(1人リレー小説 全2巡) 甘いもの食べに行こう (1巡目)

好きな女の子とのランチタイムを目指して、八連敗中のぼくは、いつものように校舎裏でご飯を食べていたら、不良にからまれて、二つのうち一つのお弁当を食べられた。

別にいいんだけどね、おなかはいっぱいだったし。
問題はそこじゃない。


「あー、うまかった。な、今度スイーツバイキングにでもいかねえ?」

なんか、お弁当を食べさせたらスイーツバイキングに誘われた。

いろいろと言いたいことはある。

お弁当のお礼なのか、はたまた、なんの考えもなしの会話なのか。
わからないけれど、聞きたいことがあった。


「お弁当、おいしかったか教えてくれる?」
「え、私、うまかったって言ったけど、言ってなかったか?」


私。
一人称が私なのか。
なんだろう。
見た目はこんなにも尖っている。
プラチナブロンドの短い髪に、いかついピアス。
背丈は高くて、大柄。制服のズボン丈が足りずに足首より上にある。

なのに私。なんで私。

「どうした。鎌犬(かまいぬ)」
「えっ、なんでぼくの名前を知ってるの?」
「お前、かなりの有名人だぞ。お前に声かけられるのを女の子たちはよだれがでるほど待ってるんだからな」
「ぼくのお弁当そんなにも食べたいんだ」
「いいや、お前に声かけられた後、告白される確率があがるからな。現に、お前のおかげでつきあっているカップルを七組みつけた」

ぼくは現在、お弁当を食べないかと女の子に声をかけ、八連敗中である。

ぼくはその場に倒れたくなった。

「大丈夫か。鎌犬」
「大丈夫じゃない。ぼくだって、女の子とご飯が食べたいのに!」
「え、叶ったじゃん。夢」
「叶ってない!」
「私、女の子だけど」
「え?」

嘘でしょ。
こんなに、こんなに男っぽい女の子がいるの。

「こんなカッコいい女の子がいてたまるかあああああ!」
「おー、すっげ。男にカッコいいって言われたの初めてかも」
「なんで。普通にカッコいいですけど」
「へえ、ありがと」

にこっと笑った顔が、イケメンアイドルくらいカッコいい。カッコいいけど、納得いかない!

「なんで女の子なのさあ!」
「や、それしょうがねえじゃん」
「すごくカッコいいのに!」
「重ねてくるなよ。お前、私の顔が好きなんだな」
「もったいないいい!」

もったいない。すごくもったいない。
なんで、なんで、この人、男じゃないの。
神様って不平等だ。
そうだ、名前。名前がカッコよければ、なんかよくわからないけど、腑に落ちそう。

「名前、なんていうの」
「林檎だけど」
「なんで可愛いのおお!」