【毎週ショートショートnote】 ごはん杖

「おばあちゃん。今日は、オムライス食べたいな~」
「はいはい、わかったわ」
「やったー! やったね、ごはん杖!」

孫が長めの棒に、頬ずりしていた。
木の枝を白く塗って、リボンでぐるぐる巻きにされた棒だ。
孫の工作術の高さは、目をみはるものがあり、祖父としても鼻が高い。

「その棒は、なにかな?」
「ごはん杖だよ! これをね、おばあちゃんにむけて、食べたいものをお願いすると、つくってくれることがあるの!」
「へえ、いいね。ちょっと、おじいちゃんにも、貸してくれるかな?」
「うん、いいよ!」

孫から貸してもらったごはん杖を、妻にむける。

「今日はビール缶、2個飲みたいなー」
「は?」
「いえ、なんでもないです」

私は小さくなりながら、孫にごはん杖を返した。

「魔法、どうだった?」
「失敗しちゃったよ」
「おじいちゃんは、修行がたりてなかったんだよ」
「修行って、なにするのかな?」
「1週間、おばあちゃんに、ごはん杖でお願いするの!」

孫の忍耐力がすごい。