【毎週ショートショートnote】 響く礼節をペンペンしてみる

「あんたは、いきなりすぎんだよ。俺たちは仕事してんだから、まずは、上司に連絡するのが筋だろ」
「しましたよ? 好きにしろって言ってました」

相棒は舌打ちした。
うちの組織は、放任主義の傾向が強い。上司に連絡したのは、嘘ではないだろう。

「許可をわざわざとってくるなんてな」
「ええ、いつもびっくりするのですが、毎回、上司が違いますよね」
「うちは、上を目指せば目指すほど、だれかに殺される可能性が高まるからな」
「そんな危険な組織ではなく、私といっしに、はたらきませんか?」

ああ、その言い方はマズい。
俺は相棒の尻をたたく。
相棒は俺のいわんとしていることが、伝わったのか、俺の手をにぎった。

「俺をひろってくれた組織だ。相方に会わせてくれた組織だ。仕事をくれた組織だ。てめえは、恩を受けた組織を裏切ろって言ってるようなもんだ。もう、二度と俺に会いに来るんじゃねえ」


俺たちではなく、俺にと言った。
俺に選択の余地を残した。
相棒は、やさしいな。