LAST SCENE 1

おみさんのフォトエッセイの情報がでたときのわたしへ
どうしておとなしく限定盤を買っておかなかったんですか?どうせ特典などをいろいろみていたら訳がわからなくなって「一番好きなフェイスの表紙にしよう」って感じで選んだんでしょう、わかります。なにしろ、わたしのことですからね!!!
というわけで通常版が我が家にやってきました。限定盤がほしかったことは過去のわたしにチクチクチクチクと言い続けたいと思います。

八年ぶりのおみさんのフォトエッセイ、おみさんは良い悪いはさておいてフランクに心のなかをみせてくださるので本をひらくまで随分と緊張しました。なんとなく、こう、ここ数年のことをいろいろ思いながら、このフォトエッセイに決定的ななにか怖いことが書かれていないといいなというような、そんな不安のようなものを抱えながら。

お写真の話をします。
はじまりの朝。
造形が美しいこと登坂広臣さんの肩の力がぬけた35歳(撮影時点では)の姿が続きます。色彩を欠いた街並みに佇むおみさんのほんのわずか鼻先の赤さをみて冷え込んだ朝なんだろうかとか、そんなことを感じる写真たちからはじまりました。
どこのおうちの子かは分かりませんがダルメシアンを見ているおみさんが笑った、それだけで少し気温があがった気がします。冷たい空気のとんがりがまるくなっていくみたい。カフェ、エスプレッソ、ほら体温もあがりました。
この調子で全部お喋りをするとものすごい文字量になるので割愛しますが、小説を読み始めるときの感覚になる写真たちから始まったので本当にわくわくしました。物語がありすぎる。静かなのに言葉が浮かぶ写真たちですよね。

それにしても、パリの街並みに登坂広臣という存在が本当によく似合います。あと、もふもふが似合う。なんだろう、あのもふもふと登坂広臣の融合性。ハーフアップ、もふもふ、お花、地下。お花は渡すべき誰かに渡せたのかな、エスカレーターでお花を手にしていないおみさんがはしゃいでいたからきっと渡せたんだ。よかった。

わたしはおみさんが赤い衣装を着ると興奮するたちなんですが、海辺であの真っ赤なセットアップに身を包んだおみさん!目も覚めるコントラスト!!!わたしんちの近所の海岸にこんなに真っ赤なひとがひとりでぽつんと立っていたら慌てて双眼鏡を持ってきてまず一体なにをしているのかと確認をするだろうな、ずいぶん顔のいいおにいさんが上半身すけすけのなんかすごい服着て立ってる…?なにをして…?いぬの散歩いって大丈夫か…??ってなるだろうな、って思いながらみてました。待って、そんなこと思わないでほしい、心から。もっと世界観にひたってほしい。あとパリの海岸は砂浜じゃなくて小石なんですね?あれ、ビーチサンダルと土踏まずの間に入って踏んだら最高に痛いだろうな。

入浴シーン、バスローブ、このへんはもう美術品だこれはという気持ちでみていました。身体がおっきくて最高だ。肩のあつみ見ました?このへんも気合い入れてセクシーに、というよりもごくごく自然体な感じがして好きでした。

基本的におみさんの印象というのはモノトーンで美しい彫刻のような横顔、まつ毛、そういうものが強いのかなあと思うんですけど、だからなおさら差し込まれるポップな一面をみると気持ちが跳ね上がるんですがカラフルな世界でバゲットをくわえているお写真、パンナイフに添えられるまるこい指先、まるめがね、キャビネットの上で横になっている猫みたいなおみさん、どれもとんがった美しさのおみさんとのギャップが大きくて本当にかわいい。かわいい。ちゅーるたべる?

最後のセクションは夕暮れ、夜。
あたたかそうなグレージュカラーのロングコートを着ているおみさん、すごく素敵だった。どこに向かうんだろう、もう陽も暮れて、街灯にあかりもついた。寒さをわすれるためにお酒ものんで一日が終わる。さいごのさいご、もう静まった夜の光の下、ひとりなにを思うんだろう。街並みやバーの明るさから一転、しんと静まり返った時間がおみさんのまわりに降りてきた。このまま、きっとこの人は家路につくんだろうな。おやすみなさい、美しい人。また明日。