【毎週ショートショートnote】 夜光おみくじ

年越しの歌番組をひとりで見ていたら、いきなり高嶺さんが家にきた。

「初詣に行きませんこと? 最近、助手席が壊れたから、新調したタクシーですのよ」

真夜中に走るタクシーは、混雑する車道のすき間をぬって、とある山奥の神社にたどりついた。

…どこ、ここ?


「この神社は高嶺グループが、昔からお世話になっていますのよ」
「へえ、いつからですか?」
「平安時代からだったかしら…」
「思ったより、すごい昔だった」
「あら、そうなのですね」

高嶺さんとすごしていると、いつも、住む世界が違うなと思ってしまう。

わたしが、隣にいていいのかなと、落ち込むときもある。

「ほら、境内に入る前に、おみくじをひきなさい」
「はい…はい?」

わたされのは、あの六角形の直方体の箱ではなく、一枚の紙切れだった。

高嶺さんから紙切れをとり、広げる。


大吉:今年もいろいろなところに、いっしょに遊びに行きましょうね。いつも、つきあってくれて、ありがとう。

「どう?」
「大大吉でした」