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その一杯に心を込める

みなさんこんにちは。
私が今関わっている飲食企業の中で、社員の読書を推奨する活動をしているのですが、そこでは「一冊の本との出会いが自分の人生を大きく変えることがあります。」というフレーズをいつも使っています。いや、流石にそれは大袈裟ではないですか?と言われることもあるのですが、これは夢物語ではなく私の実体験そのものなのです。

今から約20年前の話です。埼玉で牛角FCの店長をしていた頃、午後からの勤務が多かった為、午前中は読書の時間に充てていました。自宅で読書をするのもリラックスできていいのですが、私はどちらかというと外に出る方が集中できたので、近所のファーストフードやカフェに行っていました。
その中でも、一番気に入っていたのが当時急成長していた「タリーズコーヒー」でした。平日の午前中にオフィス街の一角にあるタリーズの店舗で、せわしなく行き交うビジネスマンを横目で眺めながら、のんびりするのが好きでした。
当時既に「スターバックス」が流行っていたのですが、先進的なスターバックスの印象と比べて、タリーズはどこかクラシックで重厚なイメージがありました。洗練された木目調の家具やソファー、クラシカルなロゴやランプのデザインなどがとても素敵で、時の流れまでも穏やかに感じさせる程でした。そんなタリーズを頻繁に利用しているうちに、もっとタリーズのことを知りたくなってきました。色々調べてみると、日本での創業者である松田公太さんが書籍を出していることを知り、早速手に入れて読むことにしたのです。そう、この本との出会いが「私の人生を変える出会い」だったのです。

”すべては1杯のコーヒーから”というタイトルが書かれた「その」本を抱えて、いつものタリーズへ行き、アイスのダブルトールラテを注文して、いつものお気に入りのソファー席へ着座。いざ読書タイムです。

本の内容に私は一気に引き込まれていきました。一銀行マンであった松田公太さんがアメリカでタリーズと出会い、その美味しさに感銘を受けて、これを日本で展開したいという情熱が芽生えます。単身で交渉しても当然のように何度も断られるのですが、粘り強く「熱」を伝え続けた結果、日本で展開する権利を獲得できたというストーリーです。私は当然、日本での展開は大手資本が絡んでいると思っていたので非常に驚きでした。(ちなみにスタバの日本法人はサザビーリーグとの合弁です。)シンプルに個人の力ってすごいなと思いました。そして、その秘訣については次のように書いてありました。

どんなことをするにも情熱の有無で結果は大きく変わってくる。私は人より特別な才能を持っているとは思わない。ただ、自分の信じた道に寝食を忘れて打ち込むことはできる。情熱は誰でも平等に持つことができる。その点が生まれ持っての資産や容姿、才能とは違う。
あなたは「あの人は生まれつき恵まれている。自分は平凡だから仕方ない。」などと諦めていないだろうか?確かにスタートラインの差はあるかもしれない。しかし、特別な境遇にある人たちよりも強く情熱を持って取り組めば、何事にも負けないはずだと私は信じている。
              〜すべては1杯のコーヒーからより抜粋〜

一気に本を読み終えた私は、松田公太さんの情熱に完全に洗脳されていました。(笑)これこそ、自分が次に進む道なのではないかと思い、直ぐにタリーズ中途採用の面接を受けることにしたのです。当時牛角で2店舗の店長を任されていたのですが、なんとか後輩を説得してポジションを埋めました。そして、本を読んでから僅か三ヶ月後には、タリーズの店舗で新人研修を受けていたのです。今考えても恐ろしい行動力だったなと思います。

タリーズの経営理念の中の「その一杯に心を込める」という一文があり、とても素敵だなと感じました。一日に数百名のお客様と接する中で、目の前にいらっしゃるお客様の「その」一杯に心を込めるということは、仕事に向き合う姿勢が問われます。この一文は私の心にグサリと刺さりました。

結果としては、私自身の未熟さもありタリーズでは長く勤めることができませんでした。しかし、短い間にも沢山の刺激があり、その経験が今の自分の基礎となっていると感じています。

その後、タリーズは伊藤園のグループ会社となり、公太さんも会社を去りましたが、今でもタリーズを利用すると当時のことを思い出します。創業当時の経営理念も少しだけ表現が変わっていますが、基本的な考え方は今も継承されているようで嬉しいです。

「その一杯に心を込める」公太さんに教わった精神は今でも忘れずに私の心の中に宿っています。そして、この「情熱」を伝え続けることが、私が大変お世話になった公太さんへの恩返しだと思っています。

そして、一冊の本が私自身を大きく動かして、新たな一歩を踏み出す勇気を与えてくれました。
本との出会いは人との出会い。
みなさんにとっても、そんな素敵な本との出会いありますか?

読んでいただきありがとうございます。

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