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共感と支持は気持ちいいけどさ。甘い毒かもよ。

本日のお題は、「見識ある大人は、ネット上でどういう態度をとるべきか」です。

およそネット界隈では、極論や陰謀論まがいの言説、「私は真実を知っている」的な解説が
人気を集めていたりします。
このnoteでも時々そういう記事を見かけます。

そのような記事が明らかに間違っていることを知っていた時、
どういう態度を取るのが見識ある大人なのでしょう。

バカな記事と内心失笑しつつ、基本スルー。以後その人の記事は読まない。
簡単で手間なし。しかも揉めることもなく、精神的な負荷もかからない。
それが賢明、良識ある大人の態度。いちいち相手にするほどヒマじゃないしね。

そもそも、
「触らぬ神に祟りなし」
「鬼神は敬して遠ざける」
「過ぎたるはなお及ばざるが如し。」

なんて感じで極論には近づかず、中庸を重んじろという格言は多いです。
では、今のネット社会でも、そのような態度を見識ある大人は取るべきなのか。

沈黙の螺旋仮説とエコーチェンバー効果

私は沈黙すべきではないと思う。
粘着乙ww、どんだけヒマやねんという失笑を買っても、
間違っている意見や記事には否定的なコメントをすべきだと思う。

理由は、昔と違って発した言葉の影響力、伝播力が高すぎるから。
そして、沈黙の螺旋とエコーチェンバー効果がネットとの相性が良すぎるから。

沈黙の螺旋仮説とは、人は社会的孤立を恐れる。
だから、自分の意見が多数派の確信があると、意見表明が大胆かつ公然としたものになる。
一方、少数派だと自覚すると消極的になる。
多数派の意見が強まるに従い、反面少数派の意見はどんどん存在感を失っていくこと。

エコーチェンバー効果は、自分と似た興味や思考の意見ばかり見ることで、
それが多数派であり、正解であると勘違いして、
より大胆な意見表明が行われ、極論が加速する現象を指す。

確かに「私もそう思います」とかって共感や支持表明のコメントは、
単純に嬉しいし、自分が社会的に認められているという自己承認欲求を満たしてくれるし、
孤独や孤立していないという慰めになるんだけどね。

極論や単純化が魅力的な理由

本当に詳しい専門家の説明って、子供向けにわかりやすく解説する場合は別にして、
議論の場ではだいたい曖昧になってしまう。
これは、別に日和ってるとか、保身でとかではなくて、やっぱり物事は複雑だから。

どうしても単純化した説明ではカバーできない、例外を知り過ぎているので、
きちんと説明しなければと思うほど、必然曖昧になってしまう。
正しさの論拠を証明しようとすれば、やれ統計だメタアナリシスだってなってしまう。

挙句、それ何語?結局どういうことなん?
要するにいいの悪いの?みたいなツッコミを受けるはめになる。

その点、極論は強い。
科学的な正しさとか一切無視して、自分が試した、うまくいった。だから効く!
みたいなんでさえ説得力を持ってたりする。
例えば、
1傘を持って出かけたら、雨が降った。だから傘は降雨を誘発する。
2この薬を飲んだら、病気が治った。だからこの薬は病気の特効薬だ。
3男女の進学率が高まった。その結果LGBTQが増えた。つまり、教育は種としての人間を堕落させる。
4毎日キツネダンスを踊ると、体重が減った。だから、キツネダンスはダイエットにぴったり。

こんな感じの記事の亜種は、noteでも結構見かけるように思います。
これを極論で言う方は簡単で、2なんて「私が証明だ」って言えば済んでしまう。
ついでに「認められないのは、既存の製薬会社の陰謀だ」とか
「厚労省は製薬会社に買収されてる」とか言えばいい。

一方で、科学的に正しいか本当に効果あるのか検証するのはメチャ大変。
年齢、性別、人種、安全性、有害性、プラセボなど様々な観点から検証しなければならない。

上に書いたような例は、前後即因果の誤謬というやつで知識があればツッコミを入れることができる。
2なら、薬飲まなくてもかってに治ったのでは?
薬以外に食べたり飲んだりしたものの影響がないとなぜ言えるのか?
みたいなコメントを見識ある大人はすべきだと思う。

沈黙は消極的賛成

見識があるなら沈黙してはならない。
エコーチェンバー効果が発動して、沈黙の螺旋が回る前に、
多様な意見が存在することを伝えるのが大人の責任。
言葉の拡散力、伝播力が高いからこそ、知識があるならそれを正しく伝えるべき。
たとえば意識高い系とか言われても、
唯々諾々と賛成意見を垂れ流すのではなくて、
明らかに間違ってるなら反対を。
他の解釈の余地があるなら、別の視点からの説明を。
白黒つけたい二元論には、灰色の世界を。
それぞれコメントするのが、今のネット社会で見識ある大人の態度な気がします。

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