【毎週ショートショートnote】 鳥獣戯画ノリ

「おばあちゃん、これかぶって!」
「あら、前作ったお面かしら?」
「違うよ。新しくつくったの!」
「あらあら、本当。モノクロで渋いわね」
「おじいちゃんもつけて!」
「ああ、いいよ」

孫はウサギ、妻はキツネ、私はカエルのお面をつけた。
いずれのお面も、墨汁をつけた筆で描かれている。

「じゃあ、遊び方を教えるね! 私が『ウサウサ』って言ったら、おばあちゃんは『コンコン』、おじいちゃんは『ケロケロ』って言ってね! ポーズはこうね。それじゃあ、いっくよー! 『ウサウサ!』」
「コンコン!」
「ケッケロケロ!」

「ウッサウサ!」
「コッンコン!」
「ケロ…ケッケロ!」

「おじいちゃん、ケッケロってなに?」
「ちゃんとやりなさいよ」

私が悪いのか?

「おじいちゃん、ケロケロ以外くるとは思わなかったからさ」
「ノリ悪いね」
「そうよ。ノリなさいよ」

ノリって、なんのノリなのか。

「おばあちゃんは最初から、ノリノリだったよ」
「当たり前よ」

妻は自慢気に鼻をならした。