超こわくない話(ギャグ劇団笑)『やばい、リサイクルショップ』

 僕は寺の息子。本当は怖がりだが見えちゃう。

 くやしいが、ただの「弱虫」。

 今日、浅草線の中で、幼馴染のタクミとばったり会った。

 タクミは意地悪な奴。

 こいつは母親が本物の「魔女」。魔女の息子は大人たちにばれないように不思議な「妖術」を使って惑わしてくる。
  
 下手なイジメよりたちが悪いほど。
 
「おおっ。怖がりなお寺の子、見っけ」
 電車の中でタクミはニヤニヤ笑いながら近づいてきた。

 嫌だな。

「おい。ちょっと付き合え」
 タクミは隣の席に座る。

「どこへ」
「浅草橋だ」
「浅草橋?」

「ああ。ちょっとやばいショップがあるんだ」

「やばい店?」

「ああ。本当に怖くないなら、俺について来いよ。それともキサマは怖くて耐えられないかな。また小便漏らすかな。幼稚園の肝試しみたいに」

 こいつは、僕が幼稚園のレクレーションの肝試しで、小便を漏らしたことを覚えている。
 
 そして未だにしつこく触れてくる。
 
 この辺が、性格が悪いと言われる所以だ。

「うるせぇな」 
 僕は喧嘩に乗ってしまった。
 こんな時、変なプライドは邪魔になるだけだ。

 そして、僕はものの見事に、後から後悔することになった。
 

「こっちだ」
 タクミは駅につくと、勝手に歩き始めた。

 通行人のいないさびれた通りを歩いていく。
 
 霧が出てきた。
 
 タクミの妖術のせいかもしれない。

「あそこだ。怖い店」
 タクミが指さす。

「何の店だ」

「リサイクルショップだ」

「なぜ。あそこが怖いんだ」
 理由はまだわからない。

 取り壊し寸前の建物。まともな連中なら、あんな店で買い物することはないだろう。

「あの店の中を一周してきたら、認めてやる」
 タクミ。

「何をだ?」

「キサマがちょっとは、大人になったということ。弱虫な小便こぞうめ」

(うるせぇよ)
 僕は歩き出した。 

 店内は埃だらけ、ガラクタばかりだった。
 
 だが、そんなに怖くない。
 
 奥に老夫婦が座っている。

 店主の夫婦。眠っていて反応しない。
 
「すみません」 
 夫婦の前を通る。

 次は古い家電コーナー。

 結局、無事に外に出ることができた。


「全然怖くなかった」
 僕は笑う。

「そうか」

「当然」

「老夫婦みたか」

「店の主人だ」

「違う」

「違うって?」
 どうみても夫婦は幽霊でもなんでもなかった。
 
 妖術のせいで霧が濃くなる。

「あの夫婦は販売される商品なんだよ。あのショップでは、不要になって山に捨てられた高齢者を安価で売ってるんだよ」


 


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