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香港に行ったこと 4

3日目。昨日の汗まみれTシャツ類をコインランドリーに突っ込んで待つ。今日は友人らと朝食&ドライブの予定だが、雨がドシドシ降っている。香港は雨が降るととにかく量が多く「今日どうする…?」と考えてしまうぐらいだ。街なかで集合する予定を変更し、なんと私の泊まっている宿の前まで友人らが車で迎えに来てくれた。

昨日一緒にビクトリアを散歩したMさんと、そのパートナーE君と、車を出してくれたのは彼らの仲間であるH君。彼はこの運転のために私と初対面だが、E君たちとは旧知の仲。まさか香港で車に乗って遊びに行く展開になるとは、とても嬉しい。車を使わないと簡単に行けないような場所もあるからだ。

香港人の休日の朝

豪雨は止み、傘をささなくて済んだ。
向かった先は、九龍のあたりにある商業施設。サイゼリヤ、マック、ケンタッキーや元気寿司など見慣れた店が多いが、これから向かう先は私にとっては全く馴染みのないレストラン。


レストランの入り口から受付があり、水槽が見えて胸が躍る。入店すると広いフロアにたくさんの円卓が配置されていて、大勢の人で賑わっている!活気ある店内を一望すると年配の方が多く、食事をしたり新聞を読んだり、お喋りを楽しんだりして過ごしている。



テーブルには、湯呑み、お皿の上にお椀、レンゲ、箸が置いてある。こういうローカルな店には最初にお茶が出てくるが、お茶を飲む前にやることがある。お椀にお茶をいれ、そこに自分が使うお箸や湯呑みをひたして消毒する。私も見様見真似で洗ってみた。

「この店だったらやらなくても大丈夫だと思うけど、一応やってる。昔は洗う必要があって、その名残でやってる」とE君。

E君は横を向いてH君とお喋りしながらノールックでこれをこなしていた。


日本にファミレス、喫茶店、定食屋、などシチュエーションごとに使い分ける飲食店のジャンルがあるように、香港にも特有のジャンルがある。茶餐廳(チャチャンテン)という朝から晩まで幅広いジャンルのメニューを取り揃えているレストランだったり、冷たい甘いものを提供する冰室(ベンサッ)だったり。ここは茶餐廳ともまた違うよう。茶餐廳は、たとえば出勤前に一人でサッと食べていくとかそんな感じで、今日来たこのレストランは、家族などで来てお喋りしつつゆっくり楽しむところだそう。飲茶ともまた違うんだろうか。

「昔は並んで入るようなところで、しょっちゅう家族と来てた」と話すE君。

消毒に使ったお茶は大きな容器にまとめて撤収。


注文はQRコードを読み込み、スマホで注文する現代スタイル。「好きなもの選んでね」と言われるも、写真だけではどんな味なのかわからない。ほとんどはおまかせした。その結果次々に料理が運ばれ、朝からテーブルが賑やかになった。

左から時計回りに、蝦の蒸し餃子、鶏の爪、腸粉(チョンファン)2種類

腸粉は米を生地にした、ライスペーパーと言ったらいいだろうか。ここに並んだものは2種類で、肉を包んだものと、珍しいと思ったのは揚げパンを包んだものだった!

蒸し料理には蒸し料理専門の料理人がいるので、クオリティが高く美味しい。蝦の蒸し餃子は具が細かくなく、大胆に食感を楽しめるところがよかった。

味、地元っぽさ、どちらの意味としても本格的な店に行けて私は嬉しかった。また、商業施設内にナチュラルに存在している観光向けでもない店を覗くことも良かった。やっぱり飾らない風景を見たいものだなあ。

腸粉などの香港料理はファストフード的な店でも味わえる。


ケーキ屋さんのレジ横に肉まんケース


階数表示

エレベーターのボタンを見ると、見慣れぬ階数表示がある。香港の建物は、1階に当たる階は「G」と表記され、2階に当たる階が1階となる。"G"はGroundのことを言う。この建物はUpper Groundを表す"UG"と、Lower Groundを表す"LG"の階まである。知らなければ混乱しそう…


九龍、新界

車窓から九龍の街を眺めると4階建てくらいの建物ばかりが並んでいて、ほかのエリアと比べて低い。昔使われていた空港が近く、その高さ制限から残っている街並みらしい。25年前まで使われていた啓徳空港(Kai Tak Airport)は市街地と非常に近く、飛行機がビルの間近に迫るような光景が人々の記憶にある。閉鎖した後の空港は現在も開発中で、香港の街のスピードであれば数年後にはこの九龍エリアも変わってしまうのかな〜と思ったりする。


香港は、大雑把に3つのエリアに分類される。
前日私がMさんと散歩をしたビクトリアや香港大学は、南に位置している"香港島"。海を挟んで大陸の半島となっているのがこの"九龍"。そして、山を隔てて北へ行くと、"新界"がある。これからそこの寺院へ観光に向かう。

九龍からは、ライオンロック(獅子山)というライオンを横から見たような形をした、象徴的な山が見える。ここをトンネルで潜って新界へ行く。
新界はイギリス統治のエリア拡大では最後に広げられた場所で、昔から住んでいる人の邸宅が残っており、中心地とは違ってのどかな印象がある。それでも、ここにも大きな団地と、最近建てられたであろう遥かに高い高層ビルがくっきりとそびえていた。

ライオンロック!


団地名のオブジェ設置するのかっこよ。


車公廟

辿り着いたのは、車公廟という道教のお寺で、赤い大きな門がとてもわかりやすい存在。土曜日と言うこともあり、観光客は多く居た。タイから多くの人が来ている、とMさんが教えてくれた。

せっかくお邪魔したので、お詣り。そのやり方と言うかアイテムは実に様々なものが揃えられていた。太鼓をドンドンドンと3回叩いてお詣りしたり、風車を回したりする。

おみくじもあった。
係の人にお金を払うと、箸入れみたいな、くじの棒がたくさん入った筒をもらう。ここから一本引くのかと思っていたが、そんな簡単なものではなかった。E君が「まあ見てて」とやり方を説明してくれる。

仏像(仏像とは言わないのか…?とにかく大きな像)の真横に座布団のようなものが並んでいて、そこに座って、筒を小刻みにガシャガシャ振る。振りながら角度を変えていくと、筒に入った棒から1本飛び出してきて、やがてそれが下に落ちる。その1本に書いてある番号をお寺の人に見せて、くじの結果の紙をもらえる。

私にも筒が手渡され、同じように筒を振る。振り続けるのだが、どうすればここからたった1本の棒を飛び出させるのか…かなりコツがいるようだ。いつまでも棒が飛び出ないので、とにかく筒から棒が飛び出すように振ると、ジャラジャラと棒が10本ぐらい下に落ちた。もうどれがなんだかわからないから、これかなと思うのを1本選んで、お寺の人に渡した。おみくじ結果発表の紙を頂く。漢字がいっぱいの古文!E君がゆっくり解読してくれた。お金の獲得のためにあんま調子乗んなよ、みたいな意味だったかな…でも、身の丈に合った内容だと思った。


沙田でみた野鳥。後日、野鳥に詳しい有識者の友人に尋ねたところビワムクドリだそう。


香港文化博物館

近くに博物館があり、入館。香港の学生ほとんどの人が夢中になったと言われる、金康という作家によるカンフー作品の展示だった。金康の作品は実写化もされ、その主題歌などのレコードも展示してあった。香港では当時ヒット曲というとあんまりパッとするものがなく、だいたい外国から来た歌の広東語バージョンか、そうでなければこの作品の主題歌だったらしい。
原稿まで展示されており、それは私も読書感想文などでよくお目にかかった、あの茶色いマス目の原稿用紙だった。そういうのとか、習字用具とか、私が学校で触れてきたものの多くは実は中国がルーツであることを知った。


香港科技大学

ところで友人ら3人、実は同じ大学だったことを知りどこの大学なのかと尋ねると、香港科技大学だった。この名前を聞いて、ビビビ!と来た私。以前、Google mapで香港の航空写真をなんとなく眺めていたときに、変わった形をした建物が海沿いにあるのを見つけた。そこで香港科技大学の名前を知った。「そこ気になってたんだ!」というと、0クッションで「じゃあ行こう」となった。
こんなに早く行ける日が来るなんて!車ってすごい。運転手H君ありがとう本当に。

走行していると、私がGoogle ストリートビューで見かけたセブンイレブンと、沖縄みたいなゆったりとした雰囲気のある風景を通り過ぎ、その既視感に、「ああ!ここ見た!」と思わず声を漏らした。ストリートビューって、さもそこに行ったかのような記憶の仕方をできるものなんだな。

車で敷地内へ入ろうとしたとき、警備の人に呼び止められて窓を開けた。友人3人が、「ハウヤオ」と口を揃えて言う。それで車を通してもらえた。

「今、なんて言ったの?」
「ハウヤオ。卒業生のこと」
「ほう!漢字でなんて書くの?」
「学校の"校"に、友達の"友"で、"校友"。」
「へえ〜。」

大学は、近くに駅もない。Mさんは在学中、学生寮に暮らして通学したり、バスを使ったりしたそう。



キャンパスに入って最初に見たのは学食。
フードコートのようなだだっ広い空間は、窓から海が見えて気持ちがいい。室内なのに雀が何匹か入り込んでいて、外と混在しちゃってる感じがよかった。

私はまだ空腹ではなかったが、学食で食事している人たちの料理がやけに美味しそうに見えたし、数ある店の中には北京ダックがぶら下がっている光景もあり、本格的。

大きな窓からは海の景色


ランチボックスレンタルの自販機。本格フードを持ち出せるの良いな




キャンパスのシンボル的な赤いオブジェは、太陽の位置で時計として機能するやつを表している。実際に厳密に機能するかはわからないけど理系っぽい!


海の方まで行く。まさかこの夏初めて行く海が香港だとは、2023年始まって思ってもみなかったことだ。
淡い色の海。こんなに海の近くで学び続けるキャンパスライフはどんなものだろうか。ところがこのアジア有数の名門理系大学は、学習によるものかなんなのかストレスフルになる人もいたようだ。

バーベキュー場や砂浜があり、砂浜へは柵が隔ててあったが、E君は平気で乗り越えて浜辺を悠々と歩き、我々を手招きした。私も砂浜に出て、浜辺に転がるいろんな石を眺めたりした。
つづく。

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