あゆみちゃん【短編小説】#シロクマ文芸部

お題は「愛は犬」。途中まで書いていたのですが、週末風邪をひいて臥せっている間に締め切りが過ぎてしまいました。せっかく途中まで書いたので載せておきます。(途中で終わっているのでオチがないです。)
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 「愛は犬だよ」と、犬好きの友達のあゆみちゃんが言った。でも、それってちょっと、うさんくさくない? あゆみちゃんには申し訳ないけど、自分の犬好き、それから、こんなに愛に満ちた犬を好きな私って純粋、ってことをアピールしているように思える。そのことを、ちょっと変わった言い方で言うのもイラっとする。私ってちょっと気が利いてるでしょ感が鼻につく。もっと普通に言えばいいじゃない。「犬っていいよね」とかさ。
 というようなことは、もちろん本人には言わない。陰口も嫌いだから、他の人にも言わない。そもそも言ったって理解してもらえない。あゆみちゃんはグループのリーダー的存在だし、彼女に逆らうようなことを他の人に言うなんてことは、考えられないのだ。
 ちなみに私は、犬より猫が好きだ。犬って臭いし。犬を飼ったことはないけど、昔飼ってた猫が死んだだけで大ダメージだったのに、飼い主のことが大好きらしい犬に死なれたりしたら、めちゃめちゃ悲しくない? そんなのには手を出さないでおこう、と思う。
 犬派と猫派というのは、血液型占いとかと似たようなもので、会話のテンプレとしては悪くないから、これは言えるかもしれない、と判断して、私は言った。
「いやー、やっぱり猫でしょ」
グループは犬派3名と猫派2名に分かれ、昼休みの間中、私たちはどうでもいいバトルを繰り広げた。

 あゆみちゃんのことは好きだけど、彼女はちょっと考えが浅いところがあると思う。同じ中学の出身で、彼女はクラスの人気者だったけれどそこまで勉強ができる方ではなかったので、同じ高校に行くとは思っていなかった。つまり私がトップの公立校の受験に失敗して、彼女は逆に意外と頑張ったのだった。
 6時間目、ちょっと気持ち悪い安田先生の授業が終わって、化学室から元の教室に帰る道すがら、あゆみちゃんが話しかけてきた。いつもと違って、笑っていない。
「ゆまちゃん、ちょっと放課後話をしたいんだけど、マック寄らない?」
いつもグループで行動してるから、2人でどこかに行くなんて初めてのことだ。なんだろう? グループ内での私の振る舞い方が気に入らないとかそういうこと? 他の子の悪口とかじゃないよね。あ、それとも、勉強がわからないから教えてほしい、とかかな? よくわからないけど承諾した。
 しかし、マックに行くお金がない。マックは昔はハンバーガーが100円だったって親が言ってたけど、今はどんどん値上げして、240円とかになってる。バイト禁止だからお小遣いだけで何とかしなきゃいけなくて、うちはそんなに裕福じゃないし、私立に通うことになっちゃったから親は大変そうで、お小遣いはそんなに請求できないし、本当は外食はそんなにできないんだけどな。ホームルームの間中、そんなことを考えて、とうとうマックはやめようと言おうと決心した。
 あゆみちゃんは、マックはどうでも良かったみたいで、公園で話をすることになった。
「ゆまちゃん、あのね」
いつもは何にも考えずに思ったことを言うのに、珍しくもじもじしている。
「あのね」