ざるクッキー(エッセイ)

私が、中学生の頃の話だ。
ちょうど、今の時期の、中2の3月の春休みで、もうすぐ桜も開花する頃だった。

私は、中学に入学して、すぐにソフトボール部に入った。
いろんなクラブを見学して、
ある女子の先輩の、カッコいいキャッチボールをしてる姿に、
一目惚れ❗したからだ。
あの先輩のように、なりたい❗️との一心で即座にクラブを決めた。

だが、いざ入部すると、とにかく
体力をつけるための、ダッシュ
(ひたすら、走る訓練)、柔軟、
基礎練習が多いし、休みは、
お盆休みと年末年始だけだった。
まず、キャッチボールをやってみたが、できなかった。なぜなら、
ボールを相手のグローブに、
めがけて投げるという、一連の動作がとても、難しかった。
(実際にやってみて、わかったことだ)

ボールを投げる、グローブでボールを受ける、バットを振り、ボールに当てる、この当たり前の動作が、一応できるようになるまで、
3ヶ月かかった。

私と同時に入部した、Aちゃんがいた。小学校から、同じ中学に進み、中2の2学期から、彼女は、
ソフトボール部の新キャプテンに
なった。短髪で背が高く、「おかん(関西の)」みたいな雰囲気で、さっぱりしていて、頭もよく、皆に信頼されていた。

Aちゃんと、その中2の時に、同じクラスになった。だから、毎日授業が終わると、一緒に学校のグラウンドへ行った。クラブからの帰り道も、途中まで同じ道をおしゃべりしながら、帰った。

一度、レトルトカレーの話になり、Aちゃんが「レトルトカレーは、マジにおいしい❗️」と力説したが、私は、「そんなの、信じられない~」(家でレトルトをたべたことがなかった)といって、口ゲンカになったことがある。
後日、私は、家でレトルトカレーを温めて食べてみたが、やはり
おいしくなかった。温め方に、コツがあるのだなあ、と思った。

どちらかと言えば、男の子っぽいAちゃんだったが、彼女の趣味は、なんと❗お菓子(スイーツ)作りだった。ある時に、オレンジムースのケーキをホールで、作って、持ってきたことがあり、食べさせてもらったが、中学生が作ったとは思えない、美味しさ❗で、
私は、3切れも食べてしまった。
「マジに、おいしい。嬉しい🎵。
Aちゃんは、ホントに作るのうまいね。」と伝えたら、
「わりと簡単だよ。」と笑っていた。

そのAちゃんが、中3になる前の春休みに、お父さんの転勤で引っ越すことになった。信頼出来るキャプテンがいなくなるのは、不安だ
ったが、サブキャプテンの2人が、引き継ぐことになった。

3月の終わりに近い日に、Aちゃんから「家に来ない?」と電話を受けて、たまの部活の休日だったので、行った。すると、
へやのこたつの机の真ん中に、
ざる(料理などで使う、ざるです)に山盛りになった、焼きたての
クッキー❗がたくさん載っていた。「いろいろ、ありがとう。これは、私からのお礼に、クッキー焼いたんだ。たくさん食べてね。」とAちゃんが言った。

クッキーは、いろんな種類や形があり、チョコ入りだったりで、
とても、おいしかった。ただ、
クッキーはおいしかったが、
「なぜ、ざるに入れてるの?」と聞いたら、「焼いたクッキーの、熱冷ましのためだよ」と言われた。可愛いお皿に入れて出す、という、発想は、全くないようだった。
そういうところが、Aちゃんらしいと思った。

ざるに入ったクッキーをたらふく食べて、私はAちゃんに、
「ありがとう。ホントにおいしかったよ。ソフト部のみんなで、
あと半年がんばるよ。」
(中3の夏で、引退)
Aちゃんは、「今まで、ありがとう。クラブのみんなとさよならするのは、悲しいし、部活を途中で抜けるのは、こころ残りだけど、後は、みんなでがんばってなあ」と言った。

大人になった今でも、あの山盛りの、ざるクッキーは、衝撃的で印象深い。一年中、ジャージ姿でソフトボールを追いかけていたあの頃と、
Aちゃんの、いつもおおらかだった笑顔を、私は、決して忘れないと思う。

最後にAちゃんが好きだった歌を。

さあ行くんだその顔を上げて
新しい風にこころを洗おう

あの人はもう思い出だけど
君を遠くで見つめてる
(ゴダイゴ🎵銀河鉄道999)

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