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『エチカ』 〜 涙の種


前回までのお話しはコチラ▶『エチカ』〜 シャークの森  
            ▶『エチカ』〜 FLY!FLY!FLY!
            ▶『エチカ』〜 空間と体は切り離されてはいない
            ▶『エチカ』~ 運命
            


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「エチカよ、エチカ。目覚めるのです。あなたにはまだやることがあるのですよ」


白い光だけの世界に抱かれているような感覚がした。 まるで体との境界線が無くなったかのように恍惚としている。


「ぼくは … いったいどうしたのでしょう?」


瞼をあけられないまま、優しく包むその声に問い掛けていた。


「気を失ったのですよ」

「あ…レディマンタ…」

「エチカよ、サメを助けるのです」

「…へ?…」

「おしゃべりザメを助けるのです」

「へ?どうして…あの鮫は泳げるんじゃ…」

「飛べるサメが泳げるとは限らないのですよ、エチカ」

「レディマンタは泳げると…」

「うそを言ったのです」

「どうしてそんなこと…」

「レディマンタはかつて、この森海に辿り着いたおしゃべりザメを助けました」


光の声がそう言うと、途端に視界が鮮やかに開けた。巨大な海藻の林に飲み込まれそうになっている鮫をレディマンタが必死に引っ張っている。まるでVRゴーグルを装着したかのような臨場感。長い尻尾を鮫の体に巻き付け、ややもすると引き千切れんばかりだ。


ようやく救出された鮫は半死半生の状態だった。レディマンタは鮫をやさしく背に乗せ、赤子をあやすような歌を口ずさみながら、しばらくの間ゆるやかに遊泳していた。その歌声は、ぼくの鼓膜を打ったあの強い響きとは似ても似つかない、真綿のぬくもりと鈴虫の爽涼を香らせていた。


                ♪ ♪ ♪


ひとの落とした涙の種を ひろって食べたら 分つ国(わかつくに)

けっして咲かない涙の種は 海の藻屑となりましょう

いえいえそれはなりません ひとの心にかえしたら 咲きましょう 咲きましょう

分つ国の食べものは しょっぱくてなりません

まろき蜜となるように ひとの心にかえしましょう 

涙はきずをのみほして 涙はかなしみのみほして 

涙は今へかえします 心を今へとかえします

分つ国 と 円か国(まとかくに) 

どうじどうじに唄いましょう 唄いましょう …


♪ ♪ ♪


ひとしきり歌い終えると、鮫がふわりと浮きあがった。レデイマンタは心の底からほっとした様子だった。両ヒレをひらひらと羽ばたかせ、鮫の周りを何度も何度もくるくる回った。


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まだまだつづくよっ♪

本日も💛 最後までお読みいただきありがとうございます☺︎