・ボードレール(Charles Baudelaire, 1821-67)の詩集『悪の華(Les Fleurs du mal)』を意識して描かれたからです。

この詩集はご存知の通り、『悪の華』は1857年に刊行されましたが、そのうち6篇の詩が反道徳的であるとして、有罪・罰金処分を受け、削除されました。

その6篇の詩の中の一つが、これからご紹介する「レスボス」« Lesbos »という詩です。

「レスボス」というのは、実在する島の名前です。

そして、古代には、女性同士の同性愛が盛んだったという伝承もあります。

「レスボス」は長い詩なので、一部だけ抜粋・翻訳して見ました。

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Car Lesbos entre tous m'a choisi sur la terre Pour chanter le secret de ses vierges en fleurs, Et je fus de l'enfance admis au noir mystère Des rires effrénés meles aux sombres pleurs; Car Lesbos entre tous m'a choisi sur la terre.

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レスボスが、地上の全ての人達の中から私を選んだのだから花盛りの乙女達の秘密を歌わせるためにそして、暗い涙の混じった気狂いじみた高笑いの黒い秘密の花園に入ることを、私は許されたのだレスボスが、地上の全ての人達の中から私を選んだのだから

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そして、『悪の華』に収録されている別の詩では、レズビアンの女性を「無限を追い求める女性」とも表現しています。これも、要チェックです。

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僕の翻訳書が好評発売中です!これも、要チェックです!

モーリス・メーテルリンク『対訳 温室:他全詩集』(デザインエッグ社)

『青い鳥』でノーベル文学賞を受賞したメーテルリンクのデビュー作『温室』および他の詩を全て集めたのは、世界初です!

表紙の絵も僕が描いた油絵です。

是非、メーテルリンクの幻想的な世界をお楽しみ下さいね。

城牙咲くらは

Twitter: @claha_jyogasaki

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